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小さなつながりが、大きな力に 〜チャリティー絵本『奇跡の木』〜


大阪市立大学生活協同組合 (以下、市大生協) ・シェリーの2階に『奇跡の木』という絵本が並んでいるのをご存知だろうか。この本は、東日本大震災の際に津波に耐えた「一本松」をテーマにして作られた。先日、保存のために一旦伐採されてニュースになったのを見た人もいるのではないだろうか。そのような「震災の象徴」が、チャリティー絵本となり、被災者への支援に役立っている。そこには市大生協も大きな役割を果たしている。制作者の想い、市大生協の果たす役割について取材した。

チャリティー絵本『奇跡の木』とは

東日本大震災によって、岩手県陸前高田市の海岸線に広がる高田松原に押し寄せた津波が、松原を壊滅させた。しかし7万本の松の中で、たった1本の松だけが生き残っており、人々はその木を「奇跡の木」と呼び、震災からの復興の希望とした。『奇跡の木』は、震災におけるこのような「奇跡」をテーマにして作られた絵本だ。この絵本は、チャリティー絵本として、売上から流通経費を除いた全額が、被災者への支援に当てられている。

絵本の企画・制作した福島ハーメルン・プロジェクトジョイントチームは、福島県からの一時保養・避難を支援するNPO福島ハーメルン・プロジェクト活動に賛同し、関西を中心に受け入れの斡旋・支援という形で協力を行なっている団体である。

写真=チャリティー絵本『奇跡の木』

福島ハーメルン・プロジェクトジョイントチームのスタッフとして制作に携わった市大生協の職員・大西和夫さんにお話をお聞きした。

写真=大西和夫さん

制作者のお話

ー福島ハーメルン・プロジェクトジョイントチームではどのような活動を?
今回の震災は、1回の支援でどうにかなる話ではありません。阪神淡路大震災の経験から、復興には継続的な取り組みが必要だと考えています。復興への取り組みとして、現地に行くボランティアがあるだろうし、それと同時にこちら (関西) でできるボランティアというのもあると思っています。

震災・原発事故後、福島県在住の志田守さんという方が代表となって、NPO福島ハーメルン・プロジェクトを組織し、福島県から他府県への避難・保養を支援する活動を続けてきました。私はジョイントチームとして、福島ハーメルン・プロジェクトに協力し、志田さんたちと連絡を取り合って、関西での受け入れの支援を行なっています。具体的には、避難する人たちの家を探す、仕事を探す、費用の援助などの支援活動を行なっています。また、避難できない、残らざるを得ないという人もいて、そういう人たちのために、せめて夏休み中、子どもたちだけでも一時保養という形で、関西で過ごしてもらうなどの支援も行なっています。2012年8月20〜24日には、兵庫県豊岡市日高町にある「湯の原温泉オートキャンプ場」にてコテージを数棟貸し切り、福島県から親子28名を招待し、保養イベントをおこないました。

ー『奇跡の木』の制作に至った過程は?
このような活動をしていく上で、どうしても資金は必要です。私と、作家の木田拓雄さん、イラストレーターの藤井一士さんという普段からつながりがあったメンバーで、このような問題を解決するために何かできないかということで、チャリティー絵本を作ることになりました。木田さんが震災に対する自分の想いを言葉にして、それを藤井さんが絵に表しました。

まずは、この絵本の印刷・製本代を賄うために寄付を呼びかけました。そして、寄付を集め、今年の夏から絵本として販売することになりました。この本の売上から、流通経費を除いた全額を、被災者、特に福島県から避難している人たちの需要にそって寄付をしていきます。寄付金の使い方については、今後ホームページで公表していく予定です。

ー市大生協はどのような役割を?
この本の京阪神の大学生協書籍部への流通は、市大生協と関西学院大学生協 (以下、関学生協) が中心となって取りまとめています。具体的には、寄付すると言っても、ある大学では5冊売れたから5000円ください、また他の大学では何冊売れたから何千円くださいと回収していって、10万円集まったから寄付という形で個別に回収していては、それだけで時間がかかってしまいます。そこで、市大生協と関学生協が中心となって各生協に配布し、今全体で何部売れているかを把握すれば、その分のお金を寄付することができます。回収は関学生協が後に個別に行います。大学生協は普段から相互にネットワークを築いているので、そのネットワークを利用しました。

このような役割を果たすことに至った背景には、市大生協全体としてチャリティー絵本『奇跡の木』の趣旨に賛同し、できる限りのことをやっていこうという思いがあったからです。このように市大生協と関学生協は、京阪神の大学でその先頭に立って、チャリティー絵本を広めていく活動を行なっています。

ー市大生にメッセージを
東日本大震災以降、私たち日本人は改めて、人としてどう生きていかなければいけないのかを問われました。そして、人と人とがつながっていくことによって支援できるということを、この震災を通して皆さん実感していると思います。私たちができることは、自分の家族、友達というふうに、身近なところから継続的なつながりをつくっていき、人と人とがつながっていく大切さを実践していくということです。そのつながりが、私たちがかかえている様々な課題や問題を越えていく原動力になります。

From Editor

『奇跡の木』は、普段からつながりのあったメンバーの、被災者支援のために何かできないかという共通の想いが、形になったものだ。それがさらに、市大生協や他の大学生協の共感を得て、支援の輪を広げていった。つまり、最初の小さな「つながり」が、どんどん拡散していき、被災者支援のための大きな力になった。これが大西さんの言う「つながり」が、問題を越えていく「原動力」になるということだろう。

また、取材の際に『奇跡の木』を読ませていただいた。一本の木が生き残ったという具体的事実についてだけでなく、震災で犠牲になった人々と生き残った人々の絆についてなど抽象的なメッセージももっており、この震災をどのように乗り越えていくべきなのか、非常に考えさせられる内容だった。皆さんも手にとってみてはいかがだろうか。

文責

鶴木貴詩 (Hijicho)

関連サイト

福島ハーメルンプロジェクト・ジョイントチーム
(http://www.hamelnjoint.com/)


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