HijichoのLINE公式アカウント
友だち追加数

きみはこれからなにをする? 第1回 商学部(2部)卒 和田隆博さん


大阪市立大学を卒業したOB・OGが現在どんな人生を歩んでいるのか、どんな志を持って生きているのかを紹介していくコーナーです。

2012年に大阪市立大学部商学部2部 (現在は廃止) を卒業された和田隆博さんは、現在東住吉区でNPO法人子どもデザイン教室を運営なさっています。ここでは、親と暮らせない子どもたちの自立を支援することを目的として、「学習活動に創作活動を掛け合わせた感覚教育」を行っておられます。

和田隆博さん

誰かの言葉から 何かが変わる

―子どもデザイン教室を開講された経緯を教えて下さい
高校を卒業してから、22歳でグラフィックデザインの会社を立ち上げました。
一生懸命作ったチラシやポスターが、期日になると破棄される儚さに面白さを見出しつつも、それを何十年も続けていると、私の仕事は社会の役に立っているのか、と疑問を感じるようになりました。世の中の役に立つことが他にもあるのではないだろうか、と考えるようになりました。
そんなことを考えながら、高校でマーケティングデザインの授業を受け持つようになり、人に教えることの面白さを感じるようになりました。自分が持っている知識を教えることで、子どもたちは変わっていきます。そこで、子どもを対象にしたデザイン教室を開こうと思いました。ですが、その子どもデザイン教室の構想をある人に話すと、「和田さんの考えは甘い。世の中にはお金持ちになりたくてもなれない人もいる。お金持ちの人をよりお金持ちにする方法を教えてどうするの?もう一度考え直してみたらどうか?」と言われて、閉口してしまいました。
その言葉が契機となって、近くにある児童養護施設を訪問してみました。そこでは、施設にいる子どもの約9割は、親がいるにも関わらず様々な事情で一緒に暮らせない現状があり、子どもたちに深刻な影響を与えていることが分かりました。施設で暮らす子どもたちの約4割に虐待や育児放棄の経験があると聞きました。また原則として18歳で施設を出なければならず、頼れる身寄りもお金も知識も少ない状態で社会で生活をしなければなりません。
そこで、この子どもデザイン教室を子どもたちにとって生きる術を身につける空間にしたいと考えました。

―大阪市立大学に入学されるきっかけは何だったのですか?
高校で授業をしているとき、ある生徒に尋ねられました。「先生、どこの大学出てるの?」社会人講師の資格でしたから「大学行ってないよ」と答えましたが、高校で人に教えているのに大学を出ていないのは少しまずいなあ、と感じました。以前から勉強はしたいと思っていたのですが、なかなか機会がありませんでした。高卒でも立派にお金を稼げるんだ、ということを証明したかったというのもありました。しかし、高校で教えるためには大学で学ぶ必要があると感じ、社会人として働きながら、大阪市立大学商学部2部に入学しました。
市大で大好きだったのは、山田仁一郎准教授の授業です。今でも尊敬しています。

生き抜くために必要な想像力

子どもデザイン教室をされている中で感じたこと
社会の中で、子どもが犠牲になっていることを強く感じます。
大昔の日本は、村を単位とした農耕社会で、血縁を越えた共同体でもありました。工業化が進み、家族のあり方が、大家族、核家族へと変化しました。今は、経済至上主義がいき過ぎ、核家族さえもバラバラになって、家族が霧状に分散していっている気がします。母子家庭の増加に代表されるように、特に低所得者層ではその歪みの影響を子どもが受けています。私は現在、小学2年生の男の子の里親でもあります。正直途方に暮れることもありますが、それは子どもが悪いのではなく、育ってきた環境が子どもをそうさせるのだと思います。そして子どももしんどいのだと感じます。

こういう活動の中で、子どもたちの口から「生まれてこなかったら良かった。」という言葉を何度も耳にします。幼少期にこんな感情を抱くものでしょうか。そんな子どもたちに応えたいと強く感じます。そのために子どもたちに想像力を学んでほしいと考えています。子どもたちの中には、今までしんどい思いをしてきたから、明日に希望を持ちにくい。今が楽しければそれでいい、という考え方をする子もいます。でもそれでは社会を生きていくことはできません。子どもデザイン教室で学ぶ過程の中で将来を設計する想像力を培ってほしいと思っています。

将来の夢は何ですか?
血縁を越えた「新しい家族の形」をつくることです。
みんな何か満たされないものがあって、家族とはそれを補い、共有できる関係だと思います。先ほど家族がバラバラになっているという話をしましたが、今流行っているシェアハウスは、血縁関係ではなく個人単位で繋がっているという意味で、新たな家族の形なのではないかと感じます。
私の考える「新しい家族の形」は、養育+教育+職能が一体となったものです。それは血縁を越えたこれからの共同体です。夫婦という一つの価値観で子どもを育てるのではなく、社会という多様な価値観の中で子どもを育て、自由主義社会に振り落とされない子どもを育て、社会に送り出していくインキュベータ(孵化装置)をイメージしています。

from editor

今回の取材を通して、和田さんは「社会の中で自分に何ができるのか」を常々よく考えておられるという印象を受けた。その原動力は「突き詰めること」だそうだ。
また子どもデザイン教室は (大阪市立大学がある)住吉区に隣接する東住吉区内にある。
今後どのような活動をされていくのか、注目していきたい。

関連記事

教授が語る夢 商学部山田仁一郎准教授

文責

石原奈甫美 (Hijicho)

写真

藤田悠以 (Hijicho)


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Hijicho on Twitter

ページ上部へ戻る