大阪市立大学の1号館1階北西・研究支援課分室内に、「女性研究者支援室」がある。
この支援室は、平成24年に発足し、平成25年10月より大阪市立大学が文部科学省科学技術人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業 (一般型) 」の事業機関に指定されたことで、本格的に始動した。
女性研究者支援室は、出産や育児、介護などのライフイベントなどで研究を続けるのが困難な女性研究者やその周囲の人に対して、男女共同参画にかかわる支援を行う機関だ。
その取り組みの一つが、「女性研究者ネットワークシステム」である。このシステムの大きな目的は、ライフイベントを抱える女性研究者へ、研究支援員を適切に配置する支援制度のマッチングを円滑に行うことだ。この支援員制度では今年の9月からは、常勤の教員だけでなく非常勤の教員や研究者にも支援員を付けられるように制度が変えられた。女性研究者を中心としたポータルサイトにて支援員・女性研究者・女性研究者支援室の三者間のネットワークシステムが整備され、支援員を求めている研究者と支援員候補者である若手研究者や研究者志望の学生のマッチングや上記3者に加えて本女性研究者支援事業にかかわるすべての協力者とSNSを通じた情報交換の場としても運営されている。
また、女性研究者支援のためのシンポジウム、大学生を対象としたセミナー、これから研究者を目指す高校生向けの進学相談会などの企画も行っており、次世代育成にも力を入れている。オープンキャンパスでの現役理系女子学生らによる進学相談会では50人を超える来場者があった。
日本の女性研究者比率は、先進国中ワースト1である。女性研究者の立場が弱い理由は、研究者自体が少ないことと研究職への理解が乏しいことが背景にある。また、女性が子供を産んだ後に研究の世界に戻ってくることは、まだまだ当たり前ではない。研究職は、社会に出るのが早くとも27~28歳になり、その後30代にかけて論文執筆や学会発表などの研究業績を上げなければ安定した職に就き、継続的な研究を行えないが、研究に力を注ぐべき時期と結婚や出産の適齢期が重なっており、両立できず研究を辞めてしまう女性研究者が少なくないという。また、家族介護の中心的な役割も女性に託されているのが現状である。一度研究職を離れても、いつでも戻ってこられる環境を整えることが必要になってきている。
支援室でコーディネーターを務める関澤彩眞 (あやみ) さんにお話を伺った。
写真=関澤彩眞さん
―コーディネーターとは何をしているのですか?
私は「女性研究者ネットワークシステム」のSNSの整備や管理と、広報冊子の制作、次世代育成イベント等をメインに行ってきました。
コーディネーターの役割は、学内外でのコネクションを作っていき女性研究者支援に向けて調整を行うことです。男女共同参画を支援している大学は他にもあり、それらとコネクションを作っていくこともコーディネーターの役割です。
―これまでのキャリアとこれからのプランは?
私は大学院より大阪市立大学理学研究科前期博士課程に進学し、平成25年6月に同研究科の後期博士課程を卒業しました。同年10月より大阪市立大学女性研究者支援室のコーディネーターを務めています。
平成26年10月でコーディネーター職を退職し、11月より琉球大学のポスドク研究員として働く予定です。
これまで大学院では動物行動学を専門とし、ウミウシの繁殖行動の研究を行っていました。琉球大学に移ってからはサンゴの環境実験を行う予定です。
―今後の目標はありますか?
私の専門分野でも若手の女性研究者は少ないですが、研究を続けていければと思っています。ライフイベントと両立できるかはまだ分かりませんが、研究の世界で活躍できたら嬉しいですね。
―市大生にメッセージをお願いします。
私は好きなこと、やりたいことができています。研究者はまだまだ一般的にはあまり理解が少ない特殊な専門職で、女性の研究者となるとさらに人口も少なくなります。就職志望の多くの同級生たちと卒業時期が違い、さらには研究が忙しくて卒業旅行や卒業式に一緒に参加できなかったりと、些細なことですが寂しい思いをしたこともあります。ですが、その分この道でしか得られなかった経験もあります。
どの道でも、その道なりの苦労があり、その道でしか得られない楽しみや喜びがあります。たとえ人と違った道を選んだとしても諦めずに、自分の望む道に進んでほしいなと思いますね。
大阪市立大学女性研究者支援室HP
http://www.wlb.osaka-cu.ac.jp
ワークショップのスキルが得られる学生向けワークショップセミナー、研究職を目指す学生向けの他大学や他分野の研究者との交流会など、各種イベントを主催しています。
また、支援員制度には、文系、理系問わず誰でも登録することができます。
支援室HPにはイベントのお知らせやインタビューなど随時更新されますので、ぜひご覧ください。
文責
長澤彩香 (Hijicho)
この記事へのコメントはありません。