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12月16日(日)決戦!衆議院議員総選挙 専門家の見解


12月16日(日)に投開票が行われる第46回衆議院議員総選挙。12政党が入り乱れる混戦模様を呈している。はたして今回の衆議院選には、どのような意義があり、どのようなことが争点になっているのか。本学法学研究科で行政学を研究しておられる砂原庸介准教授にお話を伺った。

今回の選挙の意義

ー日本維新の会や日本未来の党など非常に多くの政党が乱立する選挙戦となりました。このような政党の出現、政治現象としてどのように理解するべきなのでしょうか?
今回の選挙では、地方自治体、特に都道府県、大都市が重要になっているのは事実です。日本維新の会は、大阪を中心に限定された支持基盤をもった人たちのあつまりです。他にも「未来の党」は嘉田さんが滋賀、旧「国民の生活が第一」は東北と北関東、「減税日本」は名古屋というように、自分たちと地方との間に強い結びつきをもった人たちが集まっているのが今回のいわゆる「第三極」の特徴です。

それは日本政治の流れから言えば不思議ではありません。私は、今回の選挙では地方分権という観点からもう少し話が進むと思っていましたが、そうはならなかった。その意味で「一回休み」だと捉えています。どういうことかというと、地域ごとの利害を中央でまとめるというのは、自民党も民主党も同じことをしてきました。しかし、地方農村部の民主党と都市の民主党は考えていることが違い、この3年間全く相いれませんでした。それでも彼らがまとまっていたのは、地方分権云々といっても、基本的に中央の政治が全てだったからでしょう。「第三極」も中央の政治を中心に考えているからこそ、やや利害の違う人たちで連携しています。これから先は、地方を基盤とする様々な人たちが、自分たちと似たような人たちとうまく連合を組めるかが問題になると思っています。

例えば、今回は、維新の会と減税日本は組みやすい政党だったと思いますが、どういうわけか組めませんでした。長期的にみれば「都市対農村」の構図ができるはずなのに、今回はそうならず、都市農村同士、都市農村同士という組み方をしてしまった。将来的には「都市対農村」に分かれていくかもしれませんが、今回はそうはならなかった、そういう点で「一回休み」だと捉えています。

ただ、一つ言っておくと「第三極」という言葉は、「極」でもなんでもなく、ミスリードだと思っています。「第三極」は、あくまでそう言ってる人たちが、現状を批判するために、現状近づいてしまっている二党とは違うのだとアピールするために使っているのでしょう。

地方自治体の首長と国政の関わり

ー地方の首長が政党の代表として国政に関与しようとしています。このような動きは、国と地方の関係という観点から、どのようなことを意味しているのでしょうか?
ある意味、地方分権の度合いが低いからそうなっているでしょう。だからこそ首長たちは国への影響力を行使しようとする。しかし、政治の流れは地方分権に向いています。昔は知事が国政に入ってくるというのは、自民党の選挙組織の一員として入ってくるしかありませんでした。今は、そのようなたいして望めない出世をするより、地域で支持が高いということを理由に国政に関与してくるようになったわけです。本来であれば、その他の政治過程、例えば行政との折衝などで影響力を発揮してもよいが、そういうチャンネルがないのでできない。だから国政に介入していくというのは自然な流れだと思います。

ー自治体の首長と国会議員の兼務についてはどのように考えますか?
長自体が政治活動をするのはそんなにおかしな事ではないと思います。問題は、それを個人としてやるか、政党としてやるかです。政党としてやるというのは、一人がおしまいと言ったらおしまいになるような話ではなく、長期にわたって組織的にコミットするということです。だからこそ政党は重要なのです。長は個人で政党をつくるのはいいが、話をころころ変えるなら、それは政党とはいえません。また、政党をつくっても、個人として勝手なことをするだけであれば、それは安定性という観点から好ましくないでしょう。政党がきっちりしていれば、首長と国会議員の兼務はそもそも問題にならないと思います。

