大阪市立大学法学部棟の会議室。そこでは70名を超える学生が法律問題について議論していた。ここは「無料法律相談所」 (以下、法相) 。学生ながらにして、市民からの法律相談を無料で受け付けており、60年ほど前から行われている。しかし実際にどのような活動を行っているのか。法相の第61代幹事の近藤真吾さん (法・2) にお話を伺った。
学生による法律相談
—法相の活動内容はどのようなものですか?
近藤:メインの活動としては、市民向けの法律相談を水曜日の3限から法学部棟の6階で行っています。相談の中心は主に民事関係ですね。詳しくはお話しできませんが、借金問題、相続問題、家族関係、土地問題などです。相談は少なくとも週に1、2件はあり、多いときは10件以上ありますね。相談に来られる方の年齢層は幅広く、若い人からお年寄りまでいらっしゃいます。以前、高校生が相談に来たこともありました。
春と秋には巡回法律相談というものを行っています。大津や彦根に行き、教授や弁護士さんの活動をお手伝いさせていただいています。
それ以外には、週に1回空きコマを使って「基礎ゼミ」と呼ばれる勉強会をしています。下級生に向けて小テストなども行っています。
—相談はどのように行われるのですか?
近藤:基本的には8〜9人のグループ単位で学生が相談を受けて答えます。相談者さんには相談内容を紙に書いてもらいます。それを見ながら、検討部屋でグループみんなで話し合います。ただ、専門的だったり複雑な事案に関しては、教授に質問したりアドバイスをもらったりしています。また、あまり多くの人に知られたくないと相談者さんが考えるような案件は半分の人数で対処することもあります。かかる時間はまちまちですが、遅くともその日の夜9時には回答を出します。ただ、相談者さんにとっては長い時間は負担になるので、時間を区切ったり、班長が進行役を務めたりするなど、できるだけ短くしようと工夫をしています。
—そもそもなぜ法相に入ろうと?
近藤:もともと弁護士になりたくて法学部に入ったんです。弁護士を目指そうとしたのは、高校の先輩で弁護士になられた方がいらっしゃるんですけど、その方に「一生できる仕事で自分の力で問題を解決できる仕事だ」と言われたんです。その時に、もともと持っていた「人の役に立ちたい」という気持ちと「一生できる仕事」というのがリンクしたのがきっかけですね。また、市大の法相には、大学のパンフレットで興味を持ちました。法学部の入学時ガイダンスで法相の説明会があり、そのときの「相談者からすれば一生に関わる真剣な問題。学生は数ある案件の1つという意識ではいけない。親身になって聞こうとする意識を共有しよう」という内容が印象に残っています。
あと、今までと違うことをしてみたかったんです。小中高と野球をやってきたんですが、大学では別のことをしてみたり、あとは遊んでみたりもしたかったんです。先輩から「遊びをうまくできる人は時間の使い方もうまい。そういう人は人生の生き方もうまい」と言われたことがあるんです。なので、その瞬間を楽しめるかというのもセンスだと思いますし、それも社会経験かなと思います。
気軽に相談できる敷居の低さ
—法相の魅力とは?
近藤:あくまでも僕の個人的な考えですが、先輩や同回生や後輩たちとの「つながり」が魅力だと思います。法曹界だけでなく目指す方向は人によって様々ですが、みんなそれぞれ、しっかりした意識やいろんな考えをもっています。そういう多様性の中にいられるのはすごく刺激になりますね。
法律問題は勉強しているかどうかは大きいですし、とっつきにくいものだと思います。少しでも困ったことがあれば気軽に相談していただければと思います。「敷居の低さ」というのも学生相談の魅力だと思います。弁護士さんなどに頼むのは少し敷居が高く感じると思うんですよね。そうじゃなくて、市大という地域にある公立大学に、そういう相談ができるところがあるということを知っていただいて、「ここがわからへん」とか「これどうしたらいいんや」など、どんな些細な疑問でも気軽に相談していただければと思います。
「法律問題」と聞くと、どこから手を付けていいのかわからないということが往々にしてある。「こんな些細なことを相談していいのだろうか」と気後れしてしまうかもしれない。しかし近藤さんも話す通り、学生相談の魅力は「敷居の低さ」にある。時には教授がアドバイスをするので信頼性は高く、何より無料である。弁護士などに相談する前に、一度ここを訪れてみてはいかがだろうか。
大阪市立大学 無料法律相談所
要領
日時:毎週水曜日16:00〜 (受付は15:00〜17:00)
場所:大阪市立大学 法学部棟6階
費用:無料相談の流れ
(1) 受付…名前、住所、電話番号の記入 (任意)
(2) 待合…途中で退室すると順番が変わる場合があります。
(3) 相談…複数人の学生が話を聞く。希望すれば人数調整可能。原則、即時回答は不可。
(4) 待合…相談内容をもとに学生が別室で検討。教員を交えて再検討を行う場合があるので、回答までに時間がかかるときもあります。
(5) 回答…慎重な検討の上、回答。回答後、アンケート記入 (任意)注意事項
刑事事件、行政事件 (役所の関わる事案) 、裁判・調停中の事件、税金問題 (相続税等) の相談は受け付けていません。
関連リンク先
大阪市立大学 無料法律相談所
http://www.law.osaka-cu.ac.jp/lawcenter/home.html文責
近藤龍志 (Hijicho)
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