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「善意」と「悪意」


「飛辞書 ~文理を越えるその言葉~」は、あなたの学科だけで使われているような特殊な言葉を取り上げ、分かりやすく説明していくコーナーである。「特定の学問分野だけで使われている言葉が、その分野を飛び越え、みなさんの知識になる」をコンセプトにしている。第五回目の今回は法律分野で使われる際の「善意」と「悪意」という言葉について取り上げる。

「善意」と「悪意」とは

一般的に善意は「良い心・親切心」、対の悪意は「相手に害を加えようとする心」という意味で使われる。しかし法律用語として使用するときは「法律上の効力に影響を及ぼす事柄について知っているか、知らないか」ということを意味する。主に民法で使用される用語で、何も知らず契約を結んだ人の権利を法的に保護するためにある。その契約に問題があると知らず、「やって良いこと」という意志があっての行為であると「善意」といわれる。逆に問題があると知っていて、「やって悪いこと」という意志がある上での行為は「悪意」になる。

「善意と悪意」の使用例

「善意と悪意」の具体的な使い方を説明していきたい。

たとえばあなたにA,Bという友達がいたとする。Aは持っていたマンガ一式をBに譲り、譲ってもらったマンガをBがあなたに売った。この場合あなたはこのマンガの現在の持ち主となり、このときABの売買に関してあなたは第三者となる。

しかし、実はAは親にマンガの買いすぎについて叱られ古本屋に売りなさいと命令されたので、それを免れるためにBに相談し、「実際は俺のだけどとりあえず建前上Bのものにして家に置いてくれよ」と頼んでいたとする。けれどBは約束を破りそれを勝手にあなたに売っていた。

この時ABの契約は嘘のものであったので、AのマンガはAのもののままだ。Bは謝罪しAにマンガを返さなければならない。そうなると当然何も知らないあなたも、自分に関係ない理由のせいでお金を出して買ったマンガを返すことになる。
しかし本当に返さなければいけないのだろうか。そこで重要になるのが「善意と悪意」である。

あなたがもしAB間のやりとりや真意を知らなかった場合、あなたは「善意」の第三者となる。そして善意の人間が理不尽な理由で権利を侵害されることは法律により禁じられている。

そのため何も知らない「善意」のあなたには法的な保護が働き、Aのマンガをそのまま手に入れることが出来るのだ。

けれどもしあなたがAのマンガをBが無断で勝手に売ったと知っていた「悪意」の第三者ならば、Aはあなたからマンガを取り返すことが出来る。

法律は理不尽な結果を生まないよう当事者の状況によって柔軟な判断を下すことが求められるが、その根拠として「善意」「悪意」という区分けがなされることがあるのだ。

終わりに

「善意と悪意」は日常生活で使われる用法と法律用語として使われる用法では意味が異なる。法律用語としての意味を知っている法学部外の生徒は少ないだろう。この通り、世の中には自分が知らない言葉や、自分の知る意味とは違う意味が定義付けられている言葉が溢れている。もしかしたら気づいていないだけで、あなた自身が今までに法律用語の「善意と悪意」が使われる場面に遭遇していたかもしれない。

特定の学問分野だけで使われている言葉を知ることは、一見意味が無いように見えてもその後どこで役に立つかわからないものだ。何より知識はいくら身につけても重荷にならない。この機会を生かして自分の周りにある言葉を改めて調べてみれば、今まで曖昧な印象で使っていた言葉の正しい意味や新たな発見があるかもしれない。その経験はあなたの人生をより知的にするだろう。

文責

細原千尋 (Hijicho)


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