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隙間転落をなくしたい!スキマモリプロジェクト ~デザイン編~


列車・ホーム隙間転落の事例調査によると、10歳未満の子どもの割合がその多数を占めいることが判明した。そんな課題を解決するべく、JR西日本は「スキマモリプロジェクト」を開始した。​

スキマモリプロジェクトって何?

 大阪市立(現府立)工芸高等学校に併設された歴史を持つ大阪市立デザイン教育研究所によって生み出されたキャラクター「スキマモリ」を用い、転落険性への意識行動変容を促す「こども隙間転落防止プロジェクト」。大阪公立大学橋本研究室の協力により意識調査キャンペーンの妥当性を検証する仕組みを組み込んだ。
 スキマモリの概要や展望について、デザイン教育研究所、橋本教授、JR西日本の3者に取材を行った

①デザイン教育研究所


取材対象:松宮宏先生 ・大阪市立大学文学部心理学科卒    

           ・デザイン教育研究所講師

松宮宏さん
12月7日、植田真有撮影

ーデザイン教育研究所ではどんなことをしているのですか。

 私達は、デザインを戦略的に用いて企業の課題を解決する「デザインストラテジー」という授業をしています。JR西日本様とは、「小さい子供がホームと列車の隙間に落ちる危険を伝えたいが、現状のポスターでは効果が見られません。安全管理のポスターのデザインを考えていただけないでしょうか」と相談されたのをきっかけに協力させていただきました。​

ースキマモリはどのようにして進められていきましたか

 JR西日本のポスターは「そこは危険だから気を付けて」と呼びかけるもので、まさに担当者が「業者」に発注したステレオタイプでした。これでは誰にも見てもらえないし、アプローチが間違ってます。これを説明会で指摘するつもりだったんですが、1人の学生が「あんなポスター、効きません」とあっさり発言したんです。担当者はショック受けていました。(笑)
とはいえ、見る側に立つ視点こそがデザインの本懐であり、表眼のインパクトや質が「届くメッセージ」になります。​学生たちは直線的にそこを突きますが、まだまだ浅くて詰めが甘いです。そこで、まずは企業の担当者から話を聞き、学生に意見や感想を問います。それからデザインを始めるんですが、「AだからB」、つまり危険(A)だから気をつけよう(B)という答えでは届かない前提に立ちます。ひとまず数ヶ月間は落書きをするように頭の中で考え、整理もそこそこに1回目のプレゼンテーションを行うのですが、この段階ではどんなアイデアも捨てません。学生の自由自在なアイデアのプレゼンに臨みます。​

スキマモリが生まれた経緯を教えてください

 最初は学生の勘やアイデアに基づいて自由にデザインをひねり出し、その中から学生のオススメを選んでもらいました。それが「スキマモリ」という妖怪だったんですが、学生らしい奇抜なデザインを評価される一方で、鉄道会社の安全管理を象徴するイメージキャラクターが果たして妖怪で良いのかという意見もあり、議論は白熱しました。それからは企画書を更新し、動画やグラフィックの作成とデザインの修正を繰り返しました。大型ポスターやデジタルサイネージが公開され、公共空間にスキマモリを認知させるに至ったんです。
 また、このプロジェクトは誰に隙間転落の危険性をアピールするのか、対象を明らかにすることも大事だと考えられていました。そこで、過去3年間(2019~2021)の隙間転落事故を調査したところ、3件に1件は10歳未満の児童によるものだと分かりましたので、文字を使わずとも事故の怖さが分かりやすいデザインかつ子どもと親に分けてメッセージを理解できるような表現にしていく必要性を周知していきました。

妖怪で子ども向けに隙間転落の脅威を伝えるとなるとかなり難しそうです・・・

 スキマモリの扱い方にはかなり紛糾しました。(笑)
 最近は「鬼滅の刃」など、子どもにも大人にも人気なアニメも登場していますが、同時にグロテスクなシーンも多く見られます。「怖がる」意識が発達していないからとも言えますが、子どもの感覚と大人の常識が異なるということは非常に重要なことです。これを検証すべく、橋本先生の協力を得ながらワークショップを行い、子どもの恐怖心の程度や親の子どもの感覚に対する意識をデータとして見える化したところ、意外とスキマモリへの抵抗感が少ないことやワークショップ自体の満足度の高さを証明することができました。スキマモリをさらに展開していく良い機会になったと考えています。

今後の展望があればお聞きしたいです

 開発したデザインを数値によって検証できるというプロジェクトはこれからもやっていきたいです。スキマモリプロジェクト第3期では、1年生がデザインチームとなり、公立大心理学研究室の学生にも初期段階から参加してもらい、4月にキックオフさせる予定です。
 今回のように、デザインによる表現とアンケートなどでの検証手法を融合し、回収率を高めつつメッセージを理解してもらう成功体験は非常に意義のあることだと考えていますし、他の学部との連携も是非やりたいと思っています。もっと共同プロジェクト、やりましょう!!

 

文責 坂元 俊介(Hijicho)

※2月号の記事(文責 植田真有)を基に坂元が編集


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