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質問攻め、大量レポートにたじたじ 電物ポスター発表会


 工学部電子・物理工学科3年生の科目「電子・物理工学実験Ⅱ」の成果を披露するポスター発表会が2016年12月22日、学術情報総合センターで開かれた。低学年や文系の学生にとっては恐ろしい噂を耳にするのが理系の専門科目かもしれない。噂の本丸である実験科目の実態を取材して、厳しく恐ろしい部分とともに、学生の真剣さや理系の醍醐味に迫った。

 同科目では四つの実験テーマ「電気工学2」「計測技術」「応用光学」「半導体測定」の実験を4人の班で、3週間にわたって行う。その結果を縦163cm、横113cmのポスターボードにまとめて展示し、ボードの前に集まった学科の教員や2年生、4年生、大学院生からの質疑に3年生が答えるというものだ。教員からの質問には汗を流しながら慎重に答える姿も見られたが、中には教員からの「測定したのは表面温度なの? 中心温度なの?」と理解度を測る厳しい質問に対して苦しむメンバーの空気を読み、チーム内でバトンを渡し合って何とか答えようとする姿もあった。

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ポスターの前で教員の質疑に答える学生ら=学術情報総合センターで2016年12月22日、竹内勇気撮影

「発表の場に慣れてほしい」

 「計測技術」の実験内容の設計や指導を担当した福田常男准教授(工学研究科)によると、「小中学校ではあった発表の機会を経験せずに高校時代を過ごした学生が、卒業研究をする前に人前での発表の訓練をする場を設けたい」との思いで行われている。「普段のレポートとは違う大画面を効果的に使った図表・文章のレイアウトや色遣いなど、見やすさを心がけることの難しさを実感してほしかった」という。しかし、いくつもの理論式や大量のグラフの解析結果をまとめることに精いっぱいで、きれいなポスターも見られる反面A4用紙を並べたものや、白黒のポスターも目立った。

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福田常男准教授=学術情報総合センターで2016年12月22日、竹内勇気撮影

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「計測技術」のポスター=学術情報総合センターで2016年12月22日、竹内勇気撮影

大量レポートにも負けず

 しかしそれも学生の声を聞くとうなずけるかもしれない。青石宗一郎さん(工・3年)によると、「毎回の実験レポートは1週間の締め切りで最大で20~25枚」にも及ぶ。テーマによってまちまちだが、中には午後8時になっても帰ることができないほど実験をやり遂げるのに精いっぱいのことも。実験というとワクワクしながら試験管を振る科学者のようではないかと思いきや、過酷な実験中いちいち「心は動かない」そうだ。昼から3限続きの授業では実験データを集め、そのレポートの作成はすべて宿題である。

 「レポートのなかでも、背景理論など教科書の丸写しに目をつぶってもらえる部分もある」が、ポスターを見る限り、多くは実験機器から自分の目で読み取ったデータ。数値を表やグラフに直し、解析した結果を論述することになる。細心の注意を払ったのに数式から出る結果と実験データがどうしてずれたのか理由を必死で考え、その根拠を「ネットや、時間があれば学情の地下で調べ物をして」レポートを完成させる。不備があるレポートは再提出だ。これは電物に限らず、理系の一般的光景といっていいだろう。

 そんな実験発表を終えた青石さんは、「自分の無知を痛感した」「普段のレポートでごまかすことを夜通し調べてポスター発表会に臨んだ」と言う。不真面目学生の記者には向上心がまぶしすぎる。

自然現象目の当たりに

 実験の授業について聞いてみると、「実験を自動で何度も行い結果をグラフにしてくれる」ハイテク機器があると思えば、「暗幕の中に首を突っ込んでかすかな光を探して目を凝らす」場面もある。どの学部にも醍醐味というのはあると思うが、「実験の授業は難しいけれど、珍しい自然現象を目の当たりにするのが面白いところ」というのが多くの理系の気持ちを代弁しているように思った。

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「半導体測定」の「ホール効果の測定」の実験装置=工学部棟で2016年11月10日、廣瀬瞭汰撮影

用語解説

ホール効果 物質中に流れる電流に垂直な方向に磁界を加えたとき、電流と磁界に垂直な方向に電界が生じる現象。この実験では、ホール効果を利用することで、半導体の性質を決定する重要なパラメータであるキャリア密度と移動度を求める。

文責

竹内勇気、廣瀬瞭汰(いずれもHijicho)


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