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市大存亡の危機~無関心ではいられない~ vol.2


「市大存亡の危機~無関心ではいられない~」は大阪府市大統合について様々な視点から切り込んでいき、学生の皆さんに問題意識を持ってもらうことを目的としたコーナーである。第二回は統合に関するアンケートの結果から、学生の統合に対する意識の持ち方に焦点を当てた。

アンケートは2013年3月29日の第4回意見調整会議参加学生、4月26日の一部の一般教養科目受講生に対して実施し、212人分の回答が回収できた。ここから学生の統合に対する意識の持ち方を検証する。

アンケート内容

アンケート内容は以下のとおりである。

1.府市大統合についてどう考えるか。

□賛成 □反対 □どちらでもない

2.賛成の理由 (複数回答可) 。

□日本で最大規模の公立大学となる □統合することでシナジー効果 (相乗効果) が生まれる □偏差値によい影響を与える □大学間競争に勝ち残れると思う □グローバル化がすすむ   □その他

3.反対の理由 (複数回答可) 。

□文理でキャンパスが異なる □学部の再編が行われる □課外活動に影響が出る恐れがある □教授が辞めてしまう恐れがある □偏差値に悪影響を与える □その他

4.現在のクラブ・サークル活動に影響があると思うか。具体的にどのような影響があると思うか。

□よい影響を与える □悪い影響を与える □特に影響はなし

5.「新大学構想<提言> 」を知っているか。

□知っている □知らない

6.「新大学構想<提言> 」 を読んだことがあるか。

□読んだことがある □読んだことがない

7.「新大学構想<提言> 」 を読んでどのように思ったか。

8.府市大統合問題について知りたいと思うこと・関心のあることは何か (複数回答可) 。

□学部によってキャンパスはどうなるのか □学部再編 □教員の処遇・異動 □研究内容 □カリキュラム □新大学名 □予算 □その他

統合について賛成/反対/どちらでもない

まずは統合について賛成・反対・どちらでもないのどの考えにあたるか質問した。結果は以下のとおりである。

□賛成 45人
□反対 90人
□どちらでもない 77人

反対が一番多い結果となったが、どちらでもない・賛成も決して少なくはない。

では賛成/反対の理由について見てみよう。

「賛成」

□日本で最大規模の公立大学となる 35人
□統合することでシナジー効果が生まれる 13人
□偏差値によい影響を与える 4人 
□大学間競争に勝ち残れると思う 8人 
□グローバル化がすすむ 7人   
□その他 2人

「反対」

□文理でキャンパスが異なる 33人
□学部の再編が行われる 42人        
□課外活動に影響が出る恐れがある 29人
□教授が辞めてしまう恐れがある 10人    
□偏差値に悪影響を与える 21人
□その他 17人

賛成の理由としては、「日本で最大規模の公立大学となる」が最も多かった。統合により単純合計での学生数は16,691人となり、2005年に4つの大学が再編・統合されてできた首都大学東京の9,395人を大きく上回る。しかし学部再編などの影響により、教員一人当たりに対する学生の数が増える (少人数教育への影響) といった事態が起こることも考えられる。とすると、今後募集する学生数についても調整がなされることが考えられ、学生数が最大規模になることを安易にメリットとすることはできないだろう。

賛成票として「シナジー効果が生まれるから」が次に多かった。両大学のそれぞれの強みを活かして、シナジー効果、つまり相乗効果を生み出すことが期待できるわけである。学術面での期待がされており、市大が基礎分野研究が盛んなのに対して、府大は学際的・応用分野の研究が盛んであることから、それぞれの強みを生かした教育をできると考えられている。その目玉のひとつが両大学工学部の強みである、建築、土木、海洋、航空などの部門の統合とともに、ナノ、創薬、医工連携などの未来分野を充実させ、理学部・工学部の融合した「地球未来理工学部 (仮称) 」の設置である。

賛成のその他理由としては、「理系の強化につながる」、「市大は文系が強く、府大は理系が強いので、競争力が強化される」といったものあげられた。

続いて反対の理由についても見てみよう。反対理由では「学部再編」が最も多い。「地球未来理工学部 (仮称) 」の新設の他に、地域保健学域 (府大) と生活科学部 (市大) を再編した「人間 科学域 (仮称) 」、「獣医学部」の設置などが考えられている。これらの再編からは単純に良い効果ばかりは期待できない。例えば先ほど述べたように少人数教育への影響があれば、せっかく教育内容が充実されても意味がない。

「文理でキャンパスが異なるから」が次に多かった。キャンパスが異なると、異なるキャンパスに通う人とのかかわりが薄くなってしまうことが懸念される他、前回述べたように課外活動に伴う移動でのデメリットも考えられる。

反対のその他理由としては「母校の名前が失われてしまう」が多く見受けられ、他に「市大と府大でカラー (役割) が異なるのに、それが失われてしまう」、「大学祭がなくなってしまうのではないか」、「体育会でのリーグが片方に吸収されてしまう恐れがある」といった声があがった。

