地震、土砂崩れ、洪水……。災害がいつ自分の身に降りかかるかわからないと理解してはいても、普段から食料や水を用意し災害に備えている人は少ないのではないだろうか。もしものときに多くの命を救いたいという思いから、商学部田村ゼミナール(田村ゼミ)の学生11名が防災袋を開発した。
開発にあたっての苦労、完成した製品に込めた思いはどのようなものなのか。田村ゼミの池田聖(さと)さん、宮本哲也さん、横尾裕貴さん(いずれも4年)にお話を伺った。
完成した防災袋「Air Post」=田村ゼミ提供
防災袋「Air Post」は「おしゃれ、コンパクト、手放せないこと」をコンセプトにして制作された。カバン専門店「ichimaruni」(大阪市北区)と連携し、丈夫で軽く、またおしゃれな帆布を用いて作られている。
田村ゼミの研究内容は流通マーケティング。どのようなデザイン、価格にすれば商品が売れるのか、誰に向けて売るのかという製品販売までの道のりを考える分野だ。今回、本学広報部から「大学の新しいグッズを制作してほしい」という依頼を受け、大学と共同で開発した。ペンケースやパソコンバッグなどを制作する案も出たが、本学が防災事業に力を入れていることを知り防災袋に決定したという。
制作にあたり、本学学生に対してアンケートを行った。その調査を通して学生の防災意識が低いこと、防災袋を持っている学生が少ないことが判明した。
その後もアンケートを重ね、学生に買ってもらうためには値段を抑え、かつ部屋に置いておける大きさやおしゃれな見た目が必要だと実感。完成したAir Postはリュック型から箱型に変形でき、インテリアとしても部屋に置きやすい。また、色も豊富で6色から選ぶことができる。さらに、市販の防災袋の相場は約1万4000円だがAir Postは9980円と学生でも比較的購入しやすい。
落ち着いた色合いが魅力の全6色=田村ゼミ提供
防災袋の中身は水や食料、手製の市大生向け避難マニュアルなど。既存の防災袋の中身を調べ、コストや重さなどを考慮しながら厳選した。田村ゼミは昨年9月に熊本を訪れ、熊本大学の防災を研究するゼミの学生や熊本学園大学の学生、防災士の方などのお話を伺った。Air Postの中身はそこで聞いた災害の体験談を参考に厳選しており、災害時に家から持ち出し、避難所に物資が届くまでの約二日間を生き延びるための必要最小限のものだ。防災袋には余裕があるので、さらに必要なものがあれば自分で入れることもできる。
2017年春から一年間、長丁場の企画には苦労も絶えない。特に、日経BP主催の西日本インカレに向けての準備も同時に進めなくてはならず大変だったという。しかしその苦労もあり、Air Postを取り上げたそのインカレでは、審査員特別賞を受賞している。
池田さんは「家の目につくところに置いておくだけでも防災意識を高めることができます。場所をとるものでもないのでぜひ購入して、万が一の事態に備えてほしい」と語った。
箱型からリュック型への変形の手順=田村ゼミ提供
文責
行田美希(Hijicho)
めちゃめちゃいいなぁ、コレ。欲しい。