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院生プロボクサー・坂本真宏「ベルトを獲る」


 坂本真宏選手(工学研究科・1年)は2016年11月、WBOアジアパシフィックフライ級王座決定12回戦を行った。惜しくも判定負けしたが、次のタイトル戦に向け意欲は十分だ。タイトル戦やボクシングとの出会い、大学院卒業後の人生について語った。

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WBOアジアパシフィックフライ級王座決定戦に出場した坂本選手(右)

=住吉スポーツセンターで2016年11月23日、本学広報室提供

12ラウンドを戦えたことが自信に

 ——11月23日の試合を振り返っていただけますか。

 結果として負けてしまって、今までで一番たくさんの方に応援していただいていたので悔しくて、情けないです。試合から1週間経って考えると、12ラウンドを戦えたことが収穫だったと思います。相手の選手は気持ちがめちゃくちゃ強かったです。試合中にボディを叩くと「ウッ」という声も聞こえてきて、「(パンチが)効いてるな」と思っていました。ですが最後の方に(相手が)また盛り返してきて、手加減も落ちませんでした。最終的に(自分が)パンチを足に効かされて、良い場面をつくられてしまいました。そのあたりが相手選手は強かったと感じるところです。

 ——何か戦略を練られていたのですか。

 僕はもともとスタミナがない方で、今までの8ラウンドでも精いっぱいでした。トレーナーからは「お前は12ラウンド足使っても持たないから、ごつごつ当てて倒せ」と言われていました。相手がファイターだということはわかっていたので、途中のラウンドで倒す作戦でいきましたが、まさか12ラウンド戦うことになるとは思っていませんでした。

 ——12ラウンドを戦い終えた後はどうでしたか。

 冷静に試合を振り返ることはできなくて、応援していただいた方への申し訳ない気持ちでいっぱいで、直後は何も考えられませんでした。しばらくして試合の映像を見ると、常に自分は見栄えが悪かったですね。自分の課題としてスタミナと見栄えの悪さがあって、ブロックしていても叩かれながら下がってしまう、受けに回ってしまうことが多かったです。パンチのクリーンヒット数は変わらないのですが、ラウンドを相手に取られてしまいました。

友達の誘いでボクシングと出会う

 ——ボクシングを始めたきっかけは何ですか。

 ボクシングは大学からですが、高校時代にも格闘技をやっていました。中学時代からの友達が「ボクシングジム行こうや」という感じで誘ってくれて、僕もボクシングに興味があったので「やりたい」となって、2人でボクシングジムを探しました。けれど近所にボクシングジムがなく、キックボクシングジムが近い所にあったので、高校2年生の時にキックボクシングを友達と一緒に始めました。友達と3人で行きました。遊び感覚でやっていたので技術として身に付くものはなかったのですが、大学に入ってボクシングを始めるきっかけにはなりました。格闘技に対する距離感が近くなりました。

 大学に入って、もともとボクシングをやりたかったので、ボクシング部があるから入ろうという感じです。

 ——格闘技に興味を持ち始めたのはいつからですか。

 格闘技に興味を持ったのは、中学生の頃です。中学生の頃にボクシングがテレビで放送されているのを見て、かっこいいなと思いました。

ボクシングは非日常の体験

 ——坂本選手が考えるボクシングの魅力を教えてください。

 ふだん体験することができないような非日常感が魅力です。人と殴り合うこと自体、日常生活の中ではそうないじゃないですか。そういう体験を通して得られる非日常的な刺激がボクシングの魅力だと思います。実際にやっていて感じるのは、ボクシングにハマるのは理屈云々ではなくて、やっている間に脳内麻薬のようなものが出ていると思います。そのせいかはわかりませんが、ハマる人はとことんハマります。言葉では言い表せないものがあります。僕の表現力のなさもありますが(笑)。

 ——プレッシャーを感じることはありますか。

 プレッシャーはめちゃくちゃあります。応援する人が増えると、試合に負けたときのことを考えると試合前でもぞっとしますし、不安で仕方がないです。そんな中で試合に勝った時の喜び、達成感はすごいものがあるので、プレッシャーを感じるからプロが嫌とかではなくて、プレッシャーも力に変えられる選手になりたいなと思います。自分自身、いまプレッシャーが力になっているなと感じていますし、練習にもより身が入ります。プレッシャーですけどありがたいです。

 ——プレッシャーへの対処法はありますか。

 やることやる、これだけ練習したのだからいけると考えることが対処法です。

「ストレートで終われるボクサーになりたい」

 ——得意技や得意な形はありますか。

 フック系のパンチが得意で、ストレートは弱いです。ストレートがあまり強くないので、そこがこれからの課題です。フック系だとテレフォンパンチ(動作が大きく、かわされやすいパンチ)になりやすい。ストレートで終われるようなボクシングをやりたいですね。

