2億1800万。この膨大な数字が何を意味しているか分かるだろうか。2013年10月時点における全世界でのTwitter利用者数である。
Twitterとは代表的なSNS (Social Networking Service) のひとつである。140文字の制限のなかツイートと呼ばれる投稿を行うことで、他者とコミュニケーションを行うツールだ。2006年7月にサービスを開始して以来、日本でも少しずつ浸透していき、あるネット調査では日本の大学生のおよそ7割がアカウントを持っているという結果も出ている。(参考URL:http://netpr.jp/trend/overseas/3556/)
友人や知人の近況を簡単に知ることができ、自分のツイートに素早いレスポンスがつくTwitterを大阪市立大学の学生も多く使っていることだろう。そのような情報通の方ならTwitterの「炎上騒ぎ」にも覚えがあるかもしれない。それまでも殺害予告や著作権法違反自慢等で炎上は頻繁に起こっていたが、記憶に新しく、また多くの人に情報が拡散されたのは以下の事件だろう。
2013年7月、高知県内のコンビニ店員が店内のアイスクリームケースの中に入った写真を、ネット上に掲載し大炎上した。発覚後、即時にアイスクリームケース及びアイスクリームを撤去・処分したが、最終的に店はコンビニとのフランチャイズ契約を解除されることとなる。被害は大きく、また行為自体やTwitterに画像をあげる愚かさへの非難の声も大きかった。しかし、この後も模倣犯は後を絶たなかった。逮捕者が出たのはその2ヶ月後である。
2013年9月4日、19歳男性が器物損壊罪で書類送検された。大分県のスーパーでアイスクリームケースにダイブした写真をTwitterに投稿したからだ。このスーパーはアイスクリームを全て撤去し、該当アイスクリームケースでの販売を中止した。男性は「悪ふざけでやった」と供述していると言う。
この件はTwitterで犯罪行為画像をアップロードした最初の事件である。ただ、これだけ騒ぎになり逮捕者まで出ていても事件は終わっていない。Twitterで犯罪行為画像による書類送検は9月から始まり10月18日時点までで6件にも及ぶ。なぜTwitterでここまで後先考えない行動を公開するのだろうか?
補足
フランチャイズ=親業者が契約店に与える一定地域内での一定販売権。
投稿までのプロセスが極端に短い
Twitterのキャッチコピーは「いま、なにしてる?」というものだ。自分が何をしているかリアルタイムで伝えられることが魅力と言える。ただ、ブログのように記事のタイトルの設定や投稿のプレビューもないため脊髄反射的に行動や思考を公開してしまい、発言者が自分の発言のリスクについて考える時間や機会が殆ど無いと言える。
「知り合いしか見ていない」という思い込み
Twitterには「鍵」と呼ばれる非公開モードがある。これは承認されたフォロワーだけがその人のツイートを読めるものである。しかし非公開モードにしてTwitterを利用してる人ばかりではない。
実名で登録する必要がないTwitterで名前は変更していたとしても、誰からも見える公開状態で自分の顔写真や出身・在学校、身近なことを書き込んでいる人も多くいる。そして友人や知人以外に読まれると危険なことでも平気で書いてしまう事例がよく見られる。
Twitterはリアルタイム検索もあるし、フォローしなくても公開アカウントのツイートは誰でも見ることはできるのだ。「友人・知人以外見ていない」というのは幻想である。だからこそ「見られていないだろう」という感覚は、落とし穴なのである。
また、非公開アカウントから投稿した写真が、ネット全体に公開されてしまうケースもある。「Twitpic」や「yfrog」「Lockerz」など、Twitterと連携した写真投稿サービスを使用した場合だ。これらのサービスは、非公開設定が適用されないため、誰でも見れる状態になってしまう。
「リアルタイムフィードバック」の快感
Twitterは自分の気に入ったツイートに星マークを付けて残しておく「お気に入り(Fav)」や、他アカウントのつぶやきに共感したり情報を拡散したいと思った時そのツイートを自分のアカウントで再投稿できる「リツイート(RT)」の機能がある。
利用者がツイートを投稿した際、投稿直後からフォロワー、ひいては全アカウントによるFavやRTなどの反応が行われる。この反応が人の冷静さを乱すことは実によくあることだ。人間誰しも目立ちたがりの部分がある。他者からのより大きな反応を求め、ウケ狙いの過激な発言をしてしまうこともあるのではないだろうか。また、画面を挟んで全世界の人間と通じていることを忘れがちなネットだ。「自分の知り合いしか見ていない」という感覚の中では、少し過激な発言をしても問題は起きないだろうと思い込む人も多いだろう。それが結果、大炎上に繋がるのである。
結論
Twitterは手軽なコミュニケーションツールである。ただ、自分が思っている以上に開かれたツールであることをきちんと理解しなければならない。失言しやすく、またその失言が拡散されやすい構造であるTwitterは、使い方を間違えれば自分に牙を剥くものである。利用者の急増によりネットの危険性を十分に分かっていない人間が使えば、自分にほど遠いと思いがちな「逮捕」も実はすぐ近くに潜んでいるかもしれない。
Twitterのネット上での蔑称はご存知だろうか。「バカ発見器」「バカッタ—」だ。お手軽なコミュニケーションを楽しむだけでなく、「知らない人に見られているかもしれない」「この発言は問題かもしれない」という想像力は欠如してはならない。
「お手軽・簡単に発言できる」は「お手軽・簡単に失言できる」ということだし、「情報がリアルタイムで一気に拡散していく」は「炎上ネタもリアルタイムで一気に拡散していく」になってしまう。我が大学の学生のアカウントが炎上しないことを願うばかりだ。
文責
細原千尋 (Hijicho)
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