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あさかで祭り開催 人のつながりが創り出す


10月9日(日)に浅香中央公園であさかで祭りが開催された。当日は晴天に恵まれ、バザーやステージ企画には多くの来場者が訪れた。また午後には、平松邦夫大阪市長も会場に駆けつけ、大きな賑わいに包まれた。

顔でつながる地域性

あさかで祭り終了後、実行委員長を務めた木村雅一さんにお話を伺った。

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写真=あさかで祭り実行委員長の木村雅一さん

―今回で11回目を迎えたあさかで祭りを終えた感想を聞かせてください
正直なところ、10年以上続くとは思っていなかったですね。逆に言えば、年に一回この時期にするというのがみんなの楽しみになってくれているみたいで。参加者は子どもを含めてだいぶ来てくれるようになっています。それはそれで嬉しいですが、だんだんと準備する人が減ってきているのは、少々きついです…。

あれこれするよりは、続いていくことが大事だと考えています。10年ほど前まで、8月15、16日に盆踊りがありました。15日は夜2時まで、16日には4時までやっていたんです。これもそうやけど、結局お祭りは、準備する人、お金、来てくれる人が必要です。それがだんだん減ってくる。来てくれる人や準備する人がいなくなるとお金が集まらなくなる。お金が集まるというのは、人と人が顔でつながっている関係だということに言い換えられると思います。あさかで祭りは、10年間で培ったつながりをこれからも続けていけるのか。祭りも含め、昔から続いているものとは、人のつながりが結果的に形となったもの。そういう意味で、昨今は人のつながりが弱くなっていると思います。その一方で、今回のように新しく学生さんが来てくれて、また新しい層も増えていく、入れ替わっていくということもあるんやけどね。

―あさかで祭りを行うようになった経緯を教えてください
保育所に小さい子らをもっている親たちが、盆踊りがぼちぼちなくなってくるし、何かしたいということが最初のきっかけですね。ある意味で人がつながっているというのは、縦割りで繋がっているからよい面もあります。しかしもう一方で、若い者の方が不利、自分たちが何かしたいとしても、ああやこうやと言われて結局できなくなることもあります。そんなこともあって、自分らで好きなように祭りをしようというのが始まりです。最初は1人でも構わない。誰か一人が言い出して、この指止まれで、あとはその人の気持ちやつながりで、指がつながっていく。1年目にそれで始まったら、「去年やったから今年もやれへんの?」ということになって続いていく。そもそも言いだしっぺがいないと物事は始まらないものです。やりたいという人が一人でもいて、その人がやりたいという気持ちを言葉にしたから始まったんですね。そして、それを聞いた人間が「ああしよう、こうしよう」と。浅香は今まで様々な経験があるから、案外イベントをやると言ったらなんとかなるんですよ (笑)

―あさかで祭りの魅力は?
やっぱり浅香という地域があって、じいちゃん、親、子供といったように、様々な人がつながっているという地域性だと思います。昔はたくさんの人が暮らしていたけど、最近は若い人が出て行ってしまいがちです。そんな現代だからこそ、日頃仕事だから同じ所に住んでいても会わない人が集まって、顔を合わせて「久しぶりやね」と言えるのは地域性やと思います。

地域全体がキャンパス

―地域の方々から見て、市大生の印象は?
昔はお客さんで同和の問題を勉強しなければならないからなど、何かのために来るという感じでした。それに加えて、浅香公園の辺りは車庫だったこともあって、こっちに来ることがほとんどなかったけれども、今は、あさかで祭りも来てくれるし、浅香の温泉とかにも市大生は来てくれる。その辺でもカップルが歩いているし、近辺にも普通に学生がいる。昔みたいに気負わなくても、今は学生がいることが当たり前になっています。お互い自由に行き来できるようになって垣根が低くなりました。地域との関わり方なんて自然でいい。行かなければならないから、何かしなければならないから、同和の問題を勉強しなければならないから、ということではなく、「行きたいから行く」というのが一番大事な感覚です。

一時、「学校公園」という話があったんです。小学校や中学校というのは地域にあるものだから、学校の塀を取っ払って、地域の人が出入りできるようにするという考え方です。しかし今は事件などが多いこともあって、インターホンを押さなければ入れない。せっかく縁があって市大に来たのだから、広い意味でここも大学のキャンパスの一つであると考えて、市大の中だけでなく近辺で生活したり遊んだりということになれば、街そのものに活気が出ます。杉本町は学生街ですが、近大の長瀬のような学生街ではありません。地域全体がキャンパスであり、生活の一部として浅香や住吉区を考えてくれたらと思います。

ぼちぼち行こうや

最後に次のような言葉をいただいた。

「無理しても続かない。自分の気持ちを隠してまで何かできないし、せねばならないでは続かない。よく言うけれど『思いを言葉に、言葉を形に』するのは大切なこと。100個口にしても100個できるわけではない。100個のうち10や20でも形になれば次に進める。頑張らんでいい。頑張ろうと思ってもしんどいからぼちぼちいけばいい。ぼちぼちいかなければ続かへん。頑張って頑張っても、どっかで糸が切れてしまったら止まってしまう。自発性を大切にして、ぼちぼちいくことがつながりを構築して持続させるんや」

