HijichoのLINE公式アカウント
友だち追加数

おもろい学生おりまっせ!◇第6回~教科書発行者・山下明~


おもろい学生おりまっせ!第6回は、工学部電子・物理工学科4回生の山下明 (やましたあきら) さんを取材しました。山下さんは個人で初めて教科書を制作し、発行した大学生です。

「おもろい学生おりまっせ!」は、大阪市立大学で活動している個性溢れる大学生を取り上げ、紹介していくコーナーです。「大阪市大に存在する興味深い学生の素顔に迫り、大学生同士の興味・関心を誘発させること」をコンセプトにしています。

 

写真=作成した教科書を持つ山下さん

写真=作成した教科書を持つ山下さん

“教科書発行者”への道

―大学生活で特に力を入れたことは何ですか?
教科書制作ですね。高校生用の電気基礎の教科書を作りました。2回生の春から教科書の作成を始め、その10月に教科書検定に申請し、認定されたのが3回生の1月、そして今年の4月から北海道の工業高校で実際に採用される予定です。昨年12月に企画された西澤学長との懇談をきっかけに多くのメディアが取材に来ました。確認できているだけで70近くの記事に掲載されましたね。検定に申請してから知ったのですが、教科書を検定する方が周りから注目されることなく検定できるように、申請自体を秘密にしなければならないらしく、認定されるまでの間は原則秘密にしていました。近しい友人や家族にはバレてましたが (笑)。

―なぜ教科書を作ろうと思いましたか?
高校生の時から、従来の教科書は分かりにくいと思っていたんです。「自分だったらもっと分かりやすい教科書を作れるぞ!」というのが最初の思いですね。

従来との違いは大きく分けて3点あります。一つ目は、「だ、である調」を「ですます調」にしたこと、二つ目は内容を絞ってコンパクトにしたことです。そして三つ目に最も力を入れたのですが、磁気の範囲の表現方法を大きく変えました。本来、N極とS極はどれだけ切り離しても単体で存在することはないのですが、従来の教科書では計算上、それが単体で存在すると受け取れるような表現を採用してしまっていて、私はそれで高校時代に苦労しました。それはE-H対応と呼ばれる解釈方法だったのですが、それを大学で採用されているE-B対応による記述で表現しました。かなり分かりやすくなったと思います。

―教科書発行の中で特に大変だったことは何ですか?
教科書発行に一から携われたのは大きな経験となりました。教科書検定の申請方法を調べたり、東京の文部科学省を訪ねたりと、普通ではできない経験だったと思います。一番辛かった時期は3回生の秋で、教科書の手直し作業でした。101箇所もの修正点を35日間で修正せねばならず、中でも「理解し難い表現である」というコメントには心が折れそうになりました。それでもやり遂げられたのは、修正指定箇所を直し切った先にある「教科書発行者」という憧れと責任感があったからだと思います。

自分の書いているものが高校生の手に渡ると考えれば頑張れましたし、だからこそ少しでも良いものを作らなければならないと思っていました。これを通して、日本の教科書がいかに厳しく検定されていて、質が高いものかを痛感しました。

教科書に関しては、大学生としてではなく、教科書発行者として対応するように心掛けています。

また、教科書の印刷・製本は全て自己負担です。検定には合格したけれど、実際に高校が採用してくれるかどうか分からないというのがとても怖かったです。というのも、採用してもらうには各高校に見本の800冊を配らなければならず、合計で40万円近くかかります。その一歩を踏み出すか否かですごく悩みました。そんな時に背中を押してくれたのは高校の恩師の言葉でした。

「自分が思うようにするのが良い。ただの自己満足で終わってそれでいいと思うならそれでいいし、折角作ったんだから誰かに読んでもらいたいのならば配ったら良い。好きなようにすればいい。」

その言葉を聞いて、「じゃ、やるか!」と何とか決心できたんです。採用してくれる高校があって本当に嬉しかったです。

ただ、現時点で80万円近く出費しています。大学の購買部であるシェリーでも販売してくれていますが、教科書制度によって定価に上限 (一冊2135円) が設けられていることもあり、まだまだ赤字です。

―なぜ今まで個人での発行がなかったのだと思いますか?
やはり労力だと思います。今までは、活版印刷などが基本だったので、労力が非常に大きく、一人では不可能だったのではないかと。今ではパソコンで全てできるので、私も何とかできました。大変な事には変わりませんが、これから個人で作る人が出てくるかもしれませんね。また、個人でも教科書を作れるという事があまり知られていない可能性もあります。高校用の教科書発行における制限は実は皆無で、申請を行なった時点で私はまだ19歳でしたが、何の問題もありませんでした。

―今後の展望などはありますか?
この春から大阪府の工業高校の教師として働く予定ですが、教師をしながらまた新しい教科書を作りたいです。ただ、現在学部で研究している内容を深く勉強したいとも思っているので、いずれ高校教師を休職して博士課程に進もうと考えています。どんな教科書にするかはまだ考えていませんが、休職するまでに一冊作ることを目標としています。それと、いずれは自分の教科書を自分の生徒にも使ってもらいたいです。隅々まで知っているので、非常に使いやすいと思います。

