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市大存亡の危機~無関心ではいられない~ vol.4


「市大存亡の危機~無関心ではいられない~」は大阪府市大統合について様々な視点から切り込んでいき、学生の皆さんに問題意識を持ってもらうことを目的としたコーナーである。第4回は前回に引き続き、新大学構想〈提言〉・新大学ビジョン (案) から統合についてどのような構想が持たれているか紐解いていこうと思う。

新大学構想 改革の3本柱と重点項目

新大学構想には、改革の3本の柱といくつかの重点項目がある。

改革の3本柱
1.新たな教学体制の導入
2.選択と集中による教員組織の再編
3.大学運営システムの抜本的改革

ここからはこの3つの柱それぞれについて詳細に見ていく。

1.新たな教学体制の導入

第一に掲げられているのが「新たな教学体制の導入」である。具体的には、①研究組織 (教員組織) と教育組織の分離、②専門基礎教育重視の学部と専門学際教育重視の学域の並存、③教員配置の見直し、④学生定数の見直しなどが挙げられている。③については、新大学において集中すべき分野や補強が必要な分野に人的資源を再配分すること、教員の所属研究員及び担当教育組織を定期的に見直し、評価に基づき必要に応じて適切な配置転換を行うことなどが考えられている。④については、現在の両大学の規模の範囲内で新大学の教育組織に再配分するとしている。

2.選択と集中による教員組織の再編

「選択と集中による教員組織の再編」では、選択と集中の観点から両大学の重複分野を統合・再編すること、社会で即戦力として活躍する人材を育成するため社会人大学院の充実を図ることが目標とされている。

重複分野の統合・再編については、具体的に次のよう5つが考えられている。

①地球末来理工学部 (仮称) の設置
市大の工学部と府大の工学域は、重複する分野が多く、これらを再編・整理するとしている。特に、建築、土木、海洋、航空、新エネルギー、防災等については、両大学の工学の強みのある部門であり、統合することで大学統合のシンボルとして打ち出す。さらにこれらの分野に、今後の発展が期待できるナノサイエンス、ナノテクノロジーをキーワードとした分野を加えることで、理学・工学分野が融合した新しい未来志向の学部にするとしている。

②人間科学域 (仮称) の設置
府大の地域保健学域 (看護を除く) と市大の生活科学部を再編し、栄養・リハビリ・居住環境・福祉など、人間が生活していく上で必要となる支援を担う人材の育成に重点を置くとしている。大学院は、新学域及び現代システム科学域の学生の受け皿となる教育研究機関として、人間総合科学研究科 (仮称) を設置する (人間社会学研究科を含める) ことが考えられている。

③獣医学部の設置
府大の生命環境科学域獣医学類は、公立大学の中で大阪府が唯一設置する特徴的な分野であり、学部として新たに設置し、西日本の拠点となる強力な学部として打ち出すとしている。教員数や、施設・設備も拡充に対応しうる状況にあり、入学定員の増員を積極的に推進すると考えられている。

④看護学部の設置
府大の地域保健学域と市大医学部の看護師養成分野が統合される。医学研究科や附属病院、府立・市立の病院との連携を強化し、高い実践分野と高度な研究分野を併せもつ全国最大規模の看護師養成拠点をめざすとしている。

⑤経済・経営系学部での新たな学科の設置
グローバル人材の育成や大阪の成長戦略に貢献する機能強化策として、新大学の経済学部に国際経済学科 (仮称) 、商学部に地域経営学科 (仮称) を新設する。大学院は経済・経営学研究科 (仮称) として統合し、経済学専攻・国際経済学専攻・経営学専攻・地域経営学専攻 (いずれも仮称)に再編するとともに、従来両大学が行ってきた社会人教育については都市経営研究科に1本化するとしている。

