HijichoのLINE公式アカウント
友だち追加数

教授が語る夢 大学教育研究センター・渡邊席子准教授


市大の様々な分野の教授にインタビューをし、個人的な夢や思想を聞くことで教授自身のことを深く追究していくコーナーです。

第4回は、大学教育研究センターの渡邊席子准教授にお話を伺いました。渡邊先生は教育・社会系心理学を専門として、現在高等教育機関で学ぶ学生にとって「自発的に学べる」環境を整えるために何が必要かを知るための各種調査と実践研究を行っておられます。

大学で学生が得るものとは何か?

―現在はどのような研究をされているのでしょうか。また、その研究をすることになったきっかけ、背景は。
現在は、「大学の教育の成果」について研究しています。ざっくり言うと、「大学で学生が学んだ成果とは何だろう? 何をもって成果と考えればいいのだろう? 学位? 単位? 他には何がある?」という疑問に、もともとの専門分野である社会心理学の方法論を用い、複数の観点からアプローチしています。

「高校時代に無かったことを学びたい」という欲求があって、社会心理学の分野に進みました。正直に白状すると、学生だった当時は、あまりよく理解しないままにいくつかの心理学の専攻分野の中から消去法で選んだのですが、結果的には、社会と心理にかかわることならどんなことでも様々な方法を使って学んで研究できる「フリーダム」な学問だったところが良かったですね。

夢は、「猫様」と暮らす老後

―プライベートでは、どういった活動をされていますか。
端的に言うと、猫様にお仕え申し上げています。家に帰ったらまず、猫のストーカーをします。仕事以外に一番大事なことが猫です。

大学にも可愛い猫がいますが、やはり一番可愛いのはうちの猫ですね。猫と一緒に暮らしている人ならきっとこの気持ちを分かってくれると思います。昔からずっと猫を飼うことが夢で、猫を飼えるだけの経済力をもつために就職したといっても過言ではありません。老後は沢山の猫を飼って、彼らに囲まれながら一緒にひなたぼっこをするのが「夢」ですね。

―猫にまつわるエピソードや、オススメの画像はありますか。
この猫は、私が初めてお仕え申し上げた猫です。昨年、心臓の病で星になりました。病だと判明した時、私は猫について分かったつもりでいて、実は全く分かっていなかったことがどれだけ多いかに気づきました。その時から必死で病気の知識やお世話の仕方について学び、実践へと結びつけました。

このことは、今の私の教育・研究の姿勢を振り返るヒントにもなりました。「直接『自分の』問題として経験すること」が、自分自身にとって自発的な学びの姿勢を促進する原動力となることを、初代猫が今一度教えてくれたのです。では、大学に入学してきた学生たちに学びの原動力をつかんでもらうきっかけとして、大学教育はどこまで機能しうるか、一教員として何ができるか。古くて新しくて難しい宿題も改めて受け取りました。

「意欲的な学び」に切り替えよう

―学生に向けてのメッセージをお願いします。
高校までの勉強と大学での学びは全く違います。その違いにカルチャーショックを受けて欲しいと思います。大学では、「自分は◯◯を学びたい (○○を学びたいなら、それを学ぶために必要なことを自分で見つけて自覚的に学ぶ) 」という意欲的な姿勢が必要です。そこが、根本的に高校とは違います。

学生の皆さんによくあるのが、偏差値や文系・理系などの条件から「行けるところに」来た状態です。一方で、大学教員、特にこの大阪市大の教員は「学生に何かを学んで欲しい」「こんなに面白い世界があることを知って欲しい」という熱意に溢れていて、その意識の違いに驚くかもしれません。ですが、そういった違いを恐れるのではなく、楽しんで欲しいですね。

楽しむためには、「楽しませてくれる」ことを待っていてはいけません。自分から積極的に取り組んでいくことが大切です。今年からは「新入生のための授業選び案内」という資料を同封して、学生の皆さんが大学でどうやって学んでいけばよいのかを考えるヒントを提供しているので、ぜひ活用してください。この資料にはシラバスの読み方も書いてあります。近年のシラバスでは、授業の「到達目標」が明確化されるようになりました。授業を選ぶ前にその内容を知っていれば、より積極的に学べますし、成果も大きくなるでしょう。

―どうすれば意欲的に学べるようになるのでしょうか。
「なんとなく学んでいる」という状態から「自分の学んでいる (学んできた) ことにはこんな意味があるんだ」「自分は◯◯のためにこれを学ぶんだ」という意欲的な状態に自らを切り替えていくことが大切です。この切り替えができるかどうかは、教員の側ではコントロールしきれません。本当に「自分次第」なんです。全学共通教育科目 (一般教養) では多様な授業が開講されていますし、学年が進むに従って、より深く専門的な知的世界が展開されていきます。そこで多くの幅広い知に触れて、あるいは、大学教員たちの強烈な個性に触れて、「コレだ!」というのを見つけて欲しいと思います。

私自身、学生時代の最初の方は「なんとなく」勉強していました。しかし、私はこれが知りたい、もっと知るために実験や調査をデザインしたいと思ったとき、それまでなんとなくやってきたことの意味が分かり、見えていた世界が突然変わったような感覚になりました。この感覚は、「そうなってみないと分からない」ですね。そして、「そうなったとき」こそが、その人にとって「意欲的に学べる最適なタイミング」なのだろうと思います。

取材後記

昨今、新聞などでも注目されている「初年次教育」の最前線で研究活動をされている渡邉先生に、「大学での学び」について語っていただいた。2012年3月をもって卒業する筆者も、自分の学びたい分野が見つかった時から活き活きとして学問に取り組むことができるようになった。

新入生の皆さんや在学生の皆さんも、自分の学びたい分野を見つけて、大学生活を有意義に過ごして成長して欲しい。そのためには「経験」あるのみだ。実際に現場に出かけてみて、問題を自分の目で見るのがその近道だろう。

教授が語る夢バックナンバー

教授が語る夢のバックナンバーはこちら

文責

井坂直矢 (Hijicho)


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Hijicho on Twitter

ページ上部へ戻る