統合による課外活動への影響 (良い影響/悪い影響/影響はない)

今度は課外活動に対する影響について学生の問題意識を探ってみる。

□良い影響 60人
□悪い影響 80人
□影響はない 72人

統合によって課外活動に影響が出ると回答した人は約63%。良い影響の回答には規模の拡大によって課外活動団体のメンバーが増え、多様な学生間交流を期待する声が強い。一方で統合するとなるとキャンパスが隔離される可能性が高く、課外活動への影響を心配する声もある。また各団体の伝統が不明瞭になったり活動形態が変化したりすることを恐れる意見もあった。大阪府市大統合での課外活動への影響については「市大存亡の危機vol.1」を参照して頂きたい。

新大学構想〈提言〉 (知っている/知っていない)

次に新大学構想〈提言〉についての認知度を調査した。

□知っている 64人
□知らない 148人

新大学構想〈提言〉を読んだことがあるかどうかも同時に調査した。

□読んだことがある 12人
□読んだことはない 200人

新大学構想<提言>とは統合後の新大学像を提言としてまとめたものだ。大阪府と大阪市による共同の附属機関として設置された大阪府市新大学構想会議で決定された。今回のアンケート結果では既読者が非常に少ない。しかしながら市大の行く末を論ずるのに欠かせない資料であり、市大生にはぜひ一度熟読して頂きたい。

新大学構想〈提言〉:http://www.pref.osaka.jp/attach/16822/00000000/honpen.pdf

統合について関心があること

最後に、統合について学生たちがどのような点に関心を抱いているかも調査した。

□学部によってキャンパスはどうなるのか 125人
□カリキュラム 45人
□新大学名 71人
□学部再編 98人
□研究内容 23人
□教員の処遇・異動 21人
□予算 16人

「キャンパス」に対して最も関心が高い結果となった。やはり異なるキャンパスに通う人同士の交流が希薄になることや課外活動への影響、自分がどこのキャンパスで学ぶことになるのか (今のキャンパスから移動することになるのか)。「カリキュラム」や「学部再編」、「研究内容」、「教員の処遇・異動」などは大学での学びに関わる重要な項目である。学生たちが関心を持つのももっともである。

このように学生も統合に際して様々な面で関心を持っている。だからこそ〈提言〉を読んだことのない学生は、一度〈提言〉に目を通してほしい。そこから全てが分かるわけではないが、統合についての構想がある程度まとめられている。皆さんの関心に対する答えもある程度分かるだろう。

アンケート結果から

今回のアンケート結果から、統合に対して賛成反対のどちらでもないや、課外活動に対して影響はないと考える学生も多かった。これは、統合においてメリットもデメリットもともにあるのだから判断がつけられない、ということが理由として考えられるだろう。しかし、〈提言〉を読んだことがない・知らない学生の数が多いことを考えると、統合に関して得ている情報が少ないことも関係しているだろう。新大学開校が予定される2016年まで残り3年であるが、統合するのであれば、よりよい統合のためには当事者である学生を蚊帳の外に置いたような現状を改善する必要があるだろう。

参考

第18回 大阪府市統合本部会議について
http://www.pref.osaka.jp/daitoshiseido/togohonbu/honbukaigi018.html

関連記事

進む府市大統合構想 ~法改正の実現が鍵~ (2012/11/07)
http://hijicho.com/?p=9749
市大存亡の危機~無関心ではいられない~ (2013/04/06)
http://hijicho.com/?p=12914

文責

橋本啓佑 (Hijicho)
石原奈甫美 (Hijicho)


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コメント

    • 守矢 健一
    • 2013年 10月 16日

    市大法学部の教員をしています。私設メイルアドレスからの送信です。最後の2行に書かれたこと(学生が蚊帳の外におかれていること)は大事な指摘です。現在は、研究教育を通じて接触する教員すら、大学の組織全体に対しての発言の機会を奪われかねないという状況です(教授会の権限の縮小という方法によって)。大事なのは教育と研究の質の向上で、それさえ確保できれば、統合の是非論は副次的な論点かもしれません。党派的なものでなく、教育と研究の自由な発展という観点から、学生と協力して大学の仕組みを考えたいので、お知恵を戴きたいです。

      • k.hashimoto
      • 2013年 10月 21日

      守矢健一さま

      コメントありがとうございます。Hijichoで、記事執筆者の橋本と申します。

      こちらといたしましても、多方面の方から統合に対する意見を伺えればと考えております。
      ご協力できることがございましたら、ご協力させていただきます。
      何かしらご意見等ございましたら、コメント等で伺えればと思います。

      今後ともHijichoをよろしくお願いいたします。失礼いたします。

    • 市大卒
    • 2013年 5月 23日

    アメリカの大学自身が大きな危機感を持って、過去に行われた大胆な改革を振り返えり、現在、と未来をどうしていくかというフォーラムを持った時のビデオを参考までにそうふしました。http://www.williams.edu/daring-change/

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