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特集連載 ◇ ブラック企業によろしく (第2回) 〜就活におけるブラック企業〜


「学生たちは、それを「ブラック企業」と呼んでいる。」5月24日の朝日新聞の社説の一節だ。人間を破壊するブラック企業。その魔の手は就活の段階からすでに潜んでいる。ブラック企業から身を守るには「ブラック企業に入らない就活」も重要だ。就活生はブラック企業かどうかを見分ける目を養っておく必要がある。

ブラック企業によろしく。今回は「就活におけるブラック企業」というテーマで見ていきたい。

「人間破壊」のシューカツ

日本の就職活動は、諸外国と比べてかなり特殊と言える。それは、職業能力ではなく、「コミュニケーション能力」という言葉に代表されるような、曖昧で抽象的な基準が重視される、という点においてである。

学生を最もを悩ませるのは「何が採用基準になっているかわからない」ことだ。客観的な基準が無く、職業能力ではなく、人間性や人格で勝負するしかない。そのためにひたすら「自己分析」を迫られるが、採用されなかった学生は自己の内面を全否定されたような感覚に陥る。自分の今までの人生を振り返り、反省し、企業が求めている人材へ変革していくことを迫られる。

就活が順調に進まなければ、今まで自分がいかに怠惰な人間であったかを反省させられ、自分の人生を全否定され、内面の変革を迫られる。大学のキャリア・カウンセラーも「自分を見つめ直せ」などと言って学生を「教育」していく。

若者の労働問題や貧困問題に取り組むNPO法人POSSEが行った調査によると、就活生の7人に1人がうつ状態になっている。(参照:『POSSE』vol.10)

また、コミュニケーション能力のような不明瞭な基準に振り回されると、「これがコミュニケーション能力だ!」という具合に自信満々に言う人が現れると、藁にもすがる思いでそれに飛びついてしまう。悪徳セミナーが、追いつめられた就活生を狙っている。

奨学金とブラック企業

経済的に大学へ進学することが困難な学生のためにある制度が奨学金制度だ。本来なら経済的理由で学業を諦めることを防ぐための非常に有意義な制度である。

しかし、奨学金が学生をブラック企業に送り込むことに一役買っている可能性もある。

日本学生支援機構奨学金は、貸付制であり、卒業とともに返還義務が生じる。簡単にいうと卒業と同時に借金を背負うわけだ。第一種奨学金は無利子だが、第二種奨学金は有利子だ。多い人では、卒業と同時に数百万円の返還義務を背負わされることになる。返還が滞ると「法的手続きにより」強制的に返還させられ、ブラックリストにも載ることになる。

このような状況では、就職先の労働環境に多少の不満があっても、卒業と同時に働き始めなければならない。また、就職先が見つからなければ、とことん労働条件を落として働き口を見つけなければならない。奨学金の性質上、「就職留年」は出来ないからだ。このようにして、奨学生はブラック企業へと就職することになる。

なお、大阪市立大学独自の奨学金には返還義務がない。
(参考:大阪市立大学HP 経済支援制度 http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/education/tuition/financial_aid/index.html)

こんな企業には要注意!

さて、ここまで就活全体におけるブラック企業というものを見てきたが、ここでブラック企業の可能性が高い企業の傾向を見ていきたい。

①「固定残業代制」「みなし残業代制」をとっている
求人広告などで、給与の項目に「固定残業代制」や「残業代込み」という言葉がある企業は要注意だ。例えば「30時間分の時間外労働 (=残業) 分として〇〇円を基本給の内訳とする」というような場合だ。企業からすると、労働者が月に何時間残業していようと、実際に払うのは30時間分だけだという理屈だろう。

しかし、たとえ30時間分の固定残業代を採用していても、40時間の残業をしたことがわかっていれば30時間分の固定残業代にプラスして10時間分の残業代を支払わなければならないし、20時間しか残業していなくても30時間分の固定残業代を支払わなければならない。このように固定残業代は、しっかり運用すれば、実は企業にとってはデメリットにしかならない場合がほとんどだ。それにも関わらず固定残業代を採用していれば、残業代の不払いを目論んでいる可能性が高い。

そもそも固定残業代を適用できるのは、労働時間の管理になじまない企画業務や、会社の監督下に入らない外回りなどの場合に限られている (もっとも、現在は携帯電話の普及で外回りといえども労働時間の管理が出来るのではないかという見解が有力である)。

②離職率が高い
離職率が高い企業も注意した方がいい。特に、入社して数年の若手の離職率が高い企業は、大量に採用しておいて入社後に「選別」をしている可能性が高い。ここでは自己都合退職か会社都合退職かは気にしない方がいい。というのも、形の上では自己都合退職でも、実際は退職強要をされていたりするからだ。 (詳しくは次回掲載)

③年齢層に偏りがある
若手ばかり、年配ばかりという企業にも注意したい。企業の年数にもよるが、それなりに長くやっている企業で若手の社員しかいないというのは、長く働いている人が少ないということだ。同じように、年配の社員ばかりだと、若手がその職場で働こうと思っていない、あるいは働けないと予想できる。

「ホワイト企業」を探せ!

冒頭の朝日新聞の社説のタイトルは「就職先を選ぶー「企業子宝率」も見よう」というものだ。働きやすい職場を選ぶことも、ブラック企業を避ける有効な手段である。働きやすい職場として一般的に言われていることは、有給休暇の取得率が高い、産前産後・育児・介護休暇がとりやすい、といったものだ。厚生労働省のHPや、生協の書籍で販売されている優良企業ランキングのようなものも参考にしてみるのがいいだろう。

(参考:厚生労働省HP 均等・両立推進企業表彰受賞企業一覧 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/kintou/jyusyou07.html)

回避法よりも対処法を

しかし、上に挙げたのはあくまでもブラック企業の可能性が高いというだけで、必ずしもそうではない。上のようなものに当てはまらないブラック企業もある。ブラック企業かどうかは実際に入社してみなければわからないのだ。

また内定をとった学生からすれば、いくらブラック企業の可能性が高いとはいえ、せっかく手にした内定を手放せるかと言うと実際はそう簡単なことではない。企業全体としては優良企業だが、特定の部署だけ「ブラック部署」という場合もある。入社時点では優良だった企業が、数年後に「ブラック化」する可能性もある。

ブラック企業と遭遇する可能性を低くすることはできても、ゼロにすることはできない。人生で必ず一度は遭遇するくらいの気持ちでいた方がいいだろう。したがって、ブラック企業から身を守る対処法を身につけておくことこそ最も重要なことである。

最終回の第3回では「就職先がブラック企業だったら」というテーマで、ブラック企業への対処法を詳しく見ていきたい。

(続く)

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関連記事

ブラック企業によろしく (第1回) 〜ブラック企業問題とは〜 (http://hijicho.com/?p=9146)
ブラック企業によろしく (第3回) 〜就職先がブラック企業だったら〜 (http://hijicho.com/?p=9453)

文責

近藤龍志 (Hijicho)

(追記)
表紙の写真の著書と本文は一切関係ありません。


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