選挙の争点

ー今回の選挙では、何が争点になるでしょうか?
争点は分からないというのが正直なところです。脱原発に関しても、長期的には、原発をなくしていくという方向性は変わりがなく、争点にならないと思います。

「合意争点」という言葉が政治学にあります。方向性についてはみんなが納得していて、どういうふうに変えていくかについて争いがあるという政治的状態を表した言葉です。現在の日本は合意争点が非常に多い。社会保障や外交について、方向性に関してはほぼ争いがないのに、具体的にどうやるかというところで争いがあるわけです。そして、それを有効に有権者に提示できていません。例えば、社会保障に関して、税みたいなやり方をするのか、保険みたいなやり方をするのかといった場合に、税か保険どちらかというのはありえなくて、税的な考えを重視するか保険的な考えを重視するかの問題になってきます。つまり、0か1かという二者択一的な選択はそもそもできなくて、0に向かうか、1に向かうかという議論になるわけです。そのような方向性を決めていく議論というのは有権者に示すのが難しいので、ほぼ合意争点が合意争点として存在しているということしか分からないわけです。

世論調査について

ーマスコミ各社で世論調査の結果が異なっていますが、何が原因でしょうか?
今回の違い方は異常です。今の政党は地域性が強いため、サンプリング (統計調査で、対象となる母集団から標本を抽出すること) をしてうまく捕捉できない可能性が高いのでしょう。まず、どこで調査しているかをはっきり示していないから分かりにくいというのが前提としてあって、サンプル数が大きくなく誤差が出やすい環境にある。そして、聞き方によっても違いがでるでしょう。例えば12個の政党を読み上げるか読み上げないか、「支持政党なし」を選択肢に入れるか入れないかも大きな違いがでるはずです。

個人としては同じような世論調査をする必要があるのかな、と疑問に思います。アメリカでは、大統領選の際に、各州の世論調査が行われ、州毎の結果がでていました。日本では、各県ごとの調査などは行われないわけですよね。サンプルサイズが限られているなら焦点を絞ったほうが精度の高い調査が可能になるでしょう。そういう形で資源を割り振ったほうが意味のある調査ができるのではないでしょうか。同じような調査をして、結果がそれぞれにぜんぜん異なるというのでは、単に有権者にとって混乱を招くだけなので好ましくないでしょう。

From editor

行政学を研究しておられる砂原先生に、12政党が入り乱れ混戦模様を呈してる今回の衆議院選の意義や争点についてご見解を伺った。我が国では、政治の流れは地方分権に向いていて、その表れとして様々な地域政党が出現した。しかし、地域政党同士でうまく連合を組めなかった。その点で、今回の選挙は、地方分権に関して「一回休み」とのことだった。また、地方自治体の首長が国政に関与してくるのも自然な流れのようだ。

そして、従来の世論調査も、現在の政党は地域性が強いという理由から、誤差が出やすくなっており、マスコミ各社で結果が異なっている (参考URL: http://www.realpolitics.jp/research/)。都道府県ごとの調査を行うなど、焦点を絞ったほうがより精度の高い調査になるということだった。政治の流れの変化に、マスコミ側も対応していかなければならないだろう。

このような地方分権への流れの中での選挙。政党が乱立され、争点も入り乱れて、判断基準が難しい選挙になっている。また、「一票の格差問題」という違憲状態のまま選挙戦に突入したように、制度自体に関しても問題がある選挙になってしまっている。先生に、ご自身が投票する際に何を判断基準とするかを伺ったが、非常に難しいということだった。読者の多くも投票に出向くことだろう。一有権者として、そのような状況下でも、自分なりに候補者等について調べ、納得できる投票先を選ぶことで (白票も一つの選択肢かもしれないが) 、自分なりの判断を下すことが必要だ。

文責

鶴木貴詩 (Hijicho)


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