夢は色々あります。直近の夢は博士号取得です。それから、教科書発行者として名を残すことです。この先数十年掛けて、色んな教科書を作っていきたいです。また、クラシック音楽が大好きなので、いつかウィーンのニューイヤーコンサートを聞きに行きたいです。あと、個人でグランドピアノを買うのも夢の一つですね。2回生の秋からピアノを始め、発表会に出るくらいはまってます (笑)。

 

楽しみは音楽と通訳

―趣味について教えて下さい。
趣味はクラシック音楽鑑賞とピアノですね。クラシック音楽にも色々ありますが、落ち着きたい時はバッハやモーツァルト、激励されたい時はブラームス、芸術としてはベートーベン、感涙したい時はオペラを聴きますね。また、フンメルのトランペット協奏曲はノリの良い軽快な曲で、急いで作業をするときに合っていると思います。101箇所の修正時によくかけていました。ぜひ聴いてみてください。

流行り歌は知っている世代が偏ってしまったり、すぐに次の曲が出て色褪せてしまったりしてしまうのに対し、クラシックは時間を越えて楽しませてくれる点が魅力だと思います。このクラシック好きが高じて、自分でもピアノを始めるようになりました。遅咲きの趣味ですが、一生の趣味にしていきたいです。

他には、大阪SGG (SYSTEMATIZED GOOD-WILL GUIDES) クラブという非営利団体で通訳ボランティアをしています。外国人が日本で快適に過ごせるようにしようという理念で活動しているのですが、英語の勉強にもなるし、日本の事もよく知れるのでとても良い活動だと思っています。月1回くらいの頻度ですが、外国人と濃密に関われるのが魅力で、ボランティアで観光ガイドをしている時はまるで海外旅行をしているような気分になれます。

映画はそんなに見ないのですが、チャップリンは好きですね。貧富の差に対して憎悪する感情に共感してしまい、何度も泣いてしまいます。

また、故・キュリー夫人をすごく尊敬しています。彼女の伝記はぜひ読んで欲しいですね。壮絶な彼女の人生にとても感銘を受けました。

それから、私はエリザベスギルバートという小説家の言葉を座右の銘としています。

”Tis’ better to live your own life imperfectly than to imitate someone else’s perfectly”

訳すと、「他の誰かの完璧な人生を真似るよりも、不完全でも自分自身の人生を生きる方が良い」といった意味になります。みんながあれをしているから、自分もあれをしようという生き方ではなく、どこか他人と変わっていたとしても自分なりの人生を歩みたいと考えています。

―1回生に戻れたら何をしたいですか?
海外留学したいです。3回生の時に1ヶ月ほどアメリカに留学しましたが、その経験で大きく感化されてSGGにも入りました。英語ができれば、文化の異なる人たちとコミュニケーションが取れるので、その楽しさをもっと早く知りたかったですね。もっと早く行っておけば色々と変わっていたと思います。

―1番大切な感情は何だと思いますか?
他人に対する思いやりですね。他人の為ならいくらでも頑張れる。他人の為に頑張る時は、自分の為に頑張る時の限界を越えて頑張れるように思います。春からは生徒のために頑張りたいし、好きな人ができたらその人の為に頑張りたいと思います。

―20万円あったら何に使いますか?
奨学金という名の借金返済や引っ越し代に使いたいです。それ以外では、ニューヨークのメトロポリタンオペラを見に行きたいですね。往復の飛行機代と滞在費とチケット代で20万円くらいかなと思います。場所によってオーケストラの音は全く異なるんですよ。以前一度聴きに行ったサンフランシスコでは、まさに人種のるつぼのように色んな民族が集まりながらも、まとまった一つの音楽を奏でていて、感動しました。生で聞いたことはないのですが、ニューヨークでは派手な音楽が多くて、シカゴでは金管楽器が特に派手なんじゃないかなと思います。

―市大生にメッセージを。
大学生でいられることに感謝して楽しんでもらいたいです。なかなか気付かないものだけれど、学生というのは意外と贅沢なものです。貴重な時間なので、それを分かった上で有意義に過ごしてほしいです。

  SONY DSC

From Editor

個人で教科書を作る。それはいかほどに大変なことだろうか。この偉業を成し遂げたのが、日本において彼以外に存在しないという事実がそれを物語っている。膨大な時間とコストを前にして、彼の背を押し続けたものは「教科書発行者」という憧れと責任感、そして自分自身の生き方で生きようという決意。そんな彼だからこそ、「前代未聞」を壁と思わず、目標に向かって突き進むことができたのだろう。周りと合わせるのではなく、自分自身で考えた自分の生き方を貫く。その先にこそ「栄光」があると、彼の生き方が語っているように感じた。

関連記事

おもろい学生おりまっせ!◇第1回 ~あわねにゃんちゅう~
おもろい学生おりまっせ!◇第2回~学生ドリプラ・新田達也~
おもろい学生おりまっせ!◇第3回~コノユビトマレ・吉田成希~
おもろい学生おりまっせ!◇第4回 ~商一会・石躍凌摩~
おもろい学生おりまっせ!◇第5回 ~休津亭・林侑輝~

文責・写真

新舎 洸司 (Hijicho)


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Hijicho on Twitter

ページ上部へ戻る