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市大存亡の危機〜無関心ではいられない〜 vol.7


「市大存亡の危機~無関心ではいられない~」は大阪府市大統合について様々な視点から切り込んでいき、学生の皆さんに問題意識を持ってもらうことを目的としたコーナーである。

2014年10月28日に大阪市立大学のホームページにて「『新公立大学』大阪モデル」が公開されたことに伴い、Hijichoでは2014年12月11日〜2015年1月14日にかけて、市大の教員を対象にアンケート調査を行った。
杉本キャンパス内にある各学部(商学部除く)事務室の教員用ポスト360人分にアンケート用紙を配布した。有効回答数は26である。(尚、商学部については連絡を取れる方に配布した。)


<公表されたモデルへのコメント>

「『新公立大学』大阪モデルに関して賛成ですか?反対ですか?」という問いに対して、「賛成」回答が2名、「反対」 回答が13名、「どちらともいえない」という回答が10名、「未記入」回答が1名であった。そもそも回収率の低さから、有効な回答であるのかは疑問ではあるが、「反対」あるいは、「どちらともいえない」とする回答が多かった。
賛成意見には「少子高齢化による大学数の減少は否めず、本大学が統合することにより、スケールメリットのモデルを作るチャンスになる」などがあった。反対意見には、「検討期間が短すぎる」「これまで大学が培ってきた個性が失われる」「設置団体からの圧力によってまとめられた統合案である」などがあり、どちらともいえない意見には「総論としては賛成であるが、具体化するにあたっての細部が見えてこない」「内容がよく分からない」「統合する場合、しない場合におけるメリット・デメリットが示されていない」などがあった。このことから考察される事として、「行政の指示として改革を進めており、具体的な方針や時期などを定められていない」のではないだろうか。

<「新公立大学」大阪モデルの教員への通達について>

『新公立大学に関して大学から説明はありましたか?』という問いに関しては「はい」という回答が10名、「いいえ」と答えた人が14名と、回答が分かれる形となった。この結果の背景には、説明方法がネットやメール上での情報を「説明」に含むかという認識の相違があるのではないかと考える。
そして、その教員の意見の中に以下のようなものがあった。
-学長が構成員全員に対する説明会を開くべきでしょう。また、学生は、自分たちの大学の問題として、学長に対し、説明会の開催を求めるべきでしょう。
こういったコメントからも窺えるように、現在の大学執行部は教員や学生や職員を蔑ろにしているように見られても否定しきれないだろう。今後、大学側から公表される新大学構想関連の通達については信頼できる形で行われたいものだ。理事長を兼任している学長は、学生や職員や教員に向けた質疑応答の場を設けるのが妥当ではないだろうか。学生も新大学に関する公開されている情報や、変化などに少し敏感になってはいかがだろうか。


市大の教員は新大学に伴う研究面の変化についてどのように考えているのだろうか。
現在、研究面で府立大学との交流があるか、又はそのような機会がほしいかを尋ね、今後の研究分野の展望を考察する。
アンケートの結果、『現在研究面で大阪府立大学と交流がありますか?』という問いに対し、「はい」と答えた方は7名、「いいえ」と答えた方は18名(未記入1名)であった。このことから、現状として交流はそれほど活発でないことが伺える。また、大阪府立大学との交流がないと答えた方に交流がほしいかどうかを問うたところ、「大学間の交流は必要だが、大阪府立大学に限らず、さまざまな大学と交流したいと思う。」、「大阪府立大学に自分の研究分野に近い研究室があれば、すでに交流している」という意見があった。また、「研究の必要があれば、こちらから個別にコンタクトをとるので、府市大統合にあたって大学から交流を設定してもらう必要はない」とする意見もある。研究者として大切なのは自身の研究環境であり、それに府市大統合が悪い影響を与えなければ構わないとする傾向が読み取れる。

「新・公立大学」大阪モデルで公表されている、府市大統合によって期待されている学術面・研究面の効果として「高い学術性と広い学際性を併せ持つ総合大学が誕生することによる多様な人材の育成」、「両大学の領域の垣根を越えた融合研究の展開」というものが挙げられている。しかし、現時点で