文学部専門科目「表現文化演習Ⅱ」のアーツマネージメント企画「大和川ごみアート」が、3月4日に行われた。住吉区役所の大和川クリーンアップ大作戦で集められたごみを用いて、アートを作るのがこの企画の目的だ。当日はあいにくの雨だったが、立派なアートが完成。なお、予定されていた展示は行われなかった。
写真=集められたごみ (井坂写す)
写真=ごみアート作成中の様子 (井坂写す)
写真=完成したごみアート (井坂写す)
実際にこの企画を進めた学生のうち、仲島希さん (哲学・2) 、伊勢望さん (表現文化・2) 、中村瑠美さん (表現文化・4) 、佐藤公美さん (表現文化・2) に、お話を伺った。(聞き手:島田、井坂)
写真=左から仲島さん、伊勢さん、中村さん、佐藤さん (井坂写す)
地域の方へのアピールに
―前回取材時から今日の本番を迎えるまで、どのように企画を進めてきたのですか。
学外の方々のご協力に助けられました。住吉区役所の市民協働課の方々は、当日の段取りの調整を手伝って下さいました。大阪芸術大学の学生さんには、1月からごみアート作品の作り方など企画全体のアドバイザーとしての協力をしてもらいました。いずれも、住吉区役所で開かれている「わいわいおしゃべりラウンドテーブル」 (以下、「わいおしゃ」) で知り合いました。
―当日を終えての感想は。
雨が降ったことは本当に残念です。それでも地域の方々に見てもらえたことに意味があったと思います。もっと多くの方々に参加してもらえるよう、呼び込み方を工夫すべきだったというのが反省点ですね。特に、看板は作るべきでした。
―ごみアートの今後の展開は。
来年同じ企画をするかどうかは未定です。手伝ってくれていたおっちゃんは、「来年もやってほしい」とおっしゃっていました。もし実施するなら、今回の様子を見てくれた人たちは、参加して下さるのではないでしょうか。来年この授業を受ける学生が違うことをやることになっても、今回で区役所の方や地域の方に認知してもらえたと思うので、今後の連携が容易になったのではないかと思います。
学内外のつながりを構築
―この授業全体の感想は。
交渉力やコミュニケーション力がかなり身についたと思います。普段の授業とは違い、学外の方々とつながることができて、楽しかったです。地域との交流で、市大そのものが急に身近になりました。他方で、学内でのつながりも広がりました。同じ学部でも、コースや回生が違えば交流する機会はほとんどありませんが、この授業ではコースや回生を越えた交流ができました。先生には多くの助言をいただいて、密な交流ができました。
資料を作ったり、区役所の方に電話したりと、いろいろやることが多くてしんどい時もありましたし、時には諦めそうにもなりましたが、今日までやり遂げることができてよかったです。この授業に参加した全員がパイオニアです。他の学部・学科も地域交流のための授業を取り入れて、それらが市大の名物みたいになればおもしろいでしょうね。
―区役所と一緒にイベントをした感想は。
区役所の方々が区民のためにがんばってくれているんだと実感しました。仕事外の連絡にも迅速に対応して下さって、私達の話にしっかり耳を傾けて下さいました。住吉区の区長さんが非常に気さくな方で、良い意味で衝撃でしたね。この企画の成功は「わいおしゃ」のおかげだったと言っても過言ではありません。
受講のすすめ
―この授業を受けるかもしれない後輩へのメッセージをどうぞ。
仲島「ちょっとでも興味があればぜひこの授業を取ってみてほしいです。」
伊勢「文学部のひとつの授業として見ると、多様なアートに触れることで自分が何をしたいのかを考えるきっかけになるかもしれませんね。」
佐藤「自分以外の人の考えに触れられて、自分の幅も広がる機会になります。」
中村「大学に何をしに来たのか、この授業を通して考えてみるのもおもしろいと思います。」
伊勢「Come on!」
地域社会への発信を考えるきっかけに
続いて、授業を運営した文学研究科表現文化学専修の小田中章浩教授にもお話を伺った。
―この授業を開講した経緯は。
学生が受け身ではなく、自発的に動いて作る授業であること、アーツマネージメントの能力を身につけることが目的です。きっかけは、ご自身もアーティストであるアジア都市文化学専攻の中川眞先生が、表現文化コースと共同でこういう授業を作ろうと提案されたことです。もっともこの授業ができる前段階として、「ギャラリーりてら」という学生のボランティア・グループを立ち上げました。これはエイブル・アート、つまり障害を持った方が自立するための手段としてのアートを、文学部の展示スペースで開催するというアーツマネージメントのためのグループです。
実際に授業を行って、気がついたことはありますか。
学生たちは、最初はアーツマネージメントが何なのかよくわかっていなかったようです。しかし実際に取り組んでいく中で、良いチームワークを発揮していきました。市大生はどちらかというと大人しくて引っ込み思案だという印象があったのですが、実際にはまったく違うことがわかりました。特に、最後の追い込みの時期は、授業のない春休みだったのに、何度もミーティングを行って、しっかり準備していたと思います。
今後もこういった形の授業は続けていかれますか。
2012年度も行います。とは言っても、学生の自発性を重んじるので、またごみアートをするかどうかはわかりません。どんな形になるかは学生次第ですね。しかし、今回の企画によってご縁ができたので、これからも別の形で大和川でのごみアートを続けていければと思います。これからの大学に必要なのは、教員だけでなく、学生が中心となって地域社会へ何かを発信できないかと考えること。そのひとつのきっかけを作ったのが、この授業の新しさだと思います。
From Editor
地域との関わり方には様々な切り口がある。今回の大和川ごみアートもそのひとつだ。きっかけは意外と身近で些細なところに転がっているのかもしれない。
文責
島田隼人 (Hijicho)
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(http://hijicho.com/?p=4421)
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