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進む府市大統合構想 ~法改正の実現が鍵~


大阪市立大学 (以下、市大) と大阪府立大学 (以下、府大) の統合の話が持ち上がってから随分と経つ。統合の話はどこまで進んだのだろうか。今回はそんな府市大統合構想の進捗状況を見ていきたい。

「公立大学法人」の仕組み~大阪市と市大~

まず、そもそも公立大学法人がどういう仕組みなのかを確認する。私立大学は学費によって運営されている。一方で市大のような公立大学法人は、府や市 (市大なら大阪市) が設立団体となり、学費および運営交付金 (府や市からの補助金) によって運営がなされている。大阪市立大学においては後者が6割近くを占める。

では設立団体である大阪市と市大はどのような関係にあるのだろうか。まず大阪市が定款 (大学の憲法のようなもの) を作成し、議会に提出して承認を得る。次に公立大学法人の意見を聴いて大阪市が中期目標 (6年) の原案を作成し、それを議会に提出し、承認を得る。大学は、この中期目標を達成するための、中期計画を作成し、市長の認可を得る。それに基づき市が中期目標を作成し、議会で認可を得る。つまり市が教育プラン目標を設計し、大学は計画を策定し、アクションを起こすというわけである。こういった公立大学法人について規定しているのが「地方独立行政法人法」(以下、地独法) である。地独法について詳しく知りたい方は以下のURLを参照していただきたい。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO118.html (地方独立行政法人法)

新大学構想会議

昨年12月に大阪市長となった橋下徹氏は、大阪府と大阪市の二重行政の解消のために、府市統合をマニフェストの一つとして掲げている。その構想を実現するために、2011年12月27日に設立されたのが「大阪府市統合本部」(統合本部) である。府市大統合構想はその中の一つにあたる。大学は教育機関であり、行政機関とは異なるという観点から、二重行政ではないという見解に対し、橋下市長は広義には大学も二重行政にあたるとしている。

そして統合本部は、以下2つの背景から、2012年6月に「新大学構想会議」(以下、構想会議) を設置した。

・世界的な都市間競争に打ち勝つ「強い大阪」を実現する成長戦略において、都市の重要な知的インフラである『大学』の活用は不可欠である
・大阪にある二つの公立大学 (府大・市大) を合わせれば全国最大規模の公立大学となり、両大学がこれまで培ってきたポテンシャルを十分に生かすことが大切

構想会議は外部有識者6名からなる組織で、大阪における公立大学の使命を明確にするとともに将来ビジョンを取りまとめ、統合本部に提言を求めている。

その検討の視点として例えば以下のような案が持ち上がっている。

・大阪の成長戦略への貢献
・公立大学らしさの追求 (自治体との連携、大阪の教育行政への貢献、実践的研究の推進、など)
・両大学が培ってきた伝統と蓄積の活用
・学部再編などの抜本的な見直し

また統合といってもその形は1つではなく、例えば次のような形が考えられる。

・法人統合…2つの大学を1つの法人が運営する (1法人2大学) 。
・大学統合…2つの大学を1つの大学に統合する。
・阪急阪神百貨店のような例…会社は1つだが2つのブランドを所有するという場合。

どのような統合の形になるかは定かではないが、府市大統合が実現すれば学生総数として、公立大学では全国最大規模となる。(国立大学では神戸大学並み)。

統合までの流れ~構想会議の位置づけ~

では構想会議のヴィジョンはどのように実現へと向かっていくのか。大まかな流れは以下のとおりである。

1.構想会議でヴィジョンを作成
2.大阪府市に提出
3.パブリックコメントを集める
4.議会に提出
5.可決・成立
6.大学に報告

しかし現在この構想会議は活動を停止している。なぜならば、この構想会議が条例等に基づいて設置されていないためである。年内の活動の再開を目指している。

また、そもそもこの統合構想には法改正 (地独法) が前提となっていることも課題である。というのもこの府市大統合構想は、あくまで大阪都ができることを前提としているからである。すなわち、仮に今の大阪府・市が存続したまま大学だけが統合する場合、「大阪都」が存在しないため、設立団体としては共同で事務組合のようなものをつくらない限りは、府もしくは市のどちらかでなければならない。

