セクシュアルマイノリティとは、現在の社会の中で普通だと考えられている性のあり方に当てはまらない人々を指す言葉だ。代表的なカテゴリにLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)があげられる。聞いたことはあるが言葉の意味はよく知らない、という人が多いのではないだろうか。
セクシュアルマイノリティの交流の場として活動している大阪市立大学LGBTサークルSPICAのメンバーに座談会の形式でお話を伺った。これを機にセクシュアルマイノリティや自分の性について考えてみてほしい。
座談会メンバー
あーちゃんさん(2年) レズビアン
彩華さん(3年) トランスジェンダー
よしひげさん(3年) ゲイ
ナホコさん(院3年) レズビアン
——カミングアウトはされていますか。
ナホコ 私はカミングアウトしまくってる(笑)。だから家族も友人もバイト先の人もみんな私がレズビアンだって知ってるの。
あーちゃん 私は特に明かしてないな……。
よしひげ 僕はこの人なら理解してくれそう、と思った人には言います。特に隠すつもりもないけれど、誰に対しても言えることではないから。
彩華 「ゲイです」って言うと、自分が襲われるって勘違いする男性、多くない?
よしひげ いるいる(笑)!
彩華 自意識過剰だよね(笑)。
ナホコ カミングアウトすることで、恋愛の仕方や生き方に悩んでいる人、特に若い人たちに自分の在り方を示すことができる。そういうふうに他の人のモデルになるっていう意味でもカミングアウトは大切だと思う。もちろん隠したい人の気持ちもわかるけどね。
——カミングアウト後の周囲の反応はどのようですか。
彩華 私の周りの友人たちは、私がトランスジェンダーだと知っても普通に接してくれるからとてもありがたいです。
ナホコ 割とみんな受け入れてくれるのが嬉しいよね。私は女性と結婚しているんだけど、「うちの奥さんが……」って話すと初めはみんなびっくりした顔をするの。その反応を見るのもそれはそれで楽しいかな(笑)。
よしひげ たとえ「ゲイだ、気持ち悪い」というふうに悪く思われたとしても、それは仕方ないと思うんだよね。この人嫌いだなとか、かわいくないなとか思ってしまうのと同じことで、個人が抱く気持ちは自由だから。それを口に出すのは良くないけれど。
ナホコ そうだよね。自分の勝手な思いを正当化して行動に移すのが駄目なんだよね。
よしひげ その点、面と向かって悪口を言われたり差別されたりしたことはないからありがたいな。
——市大の制度面で困っていることはありますか。
彩華 学校側としても制度を改めようと努力してくれてはいますが、まだ不便なところもあります。女性として改めた新しい名前を授業で使おうとすると、教授一人一人に説明し個人的に承諾を得なくてはいけなくて。学生証の名前変更も戸籍を変更してやっと認められました。
ナホコ 私はカナダで挙式をしたのですが日本の法律上では結婚を認められていません。例えば私か妻のどちらかが病院に運ばれたとき、家族でないと救急車に同乗できないし、手術や治療法の決定などに立ち会うこともできません。家族関係になっていないと困ることってたくさんあるんです。せめて大学側にだけでも家族として認めてもらえたら、緊急連絡先に妻の名前を書くことができて便利なのに、と思っています。
——セクシュアルマイノリティへの正しい理解はあまり進んでいないのではないかと思うのですが。
ナホコ 男性と女性が愛し合う、っていう異性愛を中心とした考えがどうしても根強いんだよね。
彩華 そう。だから「今は女性として生きてるけど、男性として生まれたんだから女性が好きなんでしょ?」っていうふうに、トランスジェンダーと同性愛者が結びつけて考えられがち。
よしひげ ゲイって聞くとすぐ“オカマ”だと思い込む人もいるよね。心が女性だから男性を好きになるんだろうって自分たちの常識の中で理解しようと異性愛にあてはめて解釈してしまう。
彩華 自分で自分の性別を何だと思っているか、自分がどの性別を好きになるか。この二つは全く別物。でも大体の人はこれらがもともと一致しているから一緒にして考えてしまうんだろうね。
よしひげ 性と恋愛、別物として見てみるといろんな考え方ができるようになる。言われてみないと気づかないかもしれないけれど大切なことだよね。
ナホコ うん。一度切り離して考えてみてほしいな。
——これからセクシュアルマイノリティをどのように受け入れてもらいたいですか。
彩華 マイノリティ、なんていうけどゲイもレズビアンも結構たくさんいるんだよね。みんなわざわざ口に出さないだけで。
よしひげ そうそう。カミングアウトしたときに「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」ってよく言われるけど、仲良くなったらカミングアウトして当然、って思われるのは不本意かな。
ナホコ だって私、あなたが異性愛者なんて聞いてないよ?って感じだよね。
一同 そう!(笑)
彩華 私たちだけ言わなくちゃいけないなんてフェアじゃないよね。
ナホコ 同性愛者か異性愛者か、そんなものはただの個性だと思うの。私たちだってみんなと同じように普通に生活している普通の人間なんだから。恋愛対象や性だけを取り上げるんじゃなくて、一人の人間としてまるごと理解してもらえたらそんな嬉しいことはないな。
彩華 セクシュアルマイノリティ、なんて分類も私たちの存在が当たり前のものとして受け入れられたら必要ないですもんね。
ナホコ 将来、「昔セクシュアルマイノリティなんて言葉があったんだって」なんて言われるようになったらいいな!
SPICA代表 あーちゃんからメッセージ
この記事をお読みの、セクシュアルマイノリティのことなんて考えたこともなかったよ、という皆さんへ。「性別や恋愛には、いろんな可能性がある」ということを、普段から意識の片隅に置いてもらえたらなあ、と思います。セクシュアリティやジェンダーなんて自分には関係ない! と思っている人も、実は固定観念に縛られているかも。不用意なからかいで意外と身近な人を傷つけてしまっていたり、自分の生き方を狭めたりしてしまっているかもしれません。この記事をきっかけに、性や恋愛に関する見方を、少し広げてみませんか?
セクシュアルマイノリティを自認していたり、そうかも? と思ったりしている大阪市立大学の皆さんへ。話し相手・遊び相手が欲しくなったら、お気軽にSPICAへご連絡ください! いつでも大歓迎です!
用語解説
カミングアウト 今まで公開していなかった自らの出生や病状などについて話をすること。ここでは性的指向に関する表明を指す。
レズビアン 恋愛対象が女性である女性のこと。
ゲイ 恋愛対象が男性である男性のこと。
バイセクシャル 恋愛対象が男性女性両方である人のこと。
トランスジェンダー 自認する性と生物学上の性が一致しない人のこと。
文責
行田美希(Hijicho)
参考文献
セクシュアル・マイノリティ/LGBT基礎知識編
http://synodos.jp/faq/346 (2016年12月19日閲覧)
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