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学生自治の砦揺るがず 〜京都大学吉田寮食堂問題〜


京都大学による吉田寮A棟建設とこれに伴う吉田寮食堂(※1)の取り壊しを巡り、京都大学と吉田寮学生自治会との交渉が4月23日に持たれた。この件に関しては、大学側が4月19日に交渉打切り(※2)を一方的に通告したものの、23日に開かれた「説明会」では批判が殺到し、24日未明、赤松明彦・副学長兼学生担当理事が食堂取り壊しの撤回と交渉継続を正式に確約した。

交渉の概略

京都大学新聞によると、赤松副学長が4月19日付けで自治会側に提出した「旧食堂の取り扱いと吉田寮新棟の建設について」という文書で「このままでは吉田寮食堂の老朽化対策が具体的に進まない。その結果として取り返しのつかない事態は避けなければならない」と主張し、今後交渉は行わない旨を自治会側に通告した。

これに対し自治会は「当事者の意向を無視した一方的な決定」と批判。自治会は09年4月から断続的に当局と交渉を続けてきており、食堂の補修を要求してきた経緯から、吉田寮食堂の取り壊し強行および交渉拒否に反対する旨を発表していた。

23日の午後7時から開かれた「吉田寮食堂取り壊しに関する説明会」の会場には、立ち見が出るほど大勢の関係者らが集まり、開始直後から赤松副学長および大学当局に対する厳しい批判が相次いだ。

赤松副学長は、吉田南最南部地区再整備計画という名目で27億円の予算が獲得できている第2期中期目標・中期計画期間内に予算を消化する必要があることを繰り返し強調した。これに対し自治会は「当局側が提示した工程表ではそもそも第2期中期目標・中期計画期間内に間に合わない。一方自治会側が提示する補修案を採用すれば工期が大幅に短縮でき、予算も安く済む」と指摘。また「建設に合意ができるまで予算はとるなと主張してきた。その際大学側は、予算は他のことにも使えると説明していた。今回、予算を理由に交渉を打ち切るのは不当だ」と反論した。

すると赤松副学長は「 (自治会側の提案では) 寮生の定員を十分確保できない」と主張。これに対し自治会は「 (取り壊しの当初の目的は)『寮生の生命・安全を守るため』と当局は言っていたはずだ」と批判。さらに「1988年に吉田寮西寮が一方的に撤去されて以来、 (定員増は) 自治会側から一貫して求めてきたものだ」と反論した。また「 (食堂を含む) 現寮を補修した上でA棟(※3)を建てても、当局の主張する定員は十分確保できる案を提出しているにも関わらず、大学側はこれを無視しており納得できない」と追求。最終的に赤松副学長は24日午前3時半過ぎに、食堂取り壊し決定の撤回と交渉継続を文書で確約した。

今回は自治会側の「勝利」に終わったが、あくまで食堂取り壊し決定が撤回されただけで、今後も交渉は続く。吉田寮および吉田寮食堂の今後の動向に注目したい。

解説

※1 吉田寮食堂
京都大学吉田寮とは、1913年に建設された、現存する日本最古の学生寮である。学生自治会により運営され、1970年代以降、寄宿舎・学生寮を廃止する全国的な流れがあったにも関わらず、学生らの反対運動により現在も存続している。

吉田寮の食堂はかつて寮生らの食生活を支えていたが、現在は食堂としての機能を有していない。しかし、食堂は交流や文化的活動の場として長く使用されてきた。現在も劇団やバンドなど多くのサークルなどが吉田寮食堂を利用しており、月に数回は公演が行われている。

※2 自治会との団体交渉
吉田寮に関しては、1950年代以降、大学と自治会が団体交渉に基づく合意により決定するという体制が続いていた (確約団交体制) 。過去にはこの体制が崩れかけたことがあったものの、現在でも確約団交体制は維持されている。今回赤松副学長が「今後交渉を行わない」とする旨を通達したのは、この確約団交体制を否定するものとして自治会としては到底認められるものではないと言える。

※3 吉田寮A棟
吉田寮A棟とは、吉田寮西側の空き地を利用して追加で建てられるかもしれない吉田寮の新棟のこと。大学側は、A棟を建設してそこに現寮生を移住させ、現寮を建て替えることを計画しているが、現寮の補修・建て替えについては大学側と自治会で交渉中。

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吉田寮食堂問題から見る市大 (http://hijicho.com/?p=6726)

文責

近藤龍志 (Hijicho)


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