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ガクジョウナンミンを救えるか 学術情報総合センター休館日問題


次の様なシーンに出くわしたことは無いだろうか。とある第4木曜日。勉強・調べ事・空き時間を潰すなどの目的で学情に赴くも、休館の事実を知り、ゲート前で途方に暮れる。いたしかたないので、1階の交流スペースを利用したり、サークルのボックスに向かったり、果ては行き場を失って帰宅する。

巷ではこうした状況を揶揄して「学情難民」と呼ぶことがある。行き場を失い、たたずむ様があたかも難民の様に映るのであろう。広い意味では学情難民は第4木曜日の蔵書整理日に限らず発生する。日曜・祝日は学情が完全閉館しているがために勉強場所を確保できない人。夜を徹して勉学または読書に励みたいのに、閉館時間になって追い出されるような形で学情から出て行く人。そうした人も学情難民の定義に入るだろう。

「学情難民」という言葉はさておくとしても、学情の休館・閉館時間は、勉学・研究、その他に学生生活を送る上で少なからず影響を与える事柄だ。自宅では集中できないから、学情に籠り、夜通しで勉強したい。または本に囲まれて勉強したい。そのような思いをもった学生も少なからず存在するのではないだろうか。

なぜ休館日が存在するのか、開館時間はどうして現状のようになったのか。そして今後、「学情難民」を救うことは可能なのか。学情を運営する職員の方への取材を通してその答えを探った。

フロアごとの開放も困難

第4木曜日に、1階を除いて、他のフロアが閉ざされているが、その裏では機器のメンテナンス、書架の整理、蔵書の点検などが行われている。これらの作業は、学情が快適なサービスを提供していく上で欠かすことのできないものだという。

問題なのはその曜日だ。なぜ平日、学生が多く通学する日にそうしたことが行われるのか、不満に思う人も多いだろう。

ただ、日曜・祝日にメンテナンスを行うことはコスト面から難しいようだ。「普段、カウンター業務を行っている職員がメンテナンスや蔵書の整理に当たる」ということからも、日曜・祝日に学情を開けて蔵書整理を行うならば、別途、人件費・光熱費がかかってくるだろう。

また、学生が普段利用する平日ではなく、土曜日に休館日をずらすことにも問題があるという。「日曜・祝日に開館していない分、どうしても社会

人の方は夜間と土曜日にしかほとんど来ることができない。その日にしか使えない人が存在するため、どうしても開館していなければならない。」確かに、学情は市大生のための図書館という側面がある一方で、学生以外の一般利用者のための図書館という側面も併せ持つ。学生側の都合だけに合わすことは難しいようだ。

ならばせめてフロアごとにメンテナンスを行い、一部を開放することはできないものか。それに関して言えば、今度は設備の面で壁にぶち当たる。「これだけ規模の大きい建物のため、フロアごとに開放するということは難しい。たとえば、エレベーターに関して言えば、業者を呼んでメンテナンスを行うことが義務付けられているため、その際にエレベーターを止めなければいけないし(注)、また階段だけの利用にしてもフロアごとに施錠する設備も備えていないため、もし利用者が点検しているフロアに入って本を取ったりすると蔵書の整理ができない。」と話す。

注) 業者の都合上、平日にしかメンテナンスが行えないので第4木曜日の休館日が最も適している。

オープン当初は画期的

休館日などで不便を感じる学生は多いものの、学情は他の図書館との比較でいえば、特別に開館状況が悪いというわけではない。他の図書館でも平日に蔵書整理のために休館することもあるし、開館時間もさほど変わらない。東京大学、京都大学等、一部の付属図書館では日曜・祝日も開館しているところもあるが、むしろそれらの方が珍しい。

学情の開館時間は現在、平日の9:00~22:00、土曜日の10:00~17:00となっている。今となっては当たり前に感じるこの開館時間。実は学情がオープンした当初は画期的だった。

「オープンした当初、夜の10時まで空いている図書館は他にはほとんどなかった。学情が開館時間を夜10時までにしたので、周りの図書館もそれに合わせてきたのではないか。」と、職員の方は語る。確かに、夜10時まで開館する図書館が一般的となったのは、学情が前例を作ったことに負う部分が大きいだろう。その他にも、グループ学習室や学会などの催しを開くことのできるイベントホールを備えている点も他と比べて強みと言える。

年中無休24時間の図書館

だが、学情もオープンして15年が経つ。当初は画期的だったシステムも、他から追いつかれている部分も増え、一歩抜きんでる図書館も出現している。

秋田市郊外にある公立国際教養大学の付属図書館は年中無休24時間開館していることで注目されている。公立の大学という共通のバックグラウンドを持ちながらも、学生の勉学環境のために24時間開館に踏み切った。このことから、本気度の違いを見せつけられる。また、京都大学に関して言えば、全面開館は難しいとしながらも図書館内の自習室に限って24時間開放している。

「学生にできるだけ勉強・研究の場を提供したい」という思いは、どこの大学でも共通のようだ。しかし、セキュリティ、設備、コスト面等でのハードルが高いゆえ実現は難しい。

また、利用状況による違いもこうしたサービスの違いを生むという。「下宿生の多い大学では図書館くらいしか学生の行き場がなく、できるだけ開館時間を長くしようという動きもあるが、市大に通う学生は自宅生が多いため、夜遅くまで利用する学生は数としては多くない。」と話した上で、「それぞれの大学に違った特徴があり、利用者のニーズに合わせたサービスの向上が重要。」と括った。

ハード、コスト面で残る課題

休館日の問題、開館時間のことに関して、いずれもハード面、コスト面での大きなハードルがあることが分かった。学情は他の大学の付属図書館と比べて規模が大きく、機能も充実している。だが、その規模の大きさゆえに機動性・柔軟性を欠いているようにも見受けられた。当然のことながら、図書館に割かれる予算は限られている。大学の財政は今後も削減傾向が続くものと考えられる。限られた予算の中で、どういったサービスに集中して取り組むか。利用者の声に傾けながら判断していく必要があるだろう。

学情難民を救えるか―。この問いに対しては開館時間の延長など、他にもいろいろなアプローチを考えていく必要があるだろう。学情を開館するのに多大なコストがかかるのなら、8号館の自習室を24時間利用可能にしてはどうか。また、利用者が多くの書物を必要とするのならば、貸出制限の上限を広げてみてもいいのではないだろうか。いずれにしても、学生の勉学環境を整えることは、人材育成という観点から、大学としては重要なことであり、今後とも真摯な取り組みが求められる。

From Editor

実際のところ、学生からの開館時間に関する要望は現段階で多いとまでは言えないようだ。夜の利用客もそこまで多くない。本気で休館日、開館時間についての要望を汲んでもらうには利用数を上げていく必要がある。それを抜きにしても、学情の運営には多くのお金がかかっている。せっかくの立派な施設を無駄にしないためにも、我々学生は、より積極的に学情を活用していかなければならない。

文責

徳永一雄 (Hijicho)


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