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マイナンバーって何やねん? ~「知らない」で済まない新制度を解説~


 皆さんはマイナンバー制度をご存じだろうか。今年の10月から住民票を持つ全ての国民にマイナンバー (個人番号) が通知されることになっており、現在テレビCM等で盛んに告知が行われている。しかし、その存在は聞いたことがあっても、中身を完璧に理解しているという人は少ないだろう。実はこの新制度、私たちの生活に密接に関係してくるものであり、いざという時に「知らなかった」では済まされないかもしれないのだ。今回はそんな「マイナンバー制度」について解説する。

・マイナンバー(個人番号)制度とは?

 2013年5月に国会で成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」によって導入が決まった新制度である。住民票を持つ全ての国民に1人1つマイナンバーを割り当て、複数の行政機関にある個人情報をそのマイナンバーで結びつけることで、その個人情報が同じ人のものであることを確認するためのものだ。  また来年1月以降には、行政手続き等で利用できる個人番号カードが申請により交付される。今年10月以降に通知カードでマイナンバーが通知された後に市区町村に申請すると、来年1月以降、個人番号カードの交付を受けることができる。この個人番号カードには、表に氏名、住所、生年月日、性別、本人の写真、裏にマイナンバーと氏名が記載される。そのため本人確認のための身分証明書として利用できるほか、カードの電子証明書を用いて、e-Tax (国税電子申告・納税システム) をはじめとした各種電子の図書館利用証や印鑑登録証など各自治体が条例で定めるサービスにも使用できる。さらに総務大臣が認めた民間事業者が、電子商取引等を行う申請が行える。また、自分の住んでいる自治体際の本人確認にも使用できるよう検討されている。なお個人番号カードには、書かれている情報のほか、電子申請のための電子証明書は記録されるが、所得や病歴などの個人情報は記録されない。そのため、個人番号カード1枚から全ての個人情報が分かってしまうことはない。  マイナンバーは個人のためだけでなく、法人にも通知される。今年10月から、株式会社や有限会社といった設立の登記をした法人などに13桁の法人番号が通知される。法人番号はマイナンバーと違い、誰でも自由に使用することができる。なお、法人番号は1法人につき1つであり、支店や事業所ごとには通知されない。  注意しなければならないのは、各行政機関が持っている個人情報を、特定の機関に集約して一元管理するのではないことだ。これまで通り個人情報は各行政機関が保有し、他の機関の個人情報が必要となった時にはマイナンバーを使って本人確認を行い、提供を受けることができるという、分散管理方式を採用している。

・私たちの生活にはどんな影響が?

 来年1月から、社会保障、税、災害対策の行政手続きにマイナンバーが必要になる。マイナンバーは社会保障、税、災害対策の中でも、法律や自治体の条例で定められた行政手続でしか使用することはできない。例えば年金や雇用保険、生活保護の給付手続き、ハローワークの事務手続き、税務署等に提出する書類への記載、災害被災者の生活再建支援金の給付手続き等の時にのみ使用できる。また、税や社会保険の手続きにおいては、事業主や証券会社、保険会社などが個人に代わって手続きを行うことがあるため、勤務先や金融機関にもマイナンバーの提出を求められる場合がある。  さらに、民間企業が従業員の健康保険や厚生年金の加入手続を行ったり、従業員の給料から源泉徴収して税金や保険料等を納めたりする場合や、金融機関が配当金・保険金等の税務処理を行う場合にも、来年1月以降(厚生年金、健康保険は2017年1月以降) は、これらの手続を行うためにマイナンバーが必要となる。そのため、企業や団体で働く人や金融機関と取引がある人は、勤務先や金融機関に本人や家族のマイナンバーを提示する必要がある。 マイナンバーは社会保障、税、災害対策の手続きのために、国や地方公共団体、勤務先、金融機関、年金・医療保険者などに提供するものであり、法律で定められた目的以外にむやみに他人にマイナンバーを提供することはできない。もし他人のマイナンバーを不正に入手したり、他人のマイナンバーを管理する人がマイナンバーや個人情報ファイルを他人に不当に渡したりすると、処罰の対象になるので注意が必要だ。

・マイナンバー制度のメリット

 マイナンバー制度導入により期待されるメリットとして、大きく3つが挙げられる。 1:公平・公正な社会の実現  所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、税金や社会保険料等の負担を不当に免れることや、年金、生活保護等の給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている国民にきめ細かな支援を行えるようになる。 2:国民の利便性の向上  添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減される。また、行政機関が持っている自分の情報を確認することもできるようになる。 3:行政の効率化  行政機関や地方公共団体などで、手続きに要している時間や労力が大幅に削減される。また複数の業務の間での連携も進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになる。

