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教授が語る夢 番外編 大学院医学研究科整形外科学 病院講師 上村卓也先生


 市大の様々な教授や講師にインタビューをし、夢や想いを聞くことで先生自身のことを追究していくこのコーナー。第10回目となる今回は大阪市立大学医学研究科で整形外科学が専門の上村卓也先生にお話を伺いました。上村先生の研究グループは「iPS細胞を用いた人工神経の長期有効性と安全性」を世界で初めて明らかにされました。

写真【上村卓也】
写真=上村卓也先生 (本人提供)

人工神経の改良を目指して

-iPS細胞を人工神経の再生に利用しようと考えられたきっかけは何ですか
 まずは現在の末梢神経の再生方法について説明したいと思います。現在、ケガなどで手足の神経を大きく切断してしまった場合、体の他の部位から正常な神経を採取し切断部に移植するという自家神経移植という方法が採られています。しかし、この方法では正常な神経を採取した部位にしびれなどの障害が生じてしまうという問題があります。そこで、その問題を解決するために人工神経が開発されました。ただし人工神経にも神経再生能力が乏しいことや、固い素材のため関節付近などのよく動く部分などに移植出来ないという問題があるため、一般的な治療法とはなっていません。
 そこで人工神経の再生能力向上のため、私たち研究グループは人工神経の再生能力を高められる細胞を付加することを考えました。まずは、末梢神経の再生に重要な役割を担っているシュワン細胞に目を付けました。しかし、シュワン細胞は大量に培養がしにくいという欠点があり、おまけに正常な神経からしか得ることが出来ないという課題がありました。その後、iPS細胞の研究で2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥先生が市大の整形外科の医局出身であったこともあり、シュワン細胞に代わる有用な細胞としてiPS細胞を利用することを思いつきました。iPS細胞はヒトの皮膚から培養できるため正常な神経を犠牲にせずに済むうえ、シュワン細胞のように神経再生に有効な細胞に無限に変化させることが出来るというメリットがあります。そこで人工神経にiPS細胞を付加することにしたのです。

-将来どのような分野に応用出来ますか
 やはりケガで手足の神経が切れてしまった時ですね。通常は神経が切れてしまうと、神経の断端面が整っていないため、縫合する前に断端面を整えるために少し神経を切らなければなりません。そのために隙間が出来て神経同士を直接縫うことが難しくなります。そのような場合には人工神経が役立つことになります。日本では年間約20万人の人々が手足のケガで神経を切断しており、そのうちの約1/3ぐらいの人が人工神経を必要としているのではないでしょうか。また、私たち開発した人工神経は、非常に柔らかく、かつ神経再生能力を高めるために細胞や成長因子を足すことができるものであり、未来の神経再生の形に近いものとなっています。

-実用化に向けた、現在の研究の進捗状況を教えてください
 今回の研究で、動物において、iPS細胞を付加した人工神経の有用性が証明されました。ただ、これはまだ動物基礎実験の結果です。実際にこの技術を実用化する場合、まずは私たちが開発した人工神経を商品化する必要があります。そのためには人工神経の安全性試験と、ヒトで治験 (開発中の医薬品や医療機器を患者や健康な人に使用してもらい、データを収集して有効性や安全性を確認する試験) を行い、安全性を確かめる必要があります。この手順に3~4年は必要ですね。そして人工神経の安全性が確かめられた後、iPS細胞を付加した人工神経の治験を行うという手順になります。その頃になると、iPS細胞でも多くの治験がなされていると思うので、iPS細胞の安全性はクリア出来ていることが予測されます。全ての試験に合格し実用化されるまでには、10年ぐらい必要かもしれません。現在は安全性試験と治験の準備を進めている段階です。

-研究時に心掛けていることはありますか
 私は研究をしているだけでなく、普段は整形外科の医師として勤務もしているので、現場の患者さんを診る機会も多いです。切れてしまった神経を縫合する手術なども行っていますが、現在の技術を駆使しても神経を完全に縫合することは難しいといった問題も実感しています。完全に治らない患者さんを目の当たりにしているので、研究だけで終わってしまうような研究にはならないように、実際に患者さんの治療に役立つような研究をするように心がけています。

-医学を志したきっかけは何ですか
 私自身が子供のころ喘息などで病院にかかることが多かったため、人を「治す」ということをしたいと思うようになりました。またスポーツをよく行っていたので、ケガの治療に関わる整形外科に興味を持ちました。整形外科は、ほとんどの患者さんが治療によって元気に回復し、幸せになって退院していくという点も魅力的でしたね。

-学生時代はどのように過ごされていましたか

 勉強は人並みにしかしていませんね (笑) 部活のテニスに没頭していました。かなり厳しい部活でしたが、上下関係や忍耐力を養うことが出来たので良い経験だと思っています。今振り返ってみても今までの人生で一番しんどかったです (笑) 大学時代での運動の経験は整形外科に興味を持つきっかけになりましたね。

どんな状況でもベストを尽すことが大切

-趣味、座右の銘は何ですか
 趣味はスポーツやその観戦ですね。野球やサッカーなど何でも観ます。その中でも、学生時代にやっていたテニスが一番好きです。
 座右の銘は「塞翁が馬」ですね。進路(人生)において自分の希望通りとはいかない場合も多いですが、与えられた場所で自分のベストを尽くすということをモットーにしています。

没頭するものを見つけ、人間性を高めよう

-市大生に一言お願いします
 大学生の期間は短いですが、社会に近づきつつ、自由な時間を持ち、さらに自分の好きなことが出来る貴重な時間です。ダラダラせず、勉学以外の色々な分野のことに没頭して欲しいと思います。 (もちろん勉学に没頭してくれても構いませんよ。) また自分の好きな国に旅行して、異文化に触れてみるのも良いと思います。視野を広げることが大切です。
 そして人間性を高める努力をして欲しいですね。人間性は社会生活をおくる上で最も大切なものです。能力がいくらあっても人間性が損なわれていてはダメです。皆さんには貴重な大学時代を有意義に使って、是非人間性を磨いて欲しいと思います。

From Editor

 今回の取材では医師の方とお話をするという貴重な経験が出来た。現在の医療を少しでも良くしたいという上村先生の熱意がとても伝わってきた。また「与えられた場所でベストを尽くす」というお言葉がとても印象的だった。どんな状況でも諦めない姿勢に感銘を受けた。上村先生の研究の進展に大いに期待したい。 

関連情報

iPS細胞を用いた人工神経の長期有効性と安全性を実証 (大阪市立大学ホームページ)
http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2014/gb2u4u-1

文責

山原 怜太朗 (Hijicho)

 


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