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教授が語る夢 創造都市研究科・永田潤子准教授


市大の様々な教授にインタビューをし、個人的な夢や思想を聞くことで教授自身のことを追究していくコーナーです。第8回は創造都市研究科の永田 潤子准教授です。現在は社会人の大学院の講義をメインにされています。ご自身のユニークなキャリアから現代の問題点まで独自の視点をお聞きしました。

<永田准教授の略歴>
1978年 女性に門戸を開放した海上保安大学校に初の女子学生として入学
1987年 26歳で女性初・最年少で巡視艇「まつなみ」船長となる
1990年 現場で感じた問題意識を解決したいという思いから埼玉大学大学院政策科学研究科(現: 政策大学院大学)にて政策の分析や意思決定を研究
1995年 自身を組織にとって活かすには大学校での後輩の教育に当たることと感じ、大学校の要請に応じ、教育研究の道へ。大阪大学経済学研究科へ入学
1997年 海上保安大学校行政管理学講座助教授
2003年 大阪市立大学創造都市研究科准教授

創造都市研究科 永田潤子 准教授
写真=永田潤子准教授

人生は一度きり

―海上保安庁で勤められていたということですが、なぜ入ろうと思われたのですか?
きっかけは父親の薦めでした。もともと女子大に行こうと思っていたのですが、人生は一度きり、どちらが面白いだろうと考えてみた時に、海上保安大学校の受験を決めました。私が受ける前年まで保安大学校は女人禁制だったのです。一次試験の合格発表で、女性らしい名前が他にもあったので、女性は私1人ではないと思い、自分の可能性を試してみようと意欲が湧きました。後でわかったことなのですが、一次試験に合格していた女性は既に私1人でした。(人事院の試験なので性別は掲示されないのです。)結果的に女性初で入りました。偶然に思うことだけど、後ろを振り返ってみると偶然ではなく、もしも一次試験の合格発表で女性が私1人だとわかっていたら、二次試験を受けていたかわからない。誤解をして二次試験を受けたことが私の人生にとっては必要なことだったと思います。
今でこそ様々な分野に女性がいることが当たり前になっていますが、私が入ったときは「女性初」というのがニュースになるくらいでした。私ももちろんですが、受け入れた側(海上保安庁の男性たち)も戸惑ったと思います。今まで男性だけの社会だった中に女性が入るとやはりこれまでとはかなり違いますよね。

―女性の社会進出に関してどのように思われますか?
女性のリーダーと男性のリーダーのどこが違うか、と問われると、リーダーとしてやらなければいけないことは同じです。しかし女性であることの違いというのはどこかに出てくるものだと感じます。
あるとき国際機関等で働いている経歴を持つ友人たちと話していて、「もし世界中の首相や大統領が女性だったら、戦争は起きないのではないか」という話になりました。自分の子供の命を奪うような決断を、女性たちはするだろうか。プライドや建前、取った・取られたから離れた解決策を模索するのではないかと。これは1つの極論で、実際のところは各国のトップが女性になっても国益を守るという点で衝突するかもしれません。しかし、リーダーとしてやらないといけないことを通り抜けて、更にもっと深い部分に辿り着いたとしたら、もちろん一番下は人間全体の共通部分になるのかもしれないませんが、男性と女性は何らかの本質的な違いがあると感じています。ですから、社会で色々なポジションや職種に女性がいると、何がどう違うかははっきり言えませんが、今の男性的なエネルギーの強い、つまり男性型の社会ではなく、もっと違うところに社会へのアウトプットが生まれると思いますね。男性的、女性的という言い方がとても難しく、誤解を招かないか心配ですが。本人が希望していて、適性があれば、様々なところに女性がいるほうがバランスがとれるんではないでしょうか。
女性だけでなく、様々な人が様々な所にいることが多様な考えや価値観を社会にもたらすことになります。ですから私は様々なところやポジションに行きたい人がいくというのは良いと思います。

―どのようなことを研究されているのでしょうか?
大きく分けて2つあります。1つは国や地方自治体の行政改革や公共経営(どうやったら地域全体が良くなるか)です。地方や国など行政を変えることは大事なことだと思います。いくら個人で頑張っても仕組みが上手くいっていないと暮らしづらいです。そのような理由から国や行政のお手伝いをしていました。ただ、政治や行政を変えるには時間がかかります。そこでもっと直接的に暮らしを通じて社会を変えることも必要だと感じ、現在は2つ目として市場を通じて社会を変える、ソーシャル・マーケティングという分野を研究しています。

暮らしやすい社会へ

―今の社会の問題とは?
今の社会を見て思うのは「大きなサイクルで回っているものが多すぎる」こと。例えばお金にしても、国境を越えて回っていますよね。工場での大量生産も経済学でいう規模の経済、効率性の追求から考えれば妥当かもしれません。しかし無駄も逆に生まれるし不都合なこともたくさん生まれますね。例えばコンビニのお弁当も時間になれば、大量に捨てられます。このサイクルを小さくして、例えば地産地消のようにすれば、無駄が省けるものもあるかもしれませんね。大きなサイクルで回すものもある、そしてもっと輪を小さくするものもあれば、無駄が省けますよね。

また「社会全体がお金に依存し過ぎている」と思います。私達はお金がないと暮らしていけないって思う。お金がないと社会に参画するチャンスすらないと思っているし、お金に重きをおきます。以前に暮らしていた長野では、お互いが挨拶をし合ったり、隣の人が畑で育てた野菜を下さったりします。お金以外のものもたくさん地域で回っています。それが物々交換だったり、挨拶という思いやりだったり。お金以外のものもたくさん回っているから、1つの社会に参画できる人が増えるのです。
自分らしく生きたいと思いながら、お金に振り回されて、働き方や生き方を決めなければいけなくなっています。ものが回るサイクルが小さくなり、お金に偏重し過ぎない社会になれば、もっと暮らしやすいのではと思いますね。

―先生の夢は何ですか?
女子学生の方たちにもっと教えたいです。マーケティングから見ると、購買の決定権の7〜9割は女性が持っています。暮らしを通じて社会を変える、「暮らし」目線で考えると、女性が持っているパワーはすごいのです。企業に就職した後も、マーケティングの基本を活かしながら、自分の仕事の先に何を見るか(単に個人の仕事なのか、その先に社会や地域をみるのか)で大きく違ってくると思います。また女性が男性にリーダーシップを取る時の不安 (まだまだ社会の中で女性は少数なので) についても、私の経験をお話することで、何かのお役に立ちたいですね。
個人的な夢としては晴耕雨読のような生活がしたいです。(笑)

大学生の「自由である」特権を活かそう

―市大生に向けてのメッセージをお願いします
大学生という立場を生かして、社会に出る前に様々なことにトライすることをオススメします。社会に出ると、必然的に朝起きる時間ややることが決められてしまいます。今とは自由度が絶対的に違います。大学時代は自分で組み立てられる時間と考える事ができます。夏に海外旅行いきたいなと思ったら、アルバイトをして、行くことができます。色んなことに取り組んで、仮に失敗しても大人たちは許容してくれます。ぜひ大学生という肩書を存分に活かしてほしいです。でも勉強はしておくと良いですよ。知識は邪魔になりませんから。

取材後記
永田先生はどの質問に対してもまっすぐ凛とした表情でお話してくださり、自分の人生を一歩一歩着実に歩んでこられたパワーを感じました。創造都市研究科というと、学部生にはなかなか馴染みがないですが、一度先生の授業を受けてみたいです。

教授が語る夢バックナンバー

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文責

石原奈甫美 (Hijicho)

写真

細原千尋(Hijicho)


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