HijichoのLINE公式アカウント
友だち追加数

教授が語る夢 第14回 医学部瀬戸俊之准教授


 本学のさまざまな教授にインタビューを行い、それぞれの夢や思想を伺うことで教授自身のことを追及していくこのコーナー。第14回となる今回は医学部の瀬戸俊之准教授にお話を伺った。瀬戸准教授は小児神経内科学と臨床遺伝学を研究しており、今年3月には第38回リバネス研究費カイオム・バイオサイエンス賞を受賞している。これは抗体治療を通し医学への貢献を目指す研究に対する助成制度であり、今回はファブリー病に関する研究が評価された。

瀬戸准教授(写真左下)と医療チームの皆さん=大阪市立大学附属病院にて7月4日、行田美希撮影

 

 ——医学部の先生方の仕事内容を教えてください。

 大学教授の主な仕事は学生を教育することと研究ですが、医学部の教員にはもう一つ重要な役割があります。それが診療です。本学の附属病院は大阪市唯一の大学病院であり、治療や診断が難しい病気を診てほしいと多くの患者さんがやってきます。その期待に応えることは研究機関としての義務だと感じています。

 

 ——教育に研究に診療、となると毎日大変忙しそうですね。

 そうですね。しかし診療が忙しいからといって学生の教育をおろそかにすることはありません。教職員同士で分担し、病院が混み合ったときでも必ず誰かが講義できるよう工夫しています。患者さんの診療に影響を与えることなく、教育や研究を行うのが私たちの使命です。

 

 ——研究はいつ、どのように行うのですか。

 診療後の夕方、土日などの時間を使って研究を進めています。空いた時間をいかに有効的に使うかが重要です。研究を通して明らかになったことを患者さんに応用し治療する、というように、患者さんの承諾を得て治療とともに進めていく場合が多いですね。

 

 ——先生が医療に関わろうと思ったきっかけはなんですか。

 小さい頃から病院に通うことが多かったからだと思います。子供の病気というものは、大人になってからお酒ばかり飲んで肝臓を壊すようなものとは全く違います。自分が病気と向かい合う中で、どうして病気なんてあるんだろう、初めからハンデを持って生まれるこの不条理はなんだろう、と考える機会が多く、病気や障害に関心を持つようになりました。それらを理解するには医学部で勉強するのが近道だと考え、大阪市立大学医学部に進学しました。

 

 ——先生の専門である小児神経内科学について教えてください。

 脳、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、そして目的地の筋肉……。「神経」という言葉は広い範囲を指します。それらに関する病気はすべて神経内科学の専門であり、小児神経内科学では子供の神経系の病気を取り扱います。例えばてんかんは子どもに多い神経系の病気の代表例です。他にも子供が急に熱を出したり炎症を起こしたりする脳炎や髄膜炎などの病気も診療します。

 

 ——神経系の病気の治療はどのように行うのですか。

 基本的には薬の処方です。神経系の病気には治りにくいものが多く、継続的な治療が必要になります。正確な診断をし、適切な薬を処方することが治療の分かれ目となります。

 

 ——小児神経内科学を研究しようと思ったきっかけを教えてください。

 生まれつきの病気との付き合いはどうしても長くなります。子供たちは病気とともに学校に行き、そしていつかは病気を抱えながら働くことになります。そうやって病気と付き合いながら生きていく人々について考えてみたいと思ったからです。先ほど話した通り、幼いころに子供の病気に関わったことも理由の一つかもしれません。また、子供や赤ちゃんを診るには小児科に進むしかなかったという背景もあります。自分が目指す医師像を考えたときに、大人だけでなく子供や赤ちゃんも診る医者になりたいと思いました。

 

 ——臨床遺伝学について教えてください。

 遺伝学の進歩により、病気の原因遺伝子が次々と明らかになってきています。これは神経系の病気にとどまらずどんな病気にもいえることです。そのため、遺伝子解析技術を用いて患者さんの血液を調べることで、長い間原因不明とされてきた病気の原因がわかるようになってきたのです。臨床遺伝学では、この遺伝学の知識と技術を用いて具体的に患者さんの診断や治療法を考えます。

 

 ——子供を診るに当たって工夫していることはありますか。

 子供は自分で上手く話ができないため、子供の治療は大人の三倍手がかかると言われています。そのため、病院内では多くの人々がチームを組み、協力して子供たちを支えています。地域と病院をつなぐケースワーカー、子供たちが入院中もいきいき過ごせるよう工夫する保育士、院内学級で子供たちに勉強を教える先生。医師一人では決してできない充実したサポートを、チーム医療というかたちで実現させています。知らないところで病気と向き合い、大人以上に頑張って子供たちの姿に光を当てるのも病院の重要な役割だと考えます。

病棟では小学生の男の子が自分よりはるかに背が高い点滴を持って歩き回っていた=行田美希撮影

 

 ——カイオム賞について教えてください。

 今回の受賞理由はファブリー病という子供の時に発症する病気の研究です。この病気になるとDNAから作られるはずの酵素に異常が生じたり、全くできなくなったりして、タンパク質が分解されず身体に溜まってしまいます。従来の治療法は酵素を体内に注射するというものでしたが、一部の臓器にはあまり効かないうえ、酵素に対するアレルギー反応が起きてしまう場合もあります。そのため、現在これに代わる新しい治療法を研究しています。

 また、ファブリー病の患者さんに対しては定期的な点滴が必要です。しかし、これは病気の進行を抑えるだけのものであり、一度の治療で症状が劇的に改善するわけではありません。そのため、二週間に一回の点滴治療のための病院に通うやる気を保てない方も少なくありません。そこで、身体の中で薬が効いているということを数値で示し、患者さんのモチベーションを高めるマーカーを作りたいと研究を進めています。これらの研究が今回評価されました。

 ——これからの医療に関し、目標や夢を教えてください。

 まずはファブリー病のような現在進めている研究の結果を出すことが目標です。人間は一人ひとり違い、同じ病気でも人によって症状や原因は異なります。遺伝学的な診断はそのような細かな違いを明らかにしてくれるものです。そういった診断が子供たちを始めとする全ての患者さんたちの日常生活に役立てばと願っています。

 

文責

行田美希(Hijicho)


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Hijicho on Twitter

ページ上部へ戻る