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市大の定款変更案が否決~統合への影響は~


11月22日の大阪市議会・都市経済委員会において、大阪市立大学と大阪府立大学の統合に先駆けて、橋下徹大阪市長が提案する「市大の定款の一部変更案」と「市大の中期目標の一部変更案」が大阪維新の会以外の全会派の反対を受けて否決された。これにより府市両大学の統合が鈍化することになりそうだ。

市大の定款の一部変更

特にポイントとなるのが、現定款第10条の改変である。現行の定款では、「理事長の任命は、法人の申し出に基づき、市長が行う。」となっているものを、「理事長の任命は市長が行う。」と改変するという案である。それに伴い第10条2項「理事長は、市立大学の学長となるものとする。」や同3項「理事長を選考するため、理事長選考会を置く。」といった文面は削除される。そして新しく第11条「市立大学の学長は理事長とは別に任命するものとする」という文面が設けられる。

現定款の第10条改変案の概要は以下の通り。 (公立大学法人大阪市立大学定款の一部変更について 対照表 より一部抜粋)

現行

(理事長の任命等)
第10条 理事長の任命は、法人の申し出に基づき、市長が行う。
2 理事長は、市立大学の学長となるものとする。
3 理事長を選考するため、理事長選考会議を置く。
4 第1項の法人の申し出は、理事長選考会議に基づき行う。
5 理事長選考会議は、委員6人で構成し、委員は、次に掲げる者各同数を
もって充てる。
(1)第17条第2項第2号から第4号までに掲げる者の中から同条第1
項に規定する経営審議会において選出された者
(2)第20条第2項第2号から第5号までに掲げる者の中から同条第1
項に規定する教育研究評議会において選出された者
6 前項第1号に掲げる者のうち1人は第17条第2項第2号又は第3号に
掲げる者、前項第2号に掲げる者のうち1人は第20条第2項第3号に掲
げる者でなければならない。
7 理事長選考会議に議長を置き、委員の互選によってこれを定める。
8 議長は、理事長選考会議を主宰する。
9 第5項から前項までに定めるもののほか、議事の手続その他理事長選考
会議に関し必要な事項は、議長が同会議に諮って定める。

改変案

(理事長の任命) →大幅改変 キーポイント
第10条 理事長の任命は、市長が行う。 →大幅改変 キーポイント
2 削除
3 削除
4 削除
5 削除
6 削除
7 削除
8 削除
9 削除 →大幅改変

(学長の任命等) → 新設・大幅改変
第11条 市立大学の学長は理事長とは別に任命するものとする。
2 学長を選考するため、市立大学に学長選考会議を置く。
3 学長の任命は、学長選考会議の選考に基づき、理事長が行う。
4 前項の規定により任命された学長は、副理事長となるものとする。
5 学長選考会議は、委員6人で構成し、委員は、次に掲げる者各同数を
もって充てる。
(1)第18条第2項第3号及び第4号に掲げる者の中から同条第1項に
規定する経営審議会において選出された者
(2)第21条第2項から第6号までに掲げる者の中から同条第1項に規
定する教育研究評議会において選出された者
6 第18条第2項第4号又は第21条第2項第6号に掲げる者の中から選
出された委員の数は、委員の2分の1以上でなければならない。
7 学長選考会議に議長を置き、委員の互選によってこれを定める。
8 議長は、学長選考会議を主宰する。
9 第5項から前項までに定めるもののほか、議事の手続その他学長選考会
議に関し必要な事項は、議長が同会議に諮って定める。

市大の中期目標の一部変更

中期目標にも定款と同様の改変案が提出された。ポイントは定款と同じく、理事長と学長の分離である。例えば現行の「理事長兼学長のリーダーシップのもと、組織ガバナンスの向上のための経営組織を構築する」という文面が、「理事長のマネジメントのもと、学長が教育研究においてリーダーシップを発揮し、効果的な運営体制を構築する。」に改変されるという案がある。他に「世界的な大学間競争を勝ち抜き、より強い大阪を実現するための知的インフラ拠点として存在感を高めるため、大阪府、大阪市及び公立大学法人大阪府立大学と緊密に連携を図りながら、平成28年度の大阪府立大学との大学統合をめざし、設立団体がその議会等における新大学に関する議論を踏まえて定めるスケジュールに沿って、段階的に準備を進める。」という、「大阪府立大学との統合による新大学実現へ向けた取組の推進」の旨が追記された。つまり、今までは市大だけに関する中期目標であったのだが、それを統合を見据えた中期目標へと改変しようとしたのだ。

「統合先にありき」の姿勢に批判が集中

橋下市長は「学長は研究に力を注いでもらい、組織運営はその道にたけた人にしてもらうことが必要」等と主張したものの、維新以外の各会派が、「統合の是非の議論が深まっていない中、統合の地ならしには賛成できない」などとして、「統合先にありき」、スケジュール優先の姿勢に反発する形となった。当事者である学生や教職員の意向を無視する姿勢も批判の対象となった。また、大阪市立大学と大阪府立大学の名誉教授らが「統合や橋下市長の大学の自治への介入を憂慮する」声明を出したりと、各所から反対の声が相次いでいたことも大きな原因であろう。

これにより、両大学の統合が鈍化することは間違いないが、統合案そのものがなくなったわけではない。今後両大学の統合は頓挫に終わってしまうのか、それとも別の形でこの先統合が実現されるのか、注目したい。

文責

Hijicho 橋本啓佑


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