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教育機会と生涯学習 2部廃止問題から


1950年、大阪市立大学に2部 (夜間部) が設置された。以来、約8,000人の卒業生を世に送り出してきたが、2009年を最後に募集を打ち切った。社会情勢や大学が置かれた状況の変化、廃止を巡る学生らの反対運動など、そこには様々な想いが交錯していた。

2部設置の目的

市大に2部が設置された当時、大学に通う者はごく一部の人間に限られていた。経済的余裕がなければ大学に通うことは難しく、家計を支えるために日中働く人達にとっては、大学に通うことは金銭的にも時間的にも不可能であった。

このような勤労青年の高等教育の場を確保するため、大阪市からの強い要望もあり1950年、市大の商学部・経済学部・法文学部 (当時) に2部が設置された。1部と同じ教員、同じ水準の教育内容という「平等原則」のもと、多くの有為な人材を輩出してきた。「働きながら学ぶ」ことの可能性と教育機会の均等の重要性を、市大2部は体現してきたのである。

夜間課程の衰退 法人化で拍車

しかし経済が豊かになっていくにつれて、2部の志願者が減少してきた。その背景には共通一次試験 (現センター試験) の導入や専門学校など教育機会の多様化によって、働きながら学ぼうとする勤労青年や社会人の志願者が減少したことにある。また共通一次試験によって1部と2部との間で学力に差が出てきており、「平等原則」を継続するのは困難になってきた。

そのような状況に加え、2004年に国立大学が法人化、市大も2006年に公立大学法人となった。大学の法人化に伴い、大阪市が負担する経費を5年間で2割削減するという方針の影響もあり、市大は市場原理のもと大学間競争に生き残るための経営を迫られた。

2004年には関西では12の大学で夜間課程が存在していたが、2009年には大阪市立大学を含め4つに減少。学校の統廃合問題に詳しい三輪定宣・千葉大学名誉教授は「教育に関する予算がどんどん削られていく流れの中で、大学が法人化した。財政削減の中で夜間課程の減少という問題が起きている」と警鐘を鳴らしていた。

2部廃止決定 学生らは反対

市大は世の流れに逆らえず、2008年に2部の募集停止を決定。市大側が示した主な理由は「勤労青年 (有職者) の減少」および「志願者数の減少」だ。また「社会人のニーズとして、学部から大学院レベルにシフトしてきている。大学の戦略として市民のニーズに応えていく必要がある」としていた。

ところが市大が2007年に学生らに行った定職の有無についての調査によると、約6割の学生が何らかの定職に就いていた。志願者数も、2005年〜2009年の間は、減少傾向にあったものの5倍を超える水準を維持していた。

また、市大の2部は公立大学の夜間課程ということもあり、経済的に大学へ通うことが困難な人達の貴重な進学先にもなっていた。2009年の市大の1部の学費は年間53万5800円だったのに対し、2部の学費はその半分の26万7900円。経済的に苦しい人達の教育機会を奪うことにならないか。学生らはそう考えた。

加えて市大は2部募集停止に関しては大学のHPで発表するのみで、学生への相談や説明は一切なされなかった。このような市大の姿勢に学生らが反発し、2部廃止反対運動が起こった。当初は数人で始まった運動であったが、その後1万人以上の署名を集めるなど、社会を巻き込むほどの盛り上がりを見せた。

しかし市大側の決定は覆ることなく2009年を最後に2部の募集を停止。全国でも数少ない公立の総合大学の夜間課程が廃止された。

受け継がれる理念 創造都市研究科へ

2部設置の理念は働きながら学ぶ機会を提供することだった。その理念は「生涯学習」として受け継がれていくこととなる。

生涯学習は1965年、フランスの教育思想家ポール・ラングランによって提唱され、各国に広がった。市大の大学憲章にも「生涯学習」の項目があり、生涯学習の理念は市大の理念とも合致する。

現在、生涯学習の具体例としては創造都市研究科公開講座がある。特に創造都市研究科は「忙しい人が働きながら通えるように」「平日夜間の2日と土曜日とで必要単位が修得でき」る。「働きながら学ぶ」2部の理念は、創造都市研究科へと受け継がれた。

社会に開かれ、都市とともにある大学。その理念の意味するところは必ずしも具体的ではない。しかし「多様な教育機会」は間違いなくその理念の柱だろう。その理念の体現者である2部が廃止されることの意味を、私たちは考えなければならない。

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2部ファイナルフェスティバル「市最楽祭」(Hijicho Blog) (http://hijicho.com/blog/p1204)

参考文献・資料

教務委員会, 1990年,『第2部教育の現状と今後の方向について (報告と提言)』
大阪市立大学, 1994年,『夜間教育に対する社会的需要調査報告書』
大阪市立大学大学史料室編, 2011年,『大阪市立大学の歴史 1880年から現在へ』

文責

近藤龍志 (Hijicho)


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