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教授が語る夢 文学研究科・仁木宏教授


市大の様々な教授にインタビューをし、個人的な夢や思想を聞くことで教授自身のことを追究していくこのコーナー。第9回は大阪市立大学文学研究科の仁木宏教授にお話を聞きました。仁木教授は、自身の研究の一環で大学近辺の歴史について研究されており、地域のフォーラムなどにも度々登壇し大学と地域の連携に貢献されています。 仁木教授のプロフィールはこちら (研究室HPより)
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/jhis/niki.html


仁木教授写真=仁木宏教授

人との繋がりを大切に

―先生の研究内容についてお聞かせください。
15世紀から17世紀の日本の都市史、具体的には大阪、京都、堺などの大都市や、新潟県、山口県、九州、静岡県などの中小規模の都市について研究しています。城下町、港町、自治都市など、いろいろな種類の都市を扱っています。主に文字の史料を基にしていますが、現地を歩くのが好きなことから地理学的なことにも、考古学の発掘成果に基づいた都市景観の復元にも興味があります。 30年間、フィールドを変えながら研究してきましたが、国家史、政治史の対極にある地域社会史の研究が大切だと考えています。戦国大名が歴史を動かしたと思われていますが、そのような「大人物」を生み出した社会的な背景にこそ意味があるのです。例えば、どうしてトップクラスの武家出身ではない織田信長が日本を統一できたのか、分析することで戦国時代が日本の歴史の中で持っていた大きな意味合いが明らかになります。個人の歴史ではなく、個人を生み出した社会の歴史、社会の変化、本拠をおいた都市の動向などを解明することがおもしろいと思います。
大阪、京都という2つの都市に自分の学問的、生活的基盤があり、どちらも客観的に見ることができるというメリットは、自分の研究の中で大きいですね。 また、実際に現地をあちこち回るのが自分の研究のスタイルで、時には大学院生、学生を連れて足を運びます。それぞれの博物館などの研究者との交流を通じて地域の歴史を学んだり、相手の依頼を受けて研究を進めたりすることもあります。フットワークは軽い方だと自負しています。

―そのフットワークの軽さから、実際に住民の間に入って活動されたこともあるそうですね。
尼崎市富松地区では、富松城の土塁 (城壁) の一部が残っています。城の意義について講演してほしいという依頼を受けて、地元に伝わる絵図を元に城が生き生きと栄えているときの様子を推定地図上に復元し、小学校で地域の皆さんに向けて講演をしたんです。おかげさまで城の重要性が多くの方々に知られるようになり、今も土塁が壊されずに残っているところを見ると、地域の文化財保存のための力になれたのではないかと思いますね。 研究者として一方的に研究を進めるのではなく、実際に神社の神主さんや地域で保存運動をされているリーダーの方など一般の方に話を聞きました。地域の人の近くに立って活動をすることで、人と人との繋がりを感じることができます。 実際にあちこちでお世話になっていて、人との繋がりが、自分が研究を進める上での大きな財産となっていますね。

―先生の趣味は何ですか。
犬を2匹飼っているんですけど、朝に散歩を連れて行くことが私の日課となっています。出会った人と挨拶をしながら歩くのは、すがすがしいです。体を動かすために、テニスも週1、2回しています。 あとは、大河ドラマや歴史映画を、つい専門的な目線で見てしまいます。最近の大河ドラマは突っ込みどころ満載ですね。(笑)

