HijichoのLINE公式アカウント
友だち追加数

グローカルな市大に 〜荒川新学長インタビュー〜


 今年の4月から、本学の第12代学長に就任された荒川哲男氏。学長の市大に対する思いに迫った。

DSCF7051

写真=インタビューに答える荒川学長(丹下舜平撮影)

 

 ――学長に就任されて2ヶ月半が経ちました。今のお気持ちはいかがですか?

 とてもワクワクしています。その背景を前学長とのつながりと共にお話ししますね。

 前学長である西澤氏は、「シンクタンク機能強化、都市科学分野の教育・研究・社会貢献」「専門性の高い社会人の育成」「国際力の強化」という「3つの重点戦略」を掲げて大学運営をされていました。

 私は西澤氏と同じ医学部出身で、お話しをする機会が多かったこともあり、この重点戦略にとても共感しました。当時、私は医学研究科長を務めており(2012年4月~2016年3月)、医学研究科でもその戦略に率先して取り組みました。現在は、その戦略を踏襲してさらに深化させられる立場になったのでワクワクしているという次第です。

 

 ――「3つの重点戦略」に関する今までの取り組みついて詳しく教えてください。

 医学研究科長時代には、「国際力の強化」という点に特に力を入れました。具体的には、留学してくる学生を増やし、多くの海外の大学と提携を結び交流を盛んにしました。結果として阿倍野キャンパスが活性化し、国際色豊かになりましたね。市大全体でもそのようになれば良いなと思っています。

 「シンクタンク機能強化、都市科学分野の教育・研究・社会貢献」という点においては、医学研究科長の時に「ものづくり医療コンソーシアム」という非営利の一般財団法人を設立しました。医療のニーズと中小企業の匠の技を「融合」させることによって、医療のさらなる発展を目的としています。また、大阪に多く存在する中小企業がこの取り組みで活性化することによって、大阪の経済発展に寄与することもできると考えています。理事に、小型人工衛星「まいど1号」を企画した航空部品製造会社アオキの青木豊彦氏がいらっしゃいます。青木氏は私の飲み友達で、信頼できる人です。有識者として学長特別顧問になっていただきました。

 今年度からは学長として、総合大学という市大の魅力を活かしつつ、これらの取り組みを推進していきたいと思っています。

 

 ――学長が掲げられたスローガンについて教えてください。

 上記の経験を踏まえて、このようなスローガンを掲げました。それは「笑顔あふれる知と健康のグローカル拠点」です。

 「知の拠点」は大学としての当然の役割ですので改めて言うことはありませんが、そこに「健康」というキーワードを入れていることがポイントです。市民の健康を増進するために研究を進めていくという意図があります。

 「笑顔あふれる」というのは、学生が笑顔になれるようなキャンパス作りを目指すということです。学生が暗い気分では何も生まれませんからね(笑)。

 「グローカル」という言葉は「グローバル」と「ローカル」を掛け合わせた造語です。本学の前身である大阪商業講習所は、商業の中心地であった大阪の近代化だけでなく、日本全体の近代化をも目指していました。「ローカル」から「グローバル」という本学の使命はここから始まったと言っても過言ではありません。後に大阪商科大学に昇格した際、当時の大阪市長である関一(せき・はじめ)は「国立大学のコッピーであってはならぬ」という有名な言葉を残しています。本学は「大阪」という地域に根ざしたものであり、かつ世界につながるものを生み出す、という国立大学にはないミッションがあるということをこの言葉は端的に表していると思っています。

 

 ――そのスローガンを達成するための具体的構想を教えてください。

 「健康」を増進するために重要なスポーツ分野においても連携を取ることにしました。そこで、前バレーボール全日本女子チーム監督で、現在は一般社団法人「アスリートネットワーク」の理事長を務められている柳本晶一氏に学長特別顧問になって頂きました。前述の青木氏と私を含めた3人で、それぞれの特徴を活かしつつ連携を取りたいと考えています。

 

 ――学長のお考えになるグローバル人材とは?

 私が考えるグローバル人材は、世界の人から信頼される人物です。英語が上手かどうかはまた別の問題です。私の好きな歌に河島英五さんの「時代おくれ」があります。そこに「あれこれ仕事もあるくせに 自分のことは後にする」という歌詞が出てきます。曲名は「時代おくれ」ですが、この姿勢は今のグローバル人材に通ずるところがあると思っています。

 

 ――学長がアメリカのカリフォルニア大学に留学されていた時のエピソードをお聞かせください。

 英語につまずきましたね。専門的な単語を使うコミュニケーションは容易でしたが、普段の会話に苦労しました。現地の習慣がわからなかったんです。現地のスーパーのレジで、店員さんに「Paper or plastic?(紙袋ですか、ビニール袋ですか?)」と聞かれました。何のことかわからず「Pardon.(すみません)」と返すと途端に私への扱いがひどくなりました。この時は傷つきましたね(笑)。

 研究には打ち込むことができました。そして、研究生活を通じて信頼できる多くの仲間ができました。彼らは私にとってかけがえのない財産です。

 

 ――学長の座右の銘と市大生に一言お願いします。

 私がとても残念だなと思っていることが1つあります。それは、市大に入学してきた人の3割ほどが「不本意入学」と感じているいうことです。要するにレベルを下げて仕方なく市大に来たということですね。しかし、私の人生経験から断言できますが、大学の価値は絶対に偏差値で決まらないということです。

 私は医学部出身ですので、医学部を例に挙げることにしましょう。現在、地方で医師不足が問題になっています。その対策として、地方の大学を中心に「地域枠」という枠を設けています。これは、卒業後もその地域で医師として働く意欲のある人を募集するものです。入学時は地域枠合格者の方が、一般枠合格者よりも偏差値が低いです。しかし、ストレート卒業率(留年していない)、国家試験合格率は共に地域枠合格者の方が高いのです。つまり何が言いたいのかというと、将来の目標が明確な地域枠合格者の方がモチベーションが高く、入学後、学力が伸びているということです。別の見方をすると、入学時の偏差値は何の指標にもならないのです。

 私が市大生に言いたいことは「在学中、いかにモチベーションを高く保つことができるかが、将来の進路を決める」ということです。OB・OGには優れた方がたくさんいらっしゃいます。市大生としての誇りを持ってください。

 私の座右の銘は「人間万事塞翁が馬」です。生きていると、いろいろつらいことが起こります。しかし、下を向いているとチャンスが上を通り過ぎてしまうと私は解釈しています。人生は何が起こるかわかりません。すぐに前向きな気持ちを持つことで、次のチャンスを掴むことができると思っています。

 

From editors

 実際にお話を伺ってみて、学長はとても気さくな方であるということを実感した。学長の広い人脈をとても魅力的に感じた。筆者も広い人脈を築けるように能力を高めていきたい。今後、本学をどのように導かれるのか、学長の手腕に注目だ。(山原)

 前出の「時代おくれ」に「人の心を見つめつづける 時代おくれの男になりたい」という歌詞が出てくる。学長はFacebookを使った情報発信に熱心だ。その点で、「時代遅れの男」ではないだろう。けれども、いつまでも「人の心を見つめつづける学長」であってほしい。(丹下)

文責

山原怜太朗、丹下舜平(Hijicho)


関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Hijicho on Twitter

ページ上部へ戻る