統合の方向で話は進んでいる

ここまで、府市大統合の話の概要から現状に至るまでを話してきた。ここで、そもそも統合について市大はどのような考えで臨んでいるのかを確認しよう。

市大は統合について前向きな姿勢を示してる。なぜなら市大自身の重点戦略や将来像・理念と、府市大統合におけるヴィジョンが、多くの面でつながっているからである。それは例えば、「地域社会ひいては国際社会の発展に寄与する、市民の誇りとなる大学」、「高度な教育や先進的で卓越した研究を推進し、積極的に入学したい大学として選ばれ、社会が求める人材育成の成果が見られる大学」などである。

このようなヴィジョンの一致という理由から市大は統合について前向きな姿勢であり、統合実現の方向に向けて話が進んでいるというわけである。

統合による影響は?

ここからは統合に伴いどのような影響が出てくるのかについて検討を進める。ただし先程も述べたように統合の形がどうなるかは不明である。

①学生への影響
まずは在学生への影響を考える。結論からいえば、学業面においては学生への影響はない。というのも、大学教育というのは皆さんが入学した当時のシラバスにのっとって進めなくてはならないからである。つまり、統合によってカリキュラムが変わることはないのである。市大生として入学した方は市大生として卒業し、府大生として入学した学生は府大生として卒業する。都大学生 (仮) として入学した学生は都大学生として卒業するのである。市大生や府大生として入学したのに、都大学生として卒業することはないというわけだ。

学生への影響について、サークルや部活動の面からも考えることができる。こちらは学生が主体となって考えていくことになるのではないかと考えられている。同様に四者協といった組織についても、学生自身が考えていくことになるのではないか。

②教員への影響
次に教員への影響はどうだろうか。教員は、府大と市大でそれぞれ専門とするところが異なる場合は影響が少ないと考えられる。問題となるのは専門分野が重なった場合である。ただ現段階では具体的にどうなるかは明言できない。同じことは学部編成にも言うことができる。例えば工学部は市大と府大の両方に存在するが、市大では土木や建築など都市研究、府大では宇宙工学や海洋・航空など、その研究領域は異なる。それが統合によりどのようになるかは現段階では不明だ。

③職員への影響
職員への影響も考えられる。これも同様に明言はできないが、例えば市大でいえば学生支援課といった部署には影響がないかもしれないが、法人統合になるとすると、法人部門に所属している職員については影響が出るかもしれない。

終わりに

Hijicho大阪市大新聞10月号において、2016年の大阪都大学開校の旨の記事を掲載したが、今回の取材から2016年にそれが実現するか否かは現段階では不明であることが分かった。ただ、府市大統合構想自体は統合するという方向で話が進んでいることは事実である。そして学生の皆さんには学業面での影響がないということを知っておいてもらいたい。

ただ、それ以外の具体的な内容、すなわち統合の形や、その影響といったことについては詳細は今のところ不明だ。現在活動が停止している構想会議が年内に動き出したとき、再び統合についての具体的な話し合いが進むこととなるだろう。

Hijichoからのお知らせ

大阪府市大統合問題について関心を持っている市大生の方々へ。埋没気味のこの議題、これからどうなっていくのかを当事者として話し合いませんか? 興味のある方、詳細を聞きたいという方は、Hijichoのメールアドレス (hijicho@gmail.com) または、HijicnoのTwitterアカウント (https://twitter.com/hijicho) にリプライもしくはDMでご連絡ください。

また、2012年11月13日(火)9:30〜10:30頃(予定)、学生による「府市大統合を考える会」が開かれます。現在メンバーは5人です。メンバーを募集中ですので、興味のある方・参加したいという方は同じく上記の連絡先にご連絡ください。時間については変更も可能ですので、よろしければ都合のよい時間帯もご連絡ください。

文責

橋本啓佑 (Hijicho)


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