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関西で触れるドイツ 日独交流150周年記念


大阪市立大学学術情報総合センターは5月28日まで、日独交流150周年記念『ドイツに関する企画展示』を開催した。2010年10月から2011年10月にかけて全国的に行われる「日独交流150周年」行事の一環だ。

学情以外でも今年中は全国的にドイツに関する展示やイベントが行われる。 Hijichoでは、このイベントの見どころと「日独交流150周年」に合わせた各地の行事について、大阪市立大学文学研究科講師・長谷川健一さん (専門=18 ,19世紀のドイツ文化, 文学) にお話を伺った。

関西で行われる3つの展覧会に注目

1. 兵庫県立美術館「カンディンスキーと青騎士展」 http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1104/index.html 4月26日〜6月26日, 大学生¥900 (リンク先の割引券を提示すれば¥100割引)


2. 相国寺承天閣美術館 (京都市) 「ハンブルク浮世絵コレクション展」 http://www.kyoto-minpo.net/event/archives/2011/05/21/2329_3.php 5月21日~7月18日, 大学生¥800


3. 兵庫陶芸美術館「マイセン磁器300年」展 http://www.mcart.jp/23/exhibition/maisen/maisen.htm 9月10日~11月27日, 大学生¥800

身近なドイツが徳島に

ドイツ館 (徳島県鳴門市) は第1次世界大戦中にドイツ人俘虜が収容されていた施設のそばに建設された記念館で、毎年ドイツ関連のいろいろなイベントが開催されています。ベートーベンの『第九』が日本で初めてフルで演奏された場所としても有名です。関西からも高速バス等の利用で簡単にアクセスできます。 俘虜収容所でのドイツ人と日本人の交流を描いた『バルトの楽園』(2006年) という映画は、当時の交流の様子を窺うことのできる興味深い映画です。ドイツ館から少し行った所にロケ地が保存されています。学情センターにDVDが所蔵されています。

ドイツ館
http://www.doitsukan.com/

ドイツにまつわる映画の数々

大阪神戸ドイツ総領事館のウェブページに、最近の映画の簡単な紹介が掲載されています。そのなかでも紹介されている『MON-ZEN』は、日本文化をテーマとした作品を複数手掛けているドイツ人女性監督ドーリス・デリエの作品です。日本文化 (特に禅) に興味を持ったドイツ人男性の日本体験の模様が描かれています。われわれとは違った視点から日本文化を眺めているのがなかなか面白いです。

大阪神戸ドイツ総領事館
http://www.osaka-kobe.diplo.de/Vertretung/osaka/ja/06/Kulturelles__Leben__in__Deutschland/Deutsche__Film.html

図書館のリストに挙げられている作品では、『グッバイ・レーニン』、『トンネル』、『善き人のためのソナタ』が面白いです。

『グッバイ・レーニン』は、東西ドイツ統一前後の様子が、母親思いの主人公の視点からコメディタッチで描かれています。旧東独時代を懐かしむ視点が入った典型的なオスタルギー映画です。『トンネル』はトンネルを掘ってベルリンの壁を下から越えた旧東ドイツ人たちの実話をもとにした作品です。最後の作品は、東ドイツの秘密警察シュタージの諜報活動がクローズアップされたもので、ストーリーとしては感動的な話に終わっています。ただし、この二つはどれも、今回のような交流年におススメする映画としては、相応しくないかもしれません。どちらかというとドイツの負の側面を描いた作品ですので。

子どもから大人まで楽しめる無難な作品としてはドイツの児童文学作家として日本でも人気の高いエーリッヒ・ケストナー原作の映画『エーミールと探偵』、『飛ぶ教室』、あるいはミヒャエル・エンデ原作のファンタジー映画『ネバー・エンディングストーリー』や『モモ』でしょうか。

学情センターで読めるドイツの書籍

1. 日独文化人物交流史:ドイツ語事始め, 宮永孝著, 三修社, 1993 交流年に読むのにちょうどいいと思われるのは例えばこの本でしょうか。
2. ドイツ文学を学ぶ人のために, 深見茂編, 世界思想社, 1991 学情のリストにはドイツ文学関係の本が紹介されていないので残念ですが、以下の本は、市大独文の名物教授だった深見先生他で執筆した文学案内です。特にこの先生がお書きになられた部分は、ユーモアたっぷりの独特の文体で非常に面白いです。
3. ドイツ・ロマン派全集, 前川道介編, 国書刊行会, 1983-1992 (20巻+別巻) 市大独文を中心とした関西のドイツ文学研究者で翻訳された以下の全集。もっと読まれてほしいです。私は高校時代にこの全集を図書館で読んでドイツ文学に興味を持ちました。作品だけでなく、巻末の解説も非常に興味深く、18世紀末から19世紀初めのドイツ語圏の文化的な状況が見えて来ます。
4. ゲーテの秘密結社:啓蒙と秘教の世紀を読む, 北原博著, 大阪公立大学共同出版会, 2005 新しい所では、ゲーテと秘密結社のかかわりを論じた以下の本。日本のゲーテ研究に新たな地平を切り開いた意欲作です。著者は市大独文の卒業生です。
5. ドイツのゴシック小説, 亀井伸治著, 彩流社, 2009 18世紀末から19世紀初頭にかけてのドイツ文学とイギリス文学の影響関係を、ゴシック小説とその系譜という観点から論じた本格的な研究書。これまでの正統な文学史ではほとんど扱われてこなかったドイツのゴシック小説 (恐怖小説) の世界を堪能させてくれます。
6. 現代ドイツを知るための55章:変わるドイツ・変わらぬドイツ, 浜本隆志・高橋憲著, 明石書店, 2002 現代ドイツについての情報を満載。
7. ドイツ語学への誘い:ドイツ語の時間的・空間的拡がり, 河崎靖著, 現代書館, 2007 ドイツ語の成立と発展・ドイツ語学について、初学者向けに分かりやすく、なおかつ深く書かれている。
8. 8. 中級ドイツ語のしくみ, 清野智昭著, 白水社, 2008 初級を終えられた方の文法理解にさらに深みを与えてくれる名著だと思います。市大生なら読みこなせると思います。

音楽イベント

開催地は東京ですが、8月に開催されるジャーマンロック・フェスティバルも非常に興味深いイベントだと思います。震災の影響のせいか、まだ参加バンドが確定していないような感じですが、日本でまだあまり知られていない魅力的なバンドに触れることのできる貴重な機会になるでしょう。

大阪市立大学とドイツ

市大には毎年姉妹提携大学のハンブルク大学から数名の留学生が来ます。今も3名います。また、夏にはハンブルク大学での1カ月間の夏期語学研修もあります。今年は全学から5名参加します。 ハンブルクはドイツの若者に1番人気の町ですので、大阪市立大学は非常にいい提携校を持ったと思います。学生さんにはこういった機会を通じてぜひドイツ人と交流したり、ドイツ語圏の文化に親しんでいただければと思います。

(加賀友基)


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