 ——尊敬している選手はいますか。

 最初にボクシングを始めた頃はローマン・ゴンサレス選手に憧れていました。階級は(自分より)一つ上です。軽い階級ですが、KO率がめっちゃ高くて、倒せるボクサーには魅力を感じますね。自分もそうなりたいと思います。

「応援してくれる人のためにも勝ちたい」

 ——プロになって変わったことは何かありますか。

 プロとして活動していく中で応援してくれる人もだんだん増えてきました。ボクシングは個人競技なのですが、勝ったらみんな喜んでくれるし、負ければみんな一緒になって悔しがってくれる人がいるので、自分一人だけのためだけではないなと感じるようになりました。応援してくれる人のためにも勝ちたい、負けられないと考えるようになりました。

 ——どういう経緯でプロへの転向を決めましたか。

 アマチュアでやっているときにプロの選手と交流する機会も増えてきて、プロの選手と仲良くなってその人の応援に行った時にプロのリングがかっこいいなと感じたのと、学部時代アマチュアボクシングをやって、学部を卒業してしまうとリーグ戦に出ることができなくなるのでプロに行こうかなと思いました。

 ——プロへの転向は迷いなく決めたのですか。

 迷いはありました。いろんな人に1~2か月相談して、反対もされました。僕自身プロに行きたいという気持ちが強かったので、その気持ちが伝わって反対していた人も「(プロに)行ってやってみたらいいんちゃう」と言ってくれました。それでプロに行くことに決めました。

学部時代の失敗を糧に

 ——学業とボクシングの両立はできていますか。

 学部時代はアマチュアボクシングに比重を置きすぎて(大学院入試に)失敗してしまったので、大学院で両立するぞと意気込んで今やっています。ですが、まだ大学院1回生なので、そこまで胸を張って両立できているとは言えないです。研究もまだ途中なので、これから学会発表などをやらせてもらうと自信がつくと思います。まだまだこれからです。

「ものづくりで社会に貢献したい」

 ——研究の目標は何かありますか。

 機械工学科に入ったのは、ものづくりで社会に何か貢献したいという思いがあったからで、その思いは今でもあります。ボクシングというスポーツは60歳くらいまで続けられるスポーツでもないので、ものづくりで社会に貢献できるような仕事ができればと思っています。

 大学院を卒業してからの仕事はまだわからないです。大学院でボクシングをやりきって、そこからものづくり一本で行くのかも今の自分ではわからないですけど、研究とボクシングを本気でやって両立できると思うのであれば両方やればいいと思っています。将来を決めるためにも今頑張らないといけないと思います。

 ——ものづくりに興味を持ちだしたのはいつからですか。

 ものの仕組みには昔から興味があって、プレゼントでもらったラジコンを分解して使えなくするような子供だったので、その頃からそういうことに興味があったのかもしれません。

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2017年の目標に「ベルトを獲る」を掲げる坂本選手=2016年12月1日、丹下舜平撮影

「次はベルトを巻く」

 ——最終的に目指すところを教えてください。

 今回ベルトが目の前にきて、今まではチャンピオンになるとかベルトを獲るとかあまり想像できない話だったのですが、今回タイトルマッチをやることで自分にもその可能性が十分あるのだなと感じました。なので、まずはベルトを獲りたいなという気持ちが大きくなってきました。次の目標としてベルトを獲りたいです。最終はわからないですね。

 プロに転向する際、大学院を卒業するまでに自分がどの立ち位置までいけるのかを進路決定の判断材料にしようと考えていました。(卒業時に)いい位置にいるのであればボクシングを続けて、負けていて意地で続けていくような状況ならやめようと思っています。今、タイトルマッチもできるようなところに来ているので、とりあえず次の目標はベルトを巻くことです。

「やる前からできないとは思わないで」

 ——読者の方に一言お願いします。

 僕も学生なので偉そうなことは言えた立場ではないのですが、やる前からできないとは思わずにやることが大事じゃないかと感じています。プロデビューしたときに、「(研究とボクシングの)両方とも駄目になるからやめとけ」とも言われました。まだ道半ばで、「両方ともできたぞ。どや」という感じではないですが、読者の皆さんにもあきらめてほしくはないです。

坂本真宏(さかもと まさひろ)

堺市出身

プロボクサー(フライ級)通算8勝(4KO)1敗

2015年全日本フライ級新人王

工学研究科修士課程機械物理系専攻1年

材料物性工学研究室で酸化チタンの研究を行っている。

文責

丹下舜平(Hijicho)


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