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教授が語る夢 複合先端研究機構・橋本秀樹教授


市大の様々な分野の教授にインタビューをし、個人的な夢や思想を聞くことで教授自身のことを深く追究していくコーナーです。第7回目は複合先端研究科/大学院理学研究科の橋本秀樹教授です。光合成の研究をしておられます。光合成の魅力から生き方まで、幅広くお話を伺ってきました。

光合成がもたらす新たな視点

—光合成とは
光合成は全ての生命活動の根源です。というのも大昔は地球に酸素がなかった。約80%が二酸化炭素だったんです。だんだん生き物が生まれてくる環境ができて、大気の二酸化炭素を吸収して酸素と有機物を生成する機能を持った光合成生物が誕生したのです。現在地球上に酸素が存在するのは光合成の結果です。また食物連鎖の原点も光合成です。例えば海の中を眺めると、植物性プランクトンや藻を小さな魚が食べて、小さな魚を大きな魚が食べて、それを繰り返して最後は人間が食する。陸も同じですね。光合成がなければ何も生きられない。

しかも植物は光合成と呼吸によって自ら必要なエネルギーを生み出しています。一方動物は外部から糖を摂取しないと必要なエネルギーを作れない。だから実は植物の方が偉いんです。歴史も古いですしね。

—どのような研究を行っているのですか
植物が明反応においてどのように光エネルギーを取り込んでいるのかを研究しています。

※よくわかる解説

光合成は暗反応と明反応から成ります。暗反応は水と二酸化炭素からデンプン(糖)を生成する反応ですが、これに対して明反応は、光エネルギーを暗反応に必要な生体エネルギー (アデノシン三リン酸(ATP)とニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)) に変換する仕組みです。この途中で水を分解して酸素を発生します。つまり光合成は、生命活動に必要なATPやNADPHをつくり、そのエネルギーを利用して二酸化炭素を糖に変換する反応です。酸素は副産物という訳です。このようにして植物は糖を体内で生産し蓄えます。そして、光がないときには、蓄えた糖と酸素の反応、いわゆる呼吸によって、エネルギーを生み出します。光合成と呼吸によって植物はいつでも必要なエネルギーを作り出すことができるのです。

植物は複雑な反応によって光の粒子を一つ残らず効率的に取り込んで利用しているんです。光合成の中で一番大事な部分ですね。光合成の過程で植物が光を捕まえる仕組みを解明すれば太陽光エネルギーの利用に対して全く新しい視点を得ることができるのではないかと考えています。人間は今、太陽光エネルギーを利用しようと太陽電池を開発したりしていますよね。でもなかなか太陽光を100%利用する技術はありません。植物はいとも簡単にそれをやっています。光合成の真似をして二酸化炭素と水から燃料が作れれば、人間が呼吸によって排出した二酸化炭素を上手く利用できるんですよ。そうした技術が開発できれば、深刻なエネルギー問題の解決にもつながるでしょう。

橋本教授

追究すれば道は開ける

—なぜ光合成研究の道に?
学生の頃から研究しています。理学部化学科だったのですが、当時も境界領域の研究が注目されていて、特に生物、化学、物理の3つの領域をまたぐ境界領域はすごく先端的だった。僕は生命に携わる研究がしたいな、と考えていて、たまたま光合成の研究室を選びました。4年生で研究を始めたのですが、すぐさま良い研究結果が得られたのです。国際会議で発表しました。(笑)世界中からすごく注目されたんです。

学問の世界では正しく仕事をすれば、年齢や国籍に関係なく評価される。どんなに偉い先生でも私の発表を真摯な姿勢で聞いてくれる。アカデミアの素晴らしいところだと思います。そこに憧れを感じて学者になろうと決めました。大学院では最初の3年間全く成果が出なかったのですが、3年目に現在の教科書に載るような大きな仕事ができました。それでもうやめられなくなりました。(笑)

僕は化学科出身ですが、最初は工学部の応用物理学科に就職し、その後静岡大学に移りました。そこで偶然にもイギリスの光合成研究の先駆者のもとで生命科学の研究手法を学ぶ機会を得ることができました。物理、化学、生命科学、と全ての武器がそろったんです。なにか1つ興味のあることを見つけたら、それを深く掘り下げていくと今度は横に広がっていくものなのです。そういう風に学んでいくと将来は開けますよ。

—将来の夢は?
最後まで人生を楽しみたいですね。一生青春していたいです。
僕はとにかく興味のあることを追究したくなるんです。最近では海洋生物の光合成に関心があって、自分で沖縄まで新しい海洋生物を探しにいきます。潜らないといけないのでスキューバーダイビングのライセンスも取りました。体力をつけるために空手道も始めました。3段を持っていて市大で空手道を教えています。

大学はホーム 原点を大切に

ー市大生に伝えたいことは何ですか?
母校愛を持ってほしいです。自分の人生のアイデンティティだから。人間は原点回帰を忘れてはいけません。自分は結局何者で、どこから来たのか、どこへ向かうのか。常に人は悩むけれど、原点が揺らぐとどこにもいけないですよね。原点が豊かであれば人生は豊かになる。だから家庭 (ホーム) が大事なのです。大学は家です。何歳になっても困ったときに帰って来れる場所が大学です。その大学を良くしたいという気持ちを皆が持っていれば市大はもっともっと良くなると思います。

あと話はそれますが、2号館の開放厳禁の扉は閉めてくださいね。開けっ放しにしておくと、下手をすれば数千万円の装置が壊れてしまう危険性があるんですよ!(笑)

文責

石原奈甫美 (Hijicho)


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