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寄稿連載 ◇ ワシントン大学留学記 (第5回) 〜アメリカの就活と日本の就活〜


今回はアメリカの就活と日本の就活の違いについて書いてみようと思います。

夏休みも終わり、3年生は就活をそろそろ意識しはじめているのではないでしょうか。私自身は2年生が終わったときに1年休学しているので就活はまだまだ先なのですが、留学に来てアメリカの学生の行う就活と日本の学生が行う就活がずいぶん違うように感じたので紹介したいと思います。

この記事は松井としきさん (商学部2010年入学) から寄稿していただきました。
彼は2012年4月から1年間ワシントン大学に留学しています。
全8回の連載を通して、海外留学についての魅力を伝えていただきます。

新卒一括採用

一番大きな違いは「新卒一括採用」にあると思います。新卒一括採用とは企業が卒業予定者の学生に対して毎年定期的に一括して採用を行い、卒業と同時に雇用を開始する採用慣行のことです。市大でも3年生は夏休みにインターンシップを経験したり、4年生ではすでに内定を獲得していたりする人も多いのではないでしょうか。また昨年度の卒業生の多くが卒業と同時に働き始めていますね。新卒一括採用は企業にとっては早期に優秀な学生を囲い込める、学生にとっては職歴、コネ無しに大企業に入るチャンスがある、といったメリットがあります。逆に多様な人材を採用することができない、学業の妨げになるというデメリットもあります。

実はこれ、日本独特の採用慣行で海外では一般的ではありません。僕が「日本では大学3年生のうちから就活をはじめ、卒業と同時に働き始める」と外国人の友人に話すとみなびっくりします。ワシントン大学では6月に卒業式があったのですが、卒業する友人に卒業後は何をするのかと尋ねたら、インターンシップ・ボランティア・就職活動・旅行などという答えが大半で卒業してすぐ正社員として働くケースは稀です。

履歴書

履歴書の扱いもアメリカと日本では大きく異なるように思います。決定的な違いはアメリカではフォーマットがないこと。日本の履歴書はフォーマットが決まっており、それを手書きで埋め企業の面接などの際に持参するのが一般的だと思います。しかしアメリカでは決まりきったフォーマットというものがなく、白紙の状態から作成します。しかも手書きのような非合理的なことはせず、データでやりとりするのが普通です。

驚くべきことは、大学1年生のうちから自分オリジナルの履歴書を作っている学生がたくさんいること。1年生のうちから履歴書に学業や課外活動の成果を記入していっています。これはキャリアに対する日本とアメリカの考え方が異なることが背景にあります。日本では伝統的に終身雇用制が導入されていたこともあり、1つの会社で働くことを前提としてキャリアを考える人が多いですが、アメリカでは終身雇用という概念はあまり定着しておらず、雇用の流動性がとても高い社会です。ですから自分のキャリアは会社に頼らず、自分で切り開くという考えが徹底しています。その考えが履歴書の扱いに出ているのかもしれませんね。

余談ですが、「リンクトイン」というSNSをご存知でしょうか。これはビジネスパーソン向けのSNSです。自分の履歴書を掲載して他のビジネスパーソンとの交流を図ったり就職先・転職先を探したりするサービスです。日本の学生でリンクトインのアカウントを持っている人は少ないと思うのですが、ワシントン大学に通う僕の友人のほぼ全員がアカウントを保有しており、これを通じてインターンシップを獲得した友人もいます。この辺りからも日本の学生とアメリカの学生のキャリアに対する意識の違いが伺いしれますね。

インターンシップ

日本とアメリカではインターンシップに関する姿勢が違います。日本でのインターンシップは1ヶ月未満のものが多く、会社の事業内容を知ることが主な目的なのではないでしょか。アメリカでは逆に長期のインターンシップが主流で会社の事業内容を知るというよりもインターンシップでの業務を通じて自分のスキルアップを図ることを目的に参加する人が多いです。またアメリカでは就職の際に社員とのコネが日本よりも重視されます。ですからインターンシップはコネ形成の絶好の機会であり、インターンシップで何とか成果を残して社員から評価を得ようとします。インターンシップが採用に直結する場合も多いと聞きます。

写真=シアトルのオフィス街 (筆者移す)

今後日本の就活はどうあるべきか

さて、日本とアメリカの就活を比較してみたのですがいかがでしたでしょうか。差異の根本には日米の「キャリアに対する姿勢」が大きく影響しています。一概に日本の就活スタイルのほうが優れている、アメリカのほうが優れている、というつもりはありません。両者に長所があり、短所があります。しかしながら日本の学生が就職難で自殺した、というようなニュースを聞くとなぜそこまで卒業後すぐ働くということにこだわるのだろうと疑問に感じます。もっとアメリカのように卒業後、インターン・ボランティア・旅行などを経験してから就職するスタイルが認められてもよいのではないでしょうか。

写真=休暇中に訪れたウォール街、NY (筆者移す)

文責

松井としきさん (商学部2010年入学)

筆者の関連サイト

ブログ「Go out of Japan and return to Japan」
(http://toshimichi1106.blogspot.com/)
Twitter「@toshiki_matsui」
(https://twitter.com/#!/toshiki_matsui)


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コメント

    • 市大卒
    • 2012年 10月 11日

    参考迄にアメリカの雑誌の記事と1980-2012のアメリカの人口、就業者数、失業率、の推移表を送付しました。人口は依然として増加をつずけて2050年には4億人になると予測されてます。余程の経済成長が無い限り、アメリカの新卒の就職難は変わらないと思われます。http://www.theatlantic.com/business/archive/2012/04/53-of-recent-college-grads-are-jobless-or-underemployed-how/256237/        http://ecodb.net/country/US/imf_persons.html

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