たくさんの小さな接点を持とう

あさかで祭りの目玉であるステージ企画。そのステージのトップバッターを飾ったのが、地域で活動されている浅香太鼓集団「獅子」による和太鼓演奏だ。「獅子」のリーダーを務めておられる松江寿士さんにお話を伺った。

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写真=浅香太鼓集団「獅子」リーダーの松江寿士さん
―今回のあさかで祭りを終えた感想を聞かせてください
毎年参加していますが、年々“行っている意味”が深まっているように感じます。それはとてもいいことだと思います。祭りに向けて一生懸命準備ができたし、楽しみながらできたことが何よりもよかったですね。楽しみながら皆で作り上げるという、その過程がこのお祭りの魅力のひとつです。また、今年来場した人が来年以降も、ステージや模擬店に「参加したい」という人が増えたらいいですね。またこの1年をかけて、少しづつ声かけをしていきたいです。

―太鼓集団「獅子」とはどういった団体なのですか?
毎週土曜日に市大のすぐ南にある市民交流センターすみよし南で練習をしています。この団体は1988年に結成されました。この年の御堂筋線車庫の「跡地まつり」で先輩が太鼓演奏をしていました。これがきっかけで地域の方が子どもに何か胸を張ってできることはないか?と考えた際に、太鼓を与えてくれました。その後、太鼓集団を結成させていただきました。メンバーは、浅香に住んでいる人、在日朝鮮人の人、留学生、反差別に共感している人など多様です。太鼓の演奏の他にも人権啓発もしています。子どもに『差別しない大人』になってほしいからです。具体的な活動は、小中学校に行って演奏の後に人権のお話をしたりしています。

―市大生に地域とどう関わってほしいと考えていますか?
何をしてほしいというのはないけれども、何かニーズがあったり、今後出てて来たりしたときにスムーズにつながりができるようにしておいたいし、つなげたい。小さな接点をたくさん持っておくことが大切だと思います。

誰もが楽しめる作品を

また市大からも、美術部青桃会とアカペラサークルAccordがステージに出演した。ステージ終了後、彼らにもお話を伺った。

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写真=美術部青桃会の皆さんと完成した作品

―なぜ参加を決めたのですか?また、このステージに臨むにあたっての意気込みを教えて下さい
青桃会:「普段は若者向けの作品を作ることが多いのですが、今回はお客さんにお年寄りの方が多いということを事前に伺っていたので、それらの方々にも楽しめる作品を作る良い機会だと思いました。とにかくわかりやすく!を目標にしていました。」
Accord:「昨年出演させていただいてぜひ今年も!という気持ちで参加を決めました。今年は2回生2人、1回生3人の「sp-loud」というできたてホヤホヤのバンドで参加させていただいたので、場数を踏むをいう意味でも出演して良かったと思います。」

―1回生初のライブアートということですが、どうでしたか?
青桃会:「とても楽しかったです。塗ろうとすると前の順番の人がまだ塗り終わっていないなど、練習にはなかったようなハプニングもありましたが、臨機応変に対応できたと思います。」
―曲の選定について何か意識したことはありますか?
Accord:「ゴスペラーズのカバー曲を演奏しましたが、お祭りということで幅広い人をターゲットにした曲を選びました。「ウィスキーがお好きでしょ♪」のようなCMなどでおなじみの曲ですね。」

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写真=アカペラサークルAccordの皆さん

―このような地域の祭りに出演することについて、どのように考えていますか?
青桃会:「この夏に、西成の商店街でアート活動をしました。こういった地域でのお祭りに参加していくことは、お互いに交流が深まって良いと思います。今後もぜひ参加していきたいです。」
Accord:「ボランティア活動の中で交流する機会を持っています。例えば、老人ホームに行って演奏させてもらったり。Jリーグのような地域密着の活動は素敵だと思います。Accord自体もまだ8年目のサークルなので、これからどんどん成長していきたいですね。」

地域のつながり創りや交流のきっかけ

最後に当日に伺ったバザー参加者の方々の声を紹介する。

今年の祭りへの意気込み
・通所施設利用者の方々が作ったぬか漬けやたこせんを昨年よりたくさん売る!
・今年は太鼓教室の子供たちが「獅子」とステージで初共演するということで、「獅子」としっかり合わせて太鼓を演奏する!

あさかで祭りの魅力
・地域のつながりや交流のきっかけが生まれるところ
・皆が仲良く、和気あいあいとした雰囲気
・障害をもった方でも気軽に参加できる
・バザーの値段が安いこと(笑)
・以前はあさかの地域にとどまっていたのが、他の地域との交流や、大阪市立大学の学生さんの参加が増えてきた

人と人が織りなす化学反応

ところで、今年のあさかで祭りは「思いをひとつに」というテーマが掲げられていた。これは、今年起こった東日本大震災の被災地に向けてのメッセージでもある。先ほどの浅香太鼓集団「獅子」は、9月に現地で公演を行った。被災地では、観客と一体となり、人と人とのつながりを実感したそうだ。だからこそ今回は、特に力が入った演奏だと感じられた。

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写真=浅香太鼓集団「獅子」の和太鼓演奏

この祭りだけでなく地域で開かれるイベントには、地域と関わる醍醐味が詰まっている。例えば、人と人が関わり合う相互作用によって、また新たなつながりができたり、その変化を楽しむこと。ぜひ皆さんも日々の生活の中で、人と人が織りなす化学反応を楽しんでほしい。

文責

島田隼人 (Hijicho)


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