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市大統合から国の成長戦略まで 今、注目を浴びる大学ランキング 〜市大アジア69位ランクインによせて〜


大阪市立大学は、英高等教育情報誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが発表したアジア地域の大学ランキングにおいて第69位となった。このランキングは「教育 : 学習環境 (研究者からの評価や教員数と学生数の比率など) 」、「国際性 (外国人教員比率・外国人学生比率・研究の国際性など) 」、「産学連携収入 (産業界からの研究収入) 」、「研究 (研究者からの評価、教員数と論文数の比率など)」、「論文引用数」等5つの大きな括りの中の13の要素を基に、アジア地域の大学を順位付けたもの。同誌これまで「世界大学ランキング」などを毎年発表しており、アジアの大学のランキング化は初となる。

ランキングでは、東京大学が1位、京都大学が7位、東京工業大学が13位、東北大学が15位、大阪大学が16位と、トップ20に国内の5つの大学がランクインしている。また公立大学では、首都大学東京が36位にランクインしている。大阪市立大学の69位周辺には、広島大学 (67位) 、神戸大学 (73位) などがランクインしている。大阪市立大学の評価の詳細を見てみると、産業連携収入や教育、論文引用の値が高い一方、国際性と研究の値が低いとの結果が出ている。

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画像=タイムズ・ハイヤー・エデュケーション HPより

今回の大阪市立大学のランクインは、大学の公式ホームページでも紹介されており、大学側も自らがどの位置にランクインしているのか注目していると考えられる。

大学ランキングと国の成長戦略

今日、我が国の成長戦略においても、世界の大学ランキングが注目されている。日本の大学で、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「THE世界大学ランキング 2012-13」の100位以内にランクインしたのは、27位の東京大学と54位の京都大学のみだ。大学の国際化の必要性が叫ばれる中、このような状況に対して、安倍政権は成長戦略のひとつに「今後10年で100位以内に10大学」を掲げ、大学の経営改革・予算措置に乗り出していく構えだ。

以下、安倍総理のスピーチの引用。

平成25年5月17日 安倍総理「成長戦略第2弾スピーチ」
まず隗より始めよ。国立の8大学で、今後3年間の内に、1500人程度を、世界中の優秀な研究者に置き換えます。これにより、外国人教員を倍増させます。

大学の経営の在り方も、世界のグローバル・スタンダードにあわせなければなりません。年俸制の導入や、教員の家族が英語で生活できる環境の整備など、経営改革も進めてまいります。

国の運営費交付金などの分配についても、「グローバル」に見直しを行い、大学の改革努力を後押ししていきます。

外国人教員の積極採用や、優秀な留学生の獲得、海外大学との連携、そして、英語による授業のみで卒業が可能な学位課程の充実、TOEFLの卒業要件化など、グローバル化を断行しようとする大学を、質・量ともに充実させます。制度面でも、予算面でも、重点的に支援します。

今後10年で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインを目指します。同時に、グローバルリーダーを育成できる高等学校も、作ってまいります。

具体的には、上位100校入りを支援するため、文部科学省は2014年度予算の概算要求の項目に、「スーパーグローバル大学事業」というものを盛り込んでいる。注1これは「グローバル化を背景に、世界に冠たる教育研究レベルを誇るトップレベル大学をはじめ、高等教育の国際化を牽引し有為な人材を育成するグローバルトップ大学群を形成する国公私立大学を、現行制度の枠にとらわれずに、制度改革と組み合わせ制度と予算を総動員して支援 ※対象:30大学(トップ型 10大学、グローバル化牽引型 20大学) 」する事業だ。この事業に対して、概算要求額156億円を設定している。

府市大統合と大学ランキング

このような大学ランキングを意識した大学運営の流れは、府市大統合の構想においても例外ではない。平成25年4月に大阪府市新大学構想会議の提言をもとに、大阪府・大阪市より示された「新大学ビジョン (案) 」注2において、以下のような文言が記されており、統合による大学ランキングの向上を明確に意識している。

〇大学ブランド戦略の推進、情報発信の強化
・新大学の国際的な認知度を高めるため、各種ランキングの順位向上を図るとともに、メディア等に積極的にPRを行い、効果的な情報発信に努めるなどブランド力強化に取り組む。

〇研究で世界と戦える大学の実現
・学長のガバナンスのもと、新大学の強みを発揮する分野や戦略的研究分野に集中投資を行い、国際的なランキングの向上など世界と戦える大学を実現する。

・統合を機に新大学の世界的な評価(ブランド力)を上げることが求められる

ランキングが目的になってはならない

このように、大阪市立大学はもとより、府市大統合や国の成長戦略など、様々な場面において大学ランキングは念頭に置かれている。しかしながら、このような大学ランキングを意識した流れに、いささか疑問を感じずにはいられない。確かに、今後大学の国際化を推し進めていく上で (もちろん大学の国際化についてもまだまだ議論は必要だろうが…) 、世界大学ランキングトップ100に10校入れるという具体的な目標値を設定をしているのは意義のあることだろう。しかし、ランキングの向上自体が目的になってはいないだろうか?

大学ランキングの妥当性は?
そもそも各大学の実態とランキングの評価が、完全に一致するということはありえないはずだ。論文引用数や外国人教員比率などの一側面を「指標」という客観的にみえる基準で見てランキングしているにすぎない。確かにそれら単体で比較はできるとしても、それらを合わせた総合指標やランキングは可能だろうか。例えば、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「THE世界大学ランキング」では、それぞれの評価指標に対し「教育 : 学習環境 30%」、「国際性 5%」、「産学連携収入 2.5%」、「研究 30%」、「論文引用数 32.5%」というように評価ポイントの配分を定めている。その比率を決める際に、どれがどれくらい重要だと決めるにしても、主観的な要素が入り込み、歪みが生まれてしまう可能性は排除できないのだ。さらには国際的なランキングである以上、国が違っても通用する指標を作り上げるというのは非常に困難なことだろう。

また、ランキングの問題点として、数値化されないものが一切無視されるという点がある。例えば、教育の質など数値化しにくいものもあり、そのような面で実力を持った大学が評価されないということも起こりえてしまう。

まとめ

英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「世界大学ランキング」をはじめとして、世界には様々な大学ランキングが存在する。それらは、ある機関が決めたある見方での評価であり、絶対的な価値を示したものではない。だからこそ、大学ランキングというものは、あくまで一機関が独自にやっているものだから歪みはあるものであり、位置を確認するための一手段にすぎないと認識した上で、活用していくことが重要になってくる。府市大統合においても、国の成長戦略においても、ランキングにおける順位向上が目的にならないように注意すべきだろう。ランキングを重要視するあまり、ランキングの評価項目にあるものばかりを追い求めて、ランキングに関係のないものを切り捨てしまうといったことのないように願いたい。

参照

注1:文部科学省HPより
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2013/08/30/1339145_2.pdf
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2013/08/30/1339147_2.pdf

注2:新大学ビジョン (案)
http://www.pref.osaka.jp/shigaku/kousoukaigi/

文責

鶴木貴詩 (Hijicho)


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