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コンピューター将棋選手権で市大チームが世界一!


2014年5月3日~5日に千葉県で行われた第24回世界コンピューター将棋選手権で大阪市立大学数理工学研究室・Apery (エイプリー) チームが優勝し、世界一という偉業を達成した。本大会は将棋プログラム同士による最強を競う大会である。
Aperyチームの平岡拓也さん (工・2008年3月卒) 、杉田歩准教授 (数理工学研究室) 、 山本修平さん (修士1年・数理工学研究室在籍) にお話を伺った。

※以下、それぞれの発言を平岡、杉田、山本と記す。

世界コンピューター将棋選手権
写真=Aperyチームの三人(右から杉田准教授、平岡さん、山本さん) (選手権ブログより引用)

世界コンピューター将棋選手権に出られたきっかけは?
[平岡] もともと私個人でこれまでに2度出場していたのですが、今年は数理工学研究室の二人も加わって、Aperyチームとして出場しました。4~5歳のころから将棋をずっとしていて、もともと将棋に対して親しみを持っていました。また、将棋はコンピューターと人間の力が今拮抗しており、とてもホットだと感じ、世界コンピューター将棋選手権に出場しました。
[杉田] 研究室の中でも世界コンピューター将棋選手権に出場したいね、という声が上がっていたのですが、そんな時、たまたま平岡さんがこの数理工学研究室のOBでしかも相当な実力を持っていると聞き、一緒に手を組むことになりました。ゲーム性のプログラミングの観点でもコンピューター将棋というのは面白い存在で、チェスやオセロなどと比べ複雑で、局面の判断が難しいといわれています。そのような点に興味を惹かれました。

昨年までとの違いは?
[平岡] 昨年度は9位という結果であと一歩のところで決勝戦出場を逃しました。昨年までは手を読む (探索) 部分に注力しており、いわば地道な基礎工事を中心に開発を行いました。今年は探索の改良に加え、局面の評価も改良しました。また、研究室の2人とタッグを組んだことによって、私とは別のアプローチでの局面の評価の改良をしてもらっています。

大会出場に当たり苦労された点は?
[平岡] まずは将棋盤をパソコン上に作るまでが大変でした。私の場合、半年ほどかかったのですが、完成するまでのモチベーションの維持が大変でした。そして作り上げてから強くしていく過程の中で、本当に強くなっているのかを判断することも大変でした。だんだん将棋が強くなってくると、これは良い手なのかどうかが自分たちでは判断できないので。
また、私は会社員ということもあって時間の確保という面でも苦労しました。
[山本] 私は大学4年生の時から始めてやっとプログラミングにも慣れてきたところでまだまだこれからというところです。トップがどのようにして強くなったのかを研究して、これから良いところは取り入れ、改良していくところは改良をしていきたいです。

世界コンピューター将棋選手権(選手権ブログより引用)

優勝された時の感想は?
[平岡] まさか自分たちが優勝できるとは思っていなかったです。floodgate というインターネット上でコンピューター同士が将棋を対局を行う場があり、そこでそれぞれの強さが数値化されて出るのですが、そこでは1位ではなく、自分たちよりも強いチームもあったので。コンピューター将棋は運の要素が大きくて、戦型によっても勝ち負けが大きく左右されます。
[杉田] 素直には喜べなかったですね。勝ってしまった・・・という感じでただただ驚いていました。来年以降はもっと実力をつけていきたいなと思います。

コンピューター将棋選手権のルールや内容は?
[平岡] 基本的にルールは普通の将棋とほぼ一緒です。ただ、コンピューターを使うため通信エラーなどについての決まりがあります。
決勝戦は上位8チームの総当たりです。ちなみに今回の第24回世界コンピューター将棋選手権は出場チームは日本人が中心の38チームで、個人の趣味で出場しているチームも多いです。ただ上位は大学や企業といった研究機関が多いです。そして、初期のころから出場しているベテランのチームが多いです。なので年齢層は割と高いですね。
人間同士の場合と違って体調や精神面のコンディションなどの気遣いもないのでその面は気が楽ですが、その代わりに本番中にマシンのトラブルが起きないように備えています。
一度対局が始まるとコンピューターには触れることができないので、子供の将棋を見に行くような気分です(笑) 相手チームと対局中に談笑したり、大会の雰囲気は和やかです。

コンピューター将棋選手権写真=PC上での対局の様子 (選手権ブログより引用)

これからの目標は?
[杉田] 今年はタッグを組んだものの、時間が足りなくて平岡さんの力ばかりに頼ってしまいました。これからは今年間に合わなかった部分である評価関数を中心に、研究室で改良をしていきたいと思っています。
[平岡] 今回の大会を振り返って、結果としては優勝できたものの局面の判断の部分でほかのチームと比べて劣っていると感じたので、これからも妥協することなく、探索やスピードの部分など改善できるところは改善していきたいです。もちろん来年は連覇を目指したいです。

市大生に一言お願いします。
[平岡] 自分はコンピューター将棋を趣味で始めたのですが、趣味でも思いっきり打ち込めるものがあればとても楽しいので、就職して仕事をして休日は遊ぶというのもいいかもしれませんが、なにか打ち込めるものがあればいいと思います。
また、今興味のあることが、一生興味を持ち続けるものというわけではないので、いつでも遅くないので興味を持ったことに挑戦することが大切だと思います。
[杉田] 市大生は自分自身がトップクラスではないと思っている人が多いと思いますが、平岡さんのように趣味で始めて東大・京大といったトップクラスといわれている人たちに勝る優秀な学生もたくさんいます。自分で限界を設定せずに思う存分チャレンジすることが大切だと思います。
[山本] 人生何が起こるかわからないということですね。今回の大会を通して身をもって実感しました。

From editor

ベテランが上位を占める世界コンピューター選手権で、3回目の出場にして大金星をあげた Aperyチームの3人に大きな拍手を送りたい。
杉田准教授の述べられた自分に限界を設定しないこと、という言葉がインタビューの中で特に印象に残った。市大生をはじめ今の大学生は、どこか守りの姿勢に入っている人が多いのではないかと筆者は感じる。自分の能力やポテンシャルを過小評価するのではなく、何事も一歩踏み込んだ挑戦をすることが大切ではないだろうか。たとえ趣味でもそれを極めると世界1位にだってなれるのだ。さまざまなことに挑戦することで、夢中になれることを見つけ、それが今後の人生を大きく変えるかもしれない。
今からでも遅くない、興味のあること、やりたいことに全力でチャレンジしてみよう。きっと新たな自分に出会えるはず。

文責

 町田和紀 (Hijicho)


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