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教授が語る夢 文学部・福島祥行教授


教授が語る夢の第3回は、文学部のドイツ語フランス語圏言語文化コース・フランス語圏言語文化領域 (以下、仏文) の福島祥行教授にお話を伺ってきました。福島教授のプロフィールはこちら (大阪市立大学文学部ホームページより)

市大の様々な分野の教授にインタビューをし、個人的な夢や思想を聞くことで教授自身のことを深く追究していくコーナーです。

福島祥行教授
写真=福島祥行教授 (筆者写す)

日本とフランスの漫画

サブカルチャーが好きと伺っておりますが、いつ頃からなんですか?
サブカル的なものにはずっと関心が深いです。最初に関心を持ったきっかけは、中学生の頃にあった第1次宇宙戦艦ヤマトブームですね。その後は、高校生のときに堀江美都子という、後にアニソンの女王と呼ばれるようになった人のファンになって深夜ラジオを聞いていましたね。遊園地での彼女が出演するショーにも友達と行ったりしました。

現代フランス社会についても研究されているとお聞きしましたが?
研究というより”目配り”ですね。日本漫画のフランス語版を授業に取り入れたのも教育・研究と趣味を兼ねたわけです。もともと漫画が好きで、高校生の頃に少女漫画に夢中になりました。逆にメジャーなものや少年漫画はあまり読まないですね。メジャーなものよりもマイナーなものに引かれる傾向があるので。

そもそもは、フランス語の教師になった時点で、フランス語圏全般に関心を持つべきと考えたことが始まりです。その中でフランスで日本のアニメや漫画が受容されていると知って、実際にどういうものかと思ったら、たくさん翻訳されていたんです。漫画の仏訳版は、自分の趣味で買っていますが、『君に届け』とか『ハチミツとクローバー』などは実際に授業でも使っています。

始まりは漢字フェチから

言語学に興味を持ったきっかけは何ですか?
もともと言葉にこだわりがある子供だったんです。実家には旧字旧仮名で書かれた夏目漱石全集がありました。小学校高学年のころ、その中の 「吾輩は猫である」 に夢中になり、分からないまま無理矢理読んでいるうちに慣れてきて、その結果、いつの間にか、旧仮名・正字体を使うような子供になっていました。それと僕は漢字フェチだったんです。文章を書くときにどういう漢字を使うかということに、非常に強いこだわりを持っていました。

そのうち語源に関心が移って、日本語学の勉強をしたいと思うようになりました。その結果、当時、塚原鉄雄先生と井手至先生という有名な国語学者のいらした市大を受験しました。そして、もともとは国語国文学コース (以下、国文) 志望だったんですが、コース希望届を出す当日の朝になって仏文に変えたんです。ウケ狙いも半分ありましたが、自分には仏文の方があっているかもしれないと考えて迷ってもいたので。それで人生が変わりました。国文に行っていたら今の僕はないわけですから。人生は小さな選択の積み重ねですよね。

仏文には後に師匠となる森本英夫先生がいらして、フランス語をベースとする言語学を教育・研究されていました。じつは、卒論を書く時期になって、テーマを言語学かそれ以外にするのかで迷っていたんですけど、たまたま森本先生に会ったときに 「冠詞!」 って言われて、冠詞にしました。大学院に進んで、修士論文は冠詞に叙法と時称を加え、その手の研究を10年ほどやってましたが、その後、言語の研究には、話し手と聞き手がどうふるまうかを研究することが不可欠だと考えるようになり、現在は、実際の会話データを分析しながら、コミュニケーションそのものについて考察しています。

「劇場論」とは何ですか?
もともと民俗学や民話研究にも関心があったんですが、民話の中で人間が別の世界に行ってしまって、そこで不思議なものに出会うという話が多くあるんです。そこは他界とか異界とか呼ばれるものなんですけど、その事を個人的関心で考えていた時期があって、それがベースになっています。人が辿り着けて帰ってこれる所がもし 「あの世」 だとすると、帰ってこれないはずだというのが最初の着想で、帰ってこれるということは、この世の延長に違いないと考えました。つまり、あの世とこの世が重なり合っているのだと。この、あの世的非日常の世界とこの世的日常の世界が重なるゾーンを僕は「境界」と呼んでいます。

ところで、僕は芝居をしてまして、劇団もやってるんですが、年に1度野外テント劇をやりつづけてまして、今年で21年目になりました。そういう現場の目線からすると、テントの現場は非日常の空間と日常的な空間が重なり合った場所だという事に気付いたんです。お芝居を見に来る人は、あたかもサーカスや縁日のようなお祭り的な雰囲気、つまり非日常感を求めて来場するようなんですが、テントを運営している側からすると、公演時間外は、限りなく日常空間です。つまり、テントは 「境界」 であり、そもそも演劇的空間は 「境界」 であるというわけです。こういう空間をめぐるあれこれを、コミュニケーションの研究と結びつけ、 「劇場論」 と呼んでいます。これについては、いま論文を書いているところです。

支援機構の経験から

 大阪市立大学文学部・文学研究科教育促進支援機構(以下、支援機構)は文学部50周年記念事業の一環として2003年に発足しました。
学生の学びを支援するために、教職員のサポートを得ながらも学生自らが事業を運営する組織で、文学部のオープンキャンパスでは企画運営の中心でした。福島先生は支援機構の事務局長という立場で活動に深く関わっています。そのことについてもお話を伺いました。

支援機構の活動に携わって気付かれた事はありますか?
まず、上回生と下回生のコラボレーションが大切だという事ですね。上回生が下回生をサポートする体制を正規の授業で組めないかということで、文学部の初年時教育を考える際に1回生対象の 「文学部基礎演習」(以下、基礎演習) という教科とともに3回生対象の「文学部実践演習」 (以下、実践演習) という教科も作りました。 「基礎演習」 は1回生が論文の書き方などを学ぶ授業です。 「実践演習」 を受けている生徒が 「基礎演習」 を受けている生徒に教えにいくので、彼らも教える立場から学ぶ事ができます。

それから学生はポテンシャルがあるという事ですね。もちろん助言をすることもありますが、それなりに場を与えて任せれば、すばらしいことをやってくれることがわかりました。

市大生にメッセージをお願いします。
学生さんは可能性を持っているので、学生時代に色々チャレンジしてもらえたらと思います。何をすればいいかというのは簡単に決められないかもしれませんが、ダラダラ過ごすのだけはやめた方がいいでしょう。結構時間があるように思えるかもしれませんが、4年間は本当にあっという間ですから。

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文責

中野美希 (Hijicho)


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