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ブラックバイトに気をつけろ!


今やほとんどの人が一度は耳にしたことのある言葉、ブラック企業。最近では、そんなブラック企業に次ぐ新たな言葉が見られるようになってきた。それが「ブラックバイト」である。

ブラックバイトとは、違法・無法な働かせ方をするアルバイトのことであり、2013年に中京大学の大内裕和教授が提唱したことでその言葉が知られるようになった。違法な長時間労働の強要、厳しいノルマ制度、低賃金・ただ働きといったような労働を強いることが問題となっている。
では、なぜ最近になってこのような問題が騒がれだしたのであろうか?以下では、学生アルバイトの中でも特に大学生に注目してその原因を考える。

―社会的背景

単純に言えば、国内の経済状況の悪化である。

より詳細に言うと、まず挙げられるのが不景気による人件費の削減を要因とする、非正規雇用の拡大だ。現在の非正規雇用の比率は4割近くにも上り、職場における正社員と非正社員の割合は昔と大きく異なっている。そのため本来は正社員が担うような業務を、アルバイトに任せるといった状況が多くなっているのだ。
また、非正規雇用の中でも特にフリーターの増加は、学生の1つのアルバイトへの固執を助長する一因でもある。学生よりもシフトの自由が利くフリーターが増えると、学生のアルバイト採用が困難になるのである。実際に今の学生はアルバイトの面接に落ちることも多くなっており、今のアルバイトを辞めてしまうと収入が危うくなるのではと危惧する学生も多い。そのため、辞めたくても「辞めさせてもらえない」ブラックバイトの状況とは別に、ブラックバイトであるのに「辞められない」状況も生まれているのである。

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また、国民の所得減少も大きく影響している。近年の経済悪化による所得減少で、下宿生への仕送り額が低下しているという事実がある。下記に示した表の、東京地区私立大学教職員組合連合による私立大学新入生の家計負担調査によると、2012年には下宿生への平均仕送り金額が過去最低金額を更新した。第49回学生生活実態調査では、2013年には下宿生への仕送り平均金額が増加したものの、依然としてピークとされる1990年よりもその額は大幅に少ない。これにより学生がアルバイトで賄わなければならない生活費が増加し、学生のアルバイトへの依存が高まっているのである。

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―学生の優先順位の変化

学生の本分と言えば、もちろん学業である。しかしながら、近年では特に学生本人の中でそういった概念が揺らいでいるように感じられる。つまり、学生自らが授業よりもアルバイトを優先している面があるのだ。
これはブラックバイトで働いている者に限らないが、夜遅くまで働いて午前の授業に遅刻する、アルバイトがあるために授業を途中退出するといった光景をしばしば目にする。また、無理なシフトに不満を抱く一方で受け入れているように見える者もいる。こういった学生自身の行動が、ブラックバイトの増加を助長するのだ。

学業の優先順位の低下とはつまり、大学で勉強することの価値が学生の中で下がったということである。では、なぜその価値が下がってしまったのだろうか?

まず言えるのは、大学の増加により大学進学が容易になったことである。2013年度時点で日本の大学進学率は50.8%と、およそ日本人の2人に1人が大学に進学するといった状況になっている。そのため、大学まで進学して勉強できることの貴重さがあまり感じられなくなっていると言える。
また、アルバイトの方がより自分の存在意義を感じられるというのもある。大学の授業は休んでも何も言われない。大人数の授業ならば、そもそも休んでいても分からないといった状態である。そんな大学とは違い、アルバイトは1人休めば業務に支障が出るし、過剰な労働や責任を課せられることは、裏を返せばその職場にとってそれだけ自分が重要である、または必要とされているともとれる。

以上のように、現在では大学での勉強よりもアルバイトにより価値を見出すしやすくなっている。しかしながら、大学での勉強は社会で自らの能力を発揮するための重要なプロセスであり、あくまでアルバイトはそんな大学生活を送る手段の1つである。何のために大学に来ているのか、また、何のためにアルバイトをしているのか、もう一度じっくり考える必要があるだろう。

―ブラックバイトに打ち勝つ

これまでブラックバイトが増加していることについて述べてきた。そんなブラックバイトをなくすための取り組みは、すでに各所で行われている。
例えば、日本共産党は今年6月2日に「ブラックバイトから学生生活を守ろう」という政策提言を発表し、ブラックバイトをなくすための取り組みを意欲的に行っていく旨を示した。
また、北海学園大学経済学部の川村雅則准教授のゼミでは、2011年度から毎年アルバイトの実態に関する情報収集を行い、アルバイト白書作りに取り組んでいる。この白書は年内に聞き取り調査の結果のほか、労働契約書の見方や労働法規の基礎的知識などの内容も盛り込んで完成させる予定である。
その他にも大学生を中心としたユニオンなどを結成しているところもあり、ブラックバイトに対抗するための活動は着々と広がっている。

ブラックバイトには、まだ法規制の範囲以外には公的なペナルティが設定されているわけではない。そのため未だ処置が不十分な点が多々ある。
また、明確な違法行為を行っているわけではないが、それまがいのことを行っている、いわゆるグレーゾーンも多く存在する。その代表的例が、アルバイトに業務やその他の面で過度の責任を課すといったものである。働くうえである程度の責任感は必要であるし、重要な仕事を任されることで同時にやりがいを得られることもある。どこからが”過度”であるのか、その線引きは曖昧であり一人一人異なるものだ。よって働いている本人も自らの労働状況が異常なものであると気づき難く、雇用者側も無自覚なケースすらある。そういったものの規制はさらに難しく、対処のしようがないというのが現状であろう。
ここで重要となってくるのが自己、あるいは他者の「冷静な目」である。学生とは何であるか、それに見合った業務とは何であるか。まだ認知され始めたばかりのブラックバイトであるからこそ、その発見と対処には殊更「冷静な目」が必要となってくる。皆さんもこの機会に自分、あるいは知人や友人のアルバイト先の雇用状態を見つめ直してみてはいかがだろうか。

【参考URL】

「日本共産党」
http://www.jcp.or.jp/
「全国大学生活協同組合連合会」
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
「不動産ジャパン」
http://www.fudousan.or.jp/topics/1305/05_1.html
「an report」
http://weban.jp/contents/an_report/repo_cont/pro/20140303.html
「47 news」
http://www.47news.jp/CN/201402/CN2014021801002856.html
「日本経済新聞」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1203R_S3A710C1EA1000

文責

 大塚成美 (Hijicho)


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コメント

    • 筒井 正
    • 2014年 7月 09日

    学生生活に大きく関係する問題、じつはそれは個人というより、社会的な問題であることが多いと思うけど、そういう課題に正面から挑み、議論を投げかける記事だと思う。こういうみんなの問題意識を正面から刺激する記事、歓迎ですね。

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