HijichoのLINE公式アカウント
友だち追加数

クリスマスwith明王~煩悩を消し去りたい君へ~


仏様に迫ってみよう

冬の到来を感じる季節になってきた。街はイルミネーションに彩られ、どの店に入ってもBGMはクリスマス一色で赤や緑の色合いのグッズもよく見かける。クリスマスシーズンに突入した街は明るく活気がある。祭り好きで年中楽しく騒ごうとする国民性をもつ日本人は色々な外国のイベントも輸入してそれにかこつけお祭り騒ぎをしたがる。このクリスマスもそうだろう。

しかし、クリスマスは楽しいものだが、それに比例して煩悩も多くなる。気になるあの子をデートに誘いたい、あわよくば雪の降る夜に雰囲気のいいイルミネーションの下で…等、人間欲望は尽きないものだ。中には最初からその煩悩を断ち切りたいと願う人もいるのではないだろうか。そのような人にお勧めなのが仏、特に煩悩を破壊する明王である。

1年も終わりに近づいている今、この明王特集で次から次へと襲い来る皆さんの煩悩を焼き払う手伝いが少しでも出来れば幸いである。

仏/明王とは?

仏とは、仏教における最高の存在であり、完全な悟りを開いた聖者を意味する。一般的には、下記の菩薩や明王、天部も含めて、広義の解釈として「仏」と総称する。仏を分類すると以下のようになる。

・如来…悟りを開いた者、真理に到達した者

・菩薩…悟りを開くために修行し、如来になろうとしている修行者。

・明王…人々の煩悩などをを取り締まり、仏の教えに導く者

・天・天部…光り輝く者、仏教と仏法の信仰者を守る者

明王は、密教特有の仏尊で、人間界と仏の世界を隔てる天界の「火生三昧」と呼ばれる炎の世界に住し、人間界の煩悩が仏の世界へ波及しないよう、聖なる炎によって煩悩や欲望を焼き尽す仏である。また、大日如来 (密教の最高仏) の命を受け、仏教に帰依しない民衆を、何としても救わんとする慈悲の怒りを以て、目覚めさせ、帰依させる役割をもつ。そのため、仏の教えに従順でない者たちに対して忿怒 (ふんぬ:激しく怒ること) の相で火炎を背負い、髪は怒りによって逆立ち、武器などを手に持った恐ろしげな姿形を現している。

様々な明王が存在するが、今回Hijichoでは、いくつかの個性溢れる明王をピックアップし紹介していく。

不動明王 (ふどうみょうおう)

不動明王という名前を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。特に大阪では道頓堀にある法善寺で奉られている不動明王が有名だろう。水掛不動さん、お不動さんと呼ばれ広く親しまれている。

不動明王は破壊と救済の仏だ。口から犬歯が飛び出し、額にはしわを寄せ、目は大きく見開いて強烈な怒りを表す顔は大変恐ろしいが、煩悩を倒すには強烈なエネルギーが必要であることが伺われる。纏う智恵の炎で煩悩を焼き尽くす一方、仏教を信ずる人をとことん救済する性質を持っているので、あなたの煩悩も焼き切ってくれることだろう。

愛染明王(あいぜんみょうおう)

しかし、怒りながら煩悩を倒すのなど面倒だと思う方もいるだろう。そんな人にお勧めなのが、不動明王とは違ってその煩悩のエネルギーを逆に仏の悟りに変える力を持つ愛染明王である。

人間は生きている限りずっと欲を持ち続けるものなので、そもそも煩悩を完全に捨て去ることは難しい。ならばその欲をエネルギーとして活用しようということだ。愛染明王は煩悩は人間を滅亡へと駆り立てる力を持つ反面、時には生きていくうえでの活力源ともなり、己を高める力も秘めていると考える。愛欲煩悩を押さえつける必要がないことを示し、愛を成就させてくれると言われている。私たちに優しい明王と言えよう。

さて、今回ふたつの異なる明王を紹介してどちらに祈るか迷ってしまったのではないだろうか。実は、同時にこのふたつの明王を拝むことが出来るのである。不動明王と愛染明王の二つの顔を持った「両頭愛染明王」をここで紹介しよう。紅白の二つの顔を持ち、左が怒りの顔で赤く、右が慈しみの顔で白である。持ち物は単体の時と変わりはない。

