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備えあれば憂いなし!~成年後見制度~


皆さんは、成年後見制度をご存知だろうか。近年の高齢社会において、ますます需要が増加している興味深い制度である。大阪市成年後見支援センターの伊関玉恵さんにその概要についてお話を伺った。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害・精神障害により判断能力が不十分な方を対象に保護・支援するために、法的に権限を与えられた後見人が本人の意思を尊重しながら、本人の生活や財産を守る制度である。本人や四親等内の親族、市町村長などが家庭裁判所に申し立てることで利用可能となっている。
かつては禁治産・準禁治産制度(※注)で判断能力が低下した人の生活や財産管理をする役割を担っていたが、本人の意思を無視した一方的な支援になる傾向が強かった。平成12年の社会福祉法の改正により、福祉サービスの利用が措置から契約に変わり、判断能力が低下していても、本人と事業所が対等な関係で契約を結んで利用者本位の社会福祉を推進していくため、今の成年後見制度が生まれた。
成年後見制度には、『法定後見制度』と『任意後見制度』があり、利用者の残存能力に応じた適切な支援を受けられる仕組みとなっている。前者は本人の判断能力が低下しているとみられる場合に家庭裁判所に申し立てるもので、判断能力に応じて後見・補佐・補助の類型に分かれる。後者は、判断能力のあるうちに行う任意後見契約を結ぶ制度となっている。

後見人の役割

では、後見人は具体的にどのような支援を行っていくのだろうか。後見人は、同意権・取消権・代理権を持っており、本人が行う法律行為の事前チェック、本人が行ってしまった不条理な法律行為の取消、本人の代わりに法律行為を行う事ができる。これらの権利の下、預貯金や年金を管理したり本人に変わって契約を結ぶ『財産管理』や、本人の意思を尊重しながら心身や生活状態に配慮して施設入所契約や入院契約などを本人に変わって結ぶ『身上監護』を行っている。なお、この後見人は家族や親族だけでなく第三者の弁護士や司法書士・社会福祉士などの専門家も務めることができる。

市民後見人活動とは

大阪市には市民後見人のしくみが導入されているのが大きな特徴だ。このしくみは、成年後見支援センターや専門家のバックアップのもと、成年後見制度申し立て件数の増加により後見人のニーズが増加しつくられたもので、一般市民が後見人を務める。誰もが自分の住む地域で安心して暮らせる『地域福祉』の下、同じ市民の視点で利用者を見守り支援している。彼らは約一年間の市民後見人養成講座を経て市民後見人バンクに登録され、家庭裁判所により後見人として選定される。原則として複雑な法律問題や紛争がない事案を担当する。もし、任務中に複雑な事案が発生しても、弁護士などの専門家に相談することができる。市民後見人は年々増加しており、現在市民後見人バンク登録者は206人で、これまでに106件家庭裁判所より選任され、後見人として活動している。
市民後見人を務める方の中には、「なにか人の役に立つことをしたい」、「社会貢献をしたい」という方が多いという。定年後に活動を始める方も多い。支援は週に一回、家族や専門家とは異なる視点で、利用者が日常で困っていることを改善していくためにサポートを行っている。お互い人間なので、すぐに後見人と利用者の関係性を結ぶことは難しいが、時間が経つにつれ信頼関係も生まれ、市民後見人の関係者への働きかけ等を通して、利用者は困っていたことが改善されたり希望したことができるようになっている。市民後見人が週に一回訪れるのを楽しみに待ってくれているのが後見人活動のモチベーションとなるそうだ。

※注 認知症高齢者・知的障害者などの判断能力のない人が、家族の申し立てにより、裁判所から禁治産宣告を出され、法律行為のすべてを否定する制度。戦前の家制度に基づき、家産を守るという観点に重きを置いていた。

From editor

筆者がこの成年後見制度を初めて知ったきっかけは市大の基礎教育科目だった。今、高齢社会が進む中、ひとり暮らしをしている高齢者も多い。また、この制度は高齢者だけでなく身寄りのない知的障害者など様々な面で応用することができる。彼らにとって自分本位で支援を受けられる安心できる制度となっているのではないだろうか。今はまだ学生にとって関わりが薄いものかもしれないが、もし将来自分が適切な判断ができなくなりつつあると感じた時に自分で申請する事もできる。心の片隅において頂いて、必要となった時の一助としていただければ幸いである。

文責

桑原 柚 (Hijicho)


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