歴史と文化が根ざすまち、住吉

―市大生に知ってほしい、住吉区の魅力は?
明治以降、大阪、堺が鉄道で結ばれていく中で大阪に取り込まれてしまうまでは、住吉は住吉大社を中心に一つの世界として独立していました。 大阪が拡大して取り込まれてしまった後も、独自の文化を持った地域であることは間違いありません。高級住宅街である帝塚山、大阪南部の発展のシンボルとして建てられた市大などがあり、文化的歴史的に固有の資源を持つ地域だと思います。あまり研究が進んでいませんが、今でも探せばそうした名残があちこちで発見できます。市大生や地元の人には、住吉という地域に誇りを持ってほしいですね。ここには、他の土地にはない歴史・文化の深さ、伝統があります。 大阪市立大学は現在、国際化、グローバル化を謳い、世界の大学ランキングの上位に昇ろうという大学の方針がありますが、一方で、地域の中でどのような立ち位置であり続けるかも重要です。大学の近くにも古文書が残されてきたのに今まで市大の教員があまりそれらに注目してこなかったのは残念なことです。地域の古い歴史を、大学の研究者が解明し、市民の皆さんに語っていくことは大事だと思います。遠里小野、我孫子、苅田などは中世の史料にも断片的に出てきます。昨年授業で扱った遠里小野もそうですが、地理的な視点で見れば、近代の都市計画が及んでいない集落も見つかります。路地が入り組んでいるような場所がたくさんあることが、古い地図を片手に歩けば分かります。 江戸時代の古地図を分析していくと、戦国時代まではさかのぼれます。自分が専門的に扱える時代の中で大学の近辺の歴史を解明したいと思っています。この先取り組みたい課題です。

―市大の近辺でおすすめスポットはありますか?
一般の学生が立ち寄って歴史を感じられるのは、住吉大社と我孫子観音ですね。住吉大社は住吉という地域の発祥地ともいうべきものなので、ぜひ市大にいるうちに一度は足を運んでほしいです。初詣には、京阪神や和歌山からも人が集まります。また、我孫子観音も古くから地域の核となってきたもので、今でも一般の人の信仰の拠点になっています。祭礼のときには露店も並び盛り上がるので、行ってみてください。我孫子については、2014年度後期の文学部1回生向けの授業で取り上げる予定です。

地域から、世界へ

―先生が思う「市大らしさ」とは、何ですか。
世界的にいろいろな大学がある中で、この市大はもっと注目される大学になる可能性を秘めています。京大や阪大にも近い研究水準や能力を持っている大学院生などがいるにも関わらず、自分は市大だということで諦めてしまっている風潮があるので、もうちょっと自らを解放し、自信を持ってもいいのではないかと思います。学生が飛躍できる場をつくることは教員にも責任があると思います。大学全体でブランドを高めていくことが必要ですね。 地域との繋がりを持っているのは、市大のメリットです。私の研究は、地域を明らかにするだけでなく、地域のことから日本の歴史を見てゆくことを目標にしています。そこが「お国自慢の郷土史」と地域史の違いでもあります。
地域から歴史、社会の全体像を見ようとしています。大学も同じで、地域に根ざしながら、日本、世界にアクセスする在り方が大事なのではないでしょうか。ローカルとグローバルは正反対ではなく繋がっているというのが、自分が歴史をやっている実感でもあるし、市大が今後目指していく在り方だと思います。

―最後に、市大生へのメッセージをお願いします!
大阪の南の住吉という地域に作られ、大学として発展してきたという市大の歴史が、今後大学が発展していく方向性を示しています。そして、それはおそらく多くの市大生にとっても求められていることではないかと思います。 この住吉という地域を出発点に、歴史・文化が醸し出す大阪の良さ、イメージに捉われない大阪が持っている多様性を学び、自らの今後の生き方、社会生活の基盤として活用し、日本や世界で活躍できる人材になってほしいです。

From editor

研究者というと研究室に籠っている、遠く離れたところにいるイメージがあるが、実際に地域の中に入って活動されている話などを聞くと、親近感が湧く。研究を地域活性化に生かしているというのは、とても画期的で理想的なのではないだろうか。
学問でも人との繋がりにおいても、グローバルとローカルは切り離せない。ローカルがあってこそグローバルが考えられるとは聞いたことがあるが、広い世界に出る前に、ここ市大でしか学べないこともある。市大に、市大生であることに、誇りを持とう。
授業ではフィールドワークを通じて大学周辺地域の歴史を学べるということなので、興味のある人は是非後期の時間割に組み入れてはどうだろうか。

文責・写真

長澤彩香 (Hijicho)


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