煩悩を切り捨てるのが理であるなら、煩悩を抱え込んで昇華させるのは情と言えるのではないだろうか。理想は理と情と分けるのではなく、その両者が合体したものであり、それが完璧な状態である。その完璧な姿を現したのが、この両頭愛染だ。

理想と愛情の狭間に悩む方、どちらのおいしいところも捨てられない・・・と悩んでいる方は、この両頭愛染を拝むといいだろう。

烏蒭沙摩明王 (うすさまみょうおう)

烏蒭沙摩明王(うすさまみょうおう)は、火の仏である。この明王は悟りを開く時に、全ての不浄を浄に変えて、諸悪魔を退治すること誓った。このためこの世の一切の功徳を焼き尽くす功徳を持つ。特に有名な功徳として便所の清めがあり、「トイレの神様」として古くから人々に親しまれている。昔から便所は「怨霊や悪魔の出入口」と考える思想があった。現実的に不浄で怨霊の侵入箇所と考えられていた便所を烏蒭沙摩明王の炎の功徳で浄化しようという信仰が広まり、今に伝わっている。また、この明王は胎内にいる女児を男児に変える超能力があるとされ、男児を求めた戦国時代の武将たちの間で広く信仰されていた。

降三世明王 (こうざんぜみょうおう)

降三世とは「三千世界の支配者シヴァを倒した勝利者」を意味する。過去、現在、未来の三世における、 貪欲・瞋恚(しんに:自分の心に逆らうものを怒り恨むこと。)・愚痴の三煩悩を取り除いてくれるとされる。

大きな特徴として、降三世明王は彫刻や絵画において、左足下に大自在天 (シヴァ神)、右足下にその妃である烏摩妃 (パールヴァティー) を踏んでいる。シヴァは「過去・現在・未来の三つの世界を収める神」としてヒンドゥー教の最高神として崇拝されていた。しかし、大日如来は、シヴァをヒンドゥー教から仏教へ改宗させるため、配下の降三世明王を派遣し、シヴァとパールヴァティーを降伏し、仏教へと改宗させた。降三世明王は「異教とはいえ神を倒して踏みつけている」という点で異彩を放つ仏である。

五大明王 (不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王から成る) のうちの一尊で、単独では祀られない。関西では京都の東寺で、彫刻として他の明王と共に祀られており、国宝に指定されている。

編集後記

いかがだろうか。

日本人は無宗教だと思う方もいるだろうが、一般には古来より先祖信仰や神道、仏教、儒教などの教えが長い年月をかけて気質となっていったと言われている。改めて自覚することは少なくとも、私たちの生活にはそれらが根付いているのだ。除夜の鐘も煩悩を取り除く日本の慣習として有名だ。

人間は生きている限り煩悩が尽きることはない。特に1年を締めくくる師走の時期はこの1年の煩悩を思い返し、埋まりたくなる夜も多くなるのではないか。しかし忘れないでほしい。人間の煩悩を必死の形相で焼き払おうとしている明王がいることを。そして彼らが私たちの生活に根付いていることも。

今回取り上げた他にも様々な面白い明王がいる。

今年のクリスマスは明王とともに過ごすのもまた一興かもしれない。

文責

石原奈甫美 (Hijicho) (担当:烏蒭沙摩明王・編集後記)
鶴木貴詩 (Hijicho) (担当:降三世明王・仏/明王とは?)
細原千尋 (Hijicho) (担当:不動明王・愛染明王・仏様に迫ってみよう)

参考URL

不動明王
・参考URL:明王と天
・参加URL・画像:不動明王

愛染明王
・参考URL・画像:愛染明王

両頭愛染明王
・参考URL・画像:両頭愛染明王

烏蒭沙摩明王
・参考URL:烏枢沙摩明王 「仏像ワールド」
・参考URL・画像:烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)とは 「烏枢沙摩明王ネットワーク うすさま.net」

降三世明王
・参考URL:降三世明王 「仏像ワールド」
・参考URL:e国宝 重要文化財 絹本著色五大明王像
・画像:降三世明王 平安時代の仏像図集『図像抄』(十巻抄)


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Hijicho on Twitter

ページ上部へ戻る