社会人大学院の充実
社会人大学院の充実策としては、現行の社会人向けの大学院を統合・再編し、新たに社会人向け大学院、都市経営研究科 (仮称) を設置するとしている。また、その中に現職教員に学校マネジメント・地域連携等を習得させレベルアップを図る専攻 (教育系大学院) を設置することも検討されている。さらに、現在使用している梅田 (市大) 、なんば (府大) の各サテライトを都心キャンパスとして活用することも考えられている。

3.大学運営システムの抜本的改革

最後の柱である「大学運営システムの抜本的改革」では、①理事長・学長のガバナンス強化、②教員人事の一元化、③教員配置の定期的見直しによる流動性の確保、④大学ブランド戦略の推進、情報発信の強化、⑤目標管理体制の構築・ PDCAサイクルの定着などが考えられている。

①では、裁量経費の拡大など理事長・学長の権限を強化するとともに、直轄の学内改革プロジェクトチームを設置し、持続的改革を推進するとしている。⑤では、教育・研究・事務・国際戦略・地域貢献など全分野に目標管理体制を構築し、PDCAサイクル (Plan→Do→Check→Actの頭文字をとったもの:計画・実行・評価・改善をサイクルさせることで業務を継続的に改善させること) の定着を図るとしている。それにより教員活動の自立的な改善を促すと考えられている。

新大学の事務組織

事務組織は、教員組織とのイコールパートナーシップという原則に基づき、「専門職能集団」に位置付けるとしている。職員が大学運営の企画立案や、カリキュラム編成に主体的・積極的に参画するなど、教員と職員が一体となった「教職協働」による業務推進体制を構築する。加えて、そのための人材育成・人材開発を進めることが考えられている。

キャンパス

新大学のキャンパスについては次のような目標がもたれている。

・キャンパスごとに特徴を出し、教育研究環境の充実とともに、学生にとって魅力的なキャンパスづくりを推進する。

・学生の利便性の向上とともに、大学改革のインパクトをより高めるため、新しいキャンパス
の設置も検討する。

・公立大学として、地域に根ざしたキャンパスづくりをめざす。

新大学は、多数のキャンパスを有することとなるが、当面は現行キャンパスを活用することとし、原則として同じ学部・学域は、同一キャンパスに配置することになるそうだ。そして各キャンパスごとに特徴を出しながら、教育・研究・地域貢献等に取り組むキャンパスの再編を進める中で、将来的には、大阪市内中心部への新たなキャンパスの配置も検討される。また、梅田・なんばの「サテライト」については、都心キャンパスとして社会人教育の拠点に活用される。

キャンパス利用のイメージ

「現状」
市大
梅田サテライト
阿倍野キャンパス:医学部
杉本キャンパス:医学部以外の学部

府大
なんばサテライト
りんくうキャンパス:生命環境科学域 (獣医)
中百舌鳥キャンパス:現代システム科学域、工学域、生命環境科学域 (獣医以外) 、地域保健学域 (教育福祉)
羽曳野キャンパス:地域保健学域 (教育福祉以外)

「新大学」
都心キャンパス (梅田・なんば) :社会人系
りんくうキャンパス:獣医系
阿倍野キャンパス:医療系
杉本キャンパス:基礎・学術系
中百舌鳥キャンパス:応用・学際系
羽曳野キャンパス:生活支援系

終わりに

以上が新大学構想〈提言〉と新大学ビジョン (案) を基に、現状での新大学の構想を予測したものになる。あくまで現状出されている資料を参考に、筆者の視点から読み解いたものに過ぎないのでご了承していただきたい。

今後は前回も書いたように、大阪府と大阪市が新大学ビジョン (案) についてのパブリックコメントを実施するとともに、本年8月を目処に府、市、府大及び市大で策定する「新大学 (案) 」において、より具体的な内容がまとめられる。現状ではあまり具体的な改革案が示されていないことから、この「新大学 (案) 」においてどこまで改革内容が具体化されるのかに注目したい。

文責

橋本 啓佑 (Hijicho)


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