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コラム日本 vol.6 おせちと向き合う


まずはクイズを一つ。次に挙げる食材が入っている料理は何であろうか?
伊達巻、栗きんとん、黒豆、昆布巻、田作り、数の子・・・もうお分かりだろう。ズバリ「おせち料理」である。今回はお正月に必ず見かけるおせち料理に注目していく。

おせち料理の由来

現在、お正月に食べるお祝いの料理をおせち料理と言っているが、その起源は古く、弥生時代といわれている。当時は、自然の恵みや収穫を神様に感謝する習慣が存在しており、「節供 (せっく) 」と呼ばれる神様にお供えされたものを材料とする「節供料理」が人々の間で食べられていた。現在のおせち料理の始まりはこの「節句料理」なのである。時が進むにつれて中国から節句の行事が伝わると、宮中では元旦や五節句 (注) の宮中行事の際に「節会 (せちえ) 」と言われる宴が催されるようになった。節会で神様に供えたり、振る舞われた料理を「御節供 (おせちく) 」と呼び、その後省略されて「おせち」と言われるようになった。江戸時代になり、庶民が宮中行事を生活に取り入れるようになるとおせち料理は全国的に広がった。また、1年の節目で一番大切なお正月に食べる料理をおせち料理と呼ぶようになったのもこの頃である。おせち料理を漢字で「御節料理」と書くのも納得できるのではないだろうか?

※注:五節句
 1年に5回ある季節の節目の日 (節日) のこと。
 1月7日 (人日)・3月3日 (上巳)・5月5日 (端午)・7月7日 (七夕)・9月9日 (重陽) を指している。

おせち料理の意味

おせち料理には多くの料理が入っており、それぞれに意味を持っている。おせち料理の基本は祝肴、口取り、煮しめ、酢の物、焼き物である。

祝肴 (いわいざかな)

・数の子
数の子はニシンの卵。ニシンは卵が多いので、子宝や子孫繁栄を願う縁起物として食べられている。

・田作り
田作りという名前は、田を作るというところに由来している。また、いわしの肥料を使った田んぼが豊作だったところから別名ごまめ (五万米) とも。豊作を祈願する食べ物である。

・黒豆
黒色は道教で魔除けの色とされている。この一年まめ (まじめ) に働きまめ (健康) に暮らせるようにと邪気を払い、無病息災を願った食べ物である。

・たたきごぼう
ごぼうは、地中深く根を張るので家 (家族・家業など) がその土地にしっかりと根を張って安泰にという願いが込められている。

口取り
・紅白かまぼこ
かまぼこの形 (半円状) が初日の出の形に似ていることから用いられる。赤色は魔除けを、白色は清浄・神聖を表す。また、紅白で縁起が良いとされている。

・伊達巻
伊達巻の形が巻物に似ていることから文化の発展または、学問や習い事の成就を願う食べ物である。

・栗きんとん
きんとんは漢字で金団と書く。その字の通り金の団子つまり金銀財宝を意味し、金運を呼ぶ縁起物である。

酢の物

・紅白なます
紅白の色は水引を表しており、平安と平和を願う縁起物である。

・ちょろぎ
ちょろぎは「長老木」「長老喜」「千代老木」「長呂貴」といったおめでたい漢字が当てられ、長寿を願う縁起物として食べられる。

・酢蓮
たくさんの穴があることから将来の見通しがいい (先見性がある) という縁起を担いだ食べ物である。

焼き物

・海老
曲がった海老の姿を人にたとえて、腰が曲がるまで長生きしますようにと長寿を祈っている。

・ぶり
ぶりが成長と共に名前が変わる出世魚であるため、出世を願っている。

・鯛
「めでたい」の語呂合わせから用いられている。

・うなぎ
おせち料理にうなぎが入るようになったのは、ごく最近のことである。うなぎのぼりにあやかって、出世を祈願している。

煮物

・昆布巻き
こんぶは「養老昆布」=「よろこぶ」で不老長寿とお祝いの縁起物。「子生 (こぶ) 」の字をあてて、子孫繁栄を願うものでもある。

・煮しめ
根菜を中心とした野菜などを一緒に煮た煮しめには、家族が仲良くいっしょに結ばれるという意味がある。

上記のように、おせち料理に入っている料理には様々な意味が込められている。このような意味を知ることによって、もっと楽しくおせち料理を食べられるのではないだろうか。

おせちと向き合う

近年、おせちの宅配がメジャーなものになっている。高級老舗店やホテルとコラボ、などと銘打ったおせちが数多く販売されている。
手軽な値段で買えるおせちや一人用の食べ切りサイズのおせちなども流行しており、時代のニーズに即して考えられている。中身も先ほど述べたような縁起をかついだ食材を使ったものばかりではなく、創作料理や洋風料理、中華料理など多彩である。

ところで、おせち料理には、保存食としての意味合いもあると言われている。
昔は元日から開いているスーパーマーケットなどはなかったため、年末のうちに大量の食材を買い込み腐らないように調理していたのだ。また、毎日忙しく家事をこなすお母さんも休めるようにするためともいう。
伝統的なおせち料理は、味の濃い煮しめや、殺菌効果のある酢でしめた酢の物など、防腐効果があり保存のきく料理が揃えられている。そして、重箱なら1食では食べきれない量の料理がぎっしりと詰められているはずだ。毎日仕事に行くお父さんも毎日家事をするお母さんも、ゆっくり休んで家族団欒の時間を持てるのがお正月であったのだ。

今はどうだろう。24時間営業のコンビニエンスストアは元日の真夜中でも営業している。デパートでも、昔は初売りといえば3が日 (正月の元日・2日・3日の3日間) を過ぎた頃から始まるものだったが、現在はその多くが2日から初売りを掲げ福袋を売っているし、中には1日から通常通り開店する店もある。24時間365日同じ暮らしができるという面では、先に述べたような保存食としてのおせち料理の意味合いは不要になってしまった。この生活は、便利である一方、その裏で休みなく働いている人がいることも事実である。読者の皆さんの中にも、大晦日も正月もバイトに勤しむ予定だ、という人もいるだろう。以前の、年末年始に休みがある生活に憧れても、一度便利な暮らしに慣れてしまうと戻ることが難しくなってしまうのも事実である。

時代によって、おせちの文化やお正月の意義など、伝統が変化していくのは当然のことであろう。現在は共働きの家庭も多いが、その中でも気軽にお正月の気分を味わうためのツールが宅配おせちなのかもしれない。
大学生に即して考えれば、1人暮らしかどうかによっても左右されるだろうし、各家庭によっても色々な過ごし方があるだろう。冬休みは稼ぎ時だと考えている人もいるだろうし、ゆっくり帰省するチャンスだと思う人もいるはずだ。だが、家族と時間を過ごす、というのも大学生のうちしか出来ないことかもしれない。
何が正しい、何が悪いということはないが、「おせち」の名前の由来にもなっているように、年に一度の節目の時期として、普段の生活を見直す機会にしてみてはいかがだろうか。みなさんは、来たるお正月をどのように過ごすだろうか?

参考URL

いい日本再発見 「おせち料理の由来は?どんな意味があるの?」
http://ii-nippon.net/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%A2%A8%E7%BF%92/1166.html

便利!わかりやすい!冠婚葬祭マナー 「御節料理」
http://www.jp-guide.net/manner/ao/osechi.html

文責

山原怜太朗 (Hijicho)
長澤彩香 (Hijicho)


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