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誰も取り残さない多様な「性」を にじいろらいとの講演から学ぶ


 「多様な性」と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか。LGBTをはじめとするセクシュアルマイノリティー、「男らしさ」「女らしさ」などを考えるジェンダー問題……。社会には多様な性に関する課題が数多くある。しかし、それらは決して一部の人々のみの問題ではない。自分も多様な性の一人であるということを理解し、自分の問題として捉えることができれば、より自由に自らの性を考えることができる。
 全国の学校でLGBTを含む多様な性やジェンダーに関する講演活動を行い、性に関する教育の在り方を考える団体「にじいろらいと」の柳淳也さん(商・博1年)と学部生のあーちゃんさんにお話を伺った。

 

 ――にじいろらいとの活動を始めたきっかけを教えてください。
  学校の授業としてセクシュアルマイノリティーについて講演できる当事者を探していた知り合いに声を掛けられ、2013年に活動を始めました。

 ――団体名の由来はなんですか。
  多様な性のシンボルとして使われている「虹色」という言葉に、セクシュアルマイノリティーやジェンダーの問題に光(light)を当て、権利(right)をもたらそうという意味で「ライト」を組み合わせました。

 ――どのような学校に講演に行くのですか。
 あーちゃん 大学ではほとんど講演しておらず、小・中・高校、特に小学校からの依頼が多いですね。近畿圏を中心に全国各地を訪れていて、11月には鳥取まで行ってきました。講演依頼の8割以上は教員向けの研修です。

 ――どのような理由で講演に呼ばれるのですか。
 柳 教員研修の場合は、LGBTが話題になっているから勉強しよう、というケースが多いですね。あとは来年トランスジェンダーの子が入学してくるのでそれに向けて学んでおきたい、という学校もありました。市のイベントや公開講座での講義だと興味がある人しか来ませんが、学校の講習だと半ば強制的に、これまで関心のなかった人にも聞いてもらえるのがいいなと思っています。

 ――今の日本の性教育の特徴や問題点を教えてください。
  例えば同性愛について、現代日本では、同性愛は先天的なものであり、選んでそうなったわけではないのだという説き方をされることが主です。また、同性愛者は世界の人口の7.6%を占め、これは左利きの人の数と同じくらいだ、ということもよくいわれています。しかし、それらの考え方で捉えると、同性愛者は「先天的で人数が多い」から認めなくてはならないという話になってしまいます。では数が少ない人権課題は無視していいのか? 自分で選んで同性愛者になった人は差別していいのか? それは違いますよね。このように、何かしらの理由があるから認めなければならないという説明や、同性愛者とそうでない人というふうに二分しようとする考え方では、多くの人を取りこぼしてしまうのです。

 ――どのような人が取りこぼされてしまうのか、より詳しく教えてください。

 柳 例えば、同性に性的魅力を感じつつも同性愛者というアイデンティティーを持てず、社会の目を気にして異性と結婚してしまう人もいます。また、トランスジェンダーといえるほどのアイデンティティーは持てないものの、どこか社会的に押し付けられた性別に違和感を持っている人もいます。

 ――日本の性教育について、他に特徴はありますか。
  純潔を重んじる、道徳的な傾向が強いのが特徴だと思います。性の多様性についての教育といえども、性行為など性の話はほとんど出てこないんですよね。子供にはまだ早いという考えと、性行為は愛する人とだけすべきで、できればしないことが一番いいという思想が影響しているようです。外国では人権教育として扱われるのが主流で、誰もがよく生きる権利があるという思想の下、どのような性行為をするか・しないかという自己決定の話や妊娠・中絶の話まで詳しく行われています。また、性的嗜好についての話も日本ではあまりされませんが、私たちの講義では重要なものとして捉え、伝えています。

 ――性的嗜好についてどのような講義をしているのですか。
  例えば、童話『白雪姫』では毒リンゴを喉に詰まらせたお姫様が王子様のキスによって生き返ります。しかし、よく考えると王子様はお姫様の死体にキスしているんですよね。これは死体愛好という性的嗜好です。また、同意なしにキスするのは強制わいせつですよね。それでは王子様はどうすればよかったのか、といったように、物語を用いて性的嗜好について考えてもらいます。
 私の友人にはふんどしや全身タイツを好む人がいます。どんな性的嗜好も尊重されるべきであり、治せるものではないし治す必要もありません。しかし、性犯罪について考える場合、被害者の気持ちを重んじるあまり、性的嗜好は善くないものだと性愛そのものが否定されてしまうことが少なくありません。繰り返しますが、どんな性的嗜好も素晴らしいものであり、欲求を否定することは間違っています。とがめられるべきはその嗜好によって他者を侵害したということです。相手を傷つけてはいけないという話を伝えています。