・マイナンバー制度の問題点

 マイナンバー制度にはメリットばかりでなく、問題点ももちろん存在する。 1:個人情報保護の問題  マイナンバー制度導入で最も心配されているのは、マイナンバーの流出により、他の個人情報も漏れてしまうことである。マイナンバーは前述のとおり、様々な個人情報を一つの番号で結びつけることになるので、それを使ってさまざまな個人情報を手に入れることが可能であり、マイナンバーが流出することで、その人の所得や病歴が他人に知られてしまうかもしれない。 2:マイナンバーを悪用した新しい犯罪の問題  マイナンバー制度はこれまでにない新制度であり、まだ国民の間に十分に周知が行き届いているとは言い難い。そこを突いて、マイナンバー制度を十分に理解できていない国民を標的とした犯罪が発生する可能性がある。 3:導入や維持費用の問題  マイナンバー制度導入に備え、各行政機関でシステムの改修などが進められており、それにかかる費用分の効果が実際に出るかどうかは、現段階では未知数である。また今後、従業員のマイナンバーを管理していくことになる各企業や法人も、マイナンバー制度導入の対策に追われており、負担となっている。

・問題点に対する関係機関の対策

 制度面での個人情報の保護措置として、法律に規定があるものを除いて、マイナンバーを含む個人情報を収集したり、保管したりすることを禁止する。また、特定個人情報保護委員会という第三者機関を設置し、行政機関のマイナンバーの管理が適切かどうか監視・監督を行う。さらに従来よりも罰則を重くすることで、マイナンバーの不正利用を未然に防ぐ効果も狙う。  2017年1月からは、情報提供等記録開示システム (マイ・ポータル) という、行政機関が持っている個人情報や、マイナンバーを含む自分の個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したのか確認できたり、行政機関などから一人一人に合った行政サービス等のお知らせが来たりするシステムが稼働する予定だ。これを国民に活用してもらうことで、いち早く個人情報の漏洩を見つけ対策を講じられるようにする、行政機関がどんな個人情報を持っているのか確認できるようにすることで、行政機関の透明性を高める、等の効果を狙っているようだ。

・私たちは何をすれば良いのか

 まずはどこにマイナンバーが通知されてくるのかを知っておくことが大切だ。特に下宿生の場合、住民票は実家のある自治体に置いている人が多いだろうから、夏休み等で帰省した際に確認しておくと良い。そして、これは自宅生にも下宿生にも共通することだが、家族とマイナンバーの扱いについて話しておくとなお良いだろう。例えば、マイナンバーは家族の代表者が管理するか、自分でも持つようにするかを話し合うだけでも良い。マイナンバーを伝える必要のある場合や、使うことで便利となる手続き等について知識を共有しあうことで、家族がトラブルに巻き込まれる可能性を減らすことができるかもしれないので、より効果的だろう。  また、マイナンバーが通知されたら、みだりに他人に教えるようなことはしないようにする。特に不特定多数の目に触れることになるSNS等に書き込むようなことは、絶対にしてはいけない。マイナンバーを提供しなければならない行政機関や手続きは、前述したように法律で決まっているので、それらを知っておき必要な時にだけマイナンバーを提供するようにしたい。  そして、個人番号カードの発行申請を検討してみるのも良いだろう。同カードがあれば、行政手続等が簡略化されるだけでなく、本人確認のための身分証明書としても使用できる他、電子商取引等での本人確認に使用可能になるよう検討されているという。持っておいて損は無いと言えるだろう。  最後に、マイナンバー制度はまだこれから始まる制度であり、今後の制度の運用具合によっては新しい使い方が追加されたり、変更が行われるかもしれない。それらの情報を積極的に取り入れ、変化に対応できるようにしたい。また、情報提供等記録開示システム (マイ・ポータル) が始まったら、それを使って自分の個人情報が適切に管理されているか、ということに注意をはらっておくことが大切である。  マイナンバー制度は、少子高齢化が進む日本において、より効率的に税金を集め、本当に必要な社会福祉を維持していくために必要な社会インフラとなりうる、画期的な新制度である。しかし前述したように、個人情報保護の面などで様々なデメリットを抱えているのも事実だ。今のところマイナンバー制度は予定通り開始されることになっているが、今後の展開次第で変更がなされる可能性もある。いずれにせよ私達がしなければいけないのは、その制度についての理解を深め、正しく利用できるようにしていくことだ。本記事が市大生にとって、上手くマイナンバーを使いこなすための一助となれば幸いである。

参考ページ

「マイナちゃんのマイナンバー解説」http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/gaiyou.html 「マイナンバー制度について 総務省」http://www.soumu.go.jp/main_content/000314021.pdf

文責

北村健太 (Hijicho)


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