 ――他にはどのような内容の話をしているのですか。
  「男らしさ」「女らしさ」という話もしています。考えてみると「男らしい」「女らしい」とさされる外見的なものはとても曖昧なんですよね。男性もマニキュアを塗ればいいし、女性もつけひげをつければいい。髪も筋肉も声も、なんなら性器も変えられます。このように、身体の性はすぐに変えることができます。大事なのはどういう性別で生きていきたいか、そして、身体や服装でどのように性別を表現してもすべて尊重されるべきだということです。好みの服装、性器、どの性の人を愛するかなど、性別を決定する軸は人によって本当にさまざまです。
 単に「LGBTなどのマイノリティーを認めよう!」ということだけを言いたくて講義をしているわけではありません。大切なのは「自分自身も抑圧されているかもしれない」と自分のこととして考えてもらうことです。本当は髪を伸ばしたい、この制服は着たくない、結婚したくないなど、マジョリティー側だと思っている人も、社会の目を気にして無意識のうちに自分自身を「普通」とされる側に当てはめてしまっているのかもしれません。誰もが多様な性の一人だということを知ってもらいたいと思っています。みんな、自分の「好き」を大切にしてね。

 ――講義を受けた人々の反応はいかがですか。
  混乱した、今までの価値観が揺るがされた、などの感想をもらえると、考えさせることができたのかと感じてうれしいですね。
 あーちゃん それでも特に先生方の中には、今までの「当たり前」を変えられない人も多いように思いますね。「LGBTについては分かったけど、みんな子供を産み育てるべきだ」というような感想が書かれていることも。
  おい! ってね。

 ――講演はどのように運営して行っていますか。
  にじいろらいとには正式なメンバーがいるわけではないので、私が声を掛けた人にその都度手伝ってもらっています。ゲスト講師として謝礼をもらって講義をしていますが、スライドを作ったり、事前にミーティングをしたり、かなり手間です。学校まで行くにも時間やお金がかかりますし。
 あーちゃん カミングアウトして話すのはリスクの高いことですし、自分の体験も話さなくてはいけない。それを考えると謝礼は割に合っているとはいえませんね。

 ――それでもにじいろらいとの活動を続けるのはなぜですか。講演に込めた想いを教えてください。
 あーちゃん 私は小学校の時から性の多様性についてもっとしっかり学ばせてもらえていれば、ここまで悩んだり、こじらせたりすることはなかったのではと思っています。恨みつらみですね(笑)。それをこれからできる限り周りの人に伝えることによって、過去の自分を救ってあげたいという思いがあります。
  異性愛、性別二元論を中心とした教育に苦しんでいる人はいまだたくさんいると思います。同じように私も学校現場で苦しんできた身なので、せめて未来には残したくないという思いで続けています。生き方はたくさんあり、どんな生き方をしてもいい。そして、多様な性を学ぶことで身近な人々を傷つける可能性を減らすことができるということも伝えていきたいですね。

 

にじいろガッコーについて
 ――今行っているイベント「にじいろガッコー」について教えてください。
  講演は自分はセクシュアルマイノリティーではないと思っている人に向けたものですが、にじいろガッコーは当事者であることを自覚している若者向けのイベントです。大人は自分で同性愛者のコミュニティーなどに行ってつながりを探すことができますが、若者がそのように仲間を見つけるのはなかなか困難です。彼らのために何かできないかと思い、始めました。集まって話をしたり、お菓子を食べたり、カードゲームをしたりとゆるく楽しく行っています。

12月16日のにじいろガッコーの様子=あーちゃんさん提供

 

 ――第1回(10月)と第2回(11月)の様子はいかがでしたか。
  参加者は全然来ず、本学のLGBTサークルSPICAのメンバーを中心とした、見知った大学生の当事者たちばかりでしたね。しかし、各回1人ずつ、初対面の人が来てくれました。そのうちの1人は四国からわざわざこのためだけに来てくれたんですが、彼はこれまで、ゲイの当事者に一度も会ったことが
なかったそうです。地元だと人目を気にしてそういいうイベントに参加できないという人も多くいます。当事者に会って話をして、価値観が変わったとメールが来てうれしかったですね。

 ――これからの目標はなんですか。
 柳 参加人数を増やすことを大きな目標にはしていません。勇気が出ず、実際にイベントに来ることはできなくても、こういう取り組みがあるという事実を知るだけで救われる子もいるかもしれないですよね。参加者数には表れなくても、どこかで何か感じてくれている人がいればいいなあと思っています。興味がある方はぜひご参加ください。

 にじいろガッコーについての詳細はこちら。

にじいろガッコー

セクシュアルマイノリティーの子や、そうかも?と思っている子のためのイベントです。

過ごし方は自由。普段の悩みを相談しても、周りの人と雑談しても、一人で本を読んでもOKです。

(ボードゲームや、性の多様性についての本&漫画を用意しています!)

日時:2/2(土)11:30~17:00

開催時間中はいつ来ても、いつ帰ってもおっけ~。ふらっと気軽にお越しください!

場所:大阪市立大学杉本キャンパス 高原記念館2階

連絡先:nijigakko@gmail.com

道案内が必要な方は、件名を「2月2日にじいろガッコー参加」にして、本文に「ニックネーム」と「何時から参加したいか」を書いてメールをお送りください。

杉本町駅東口で待ち合わせ・ご案内します。

文責

行田美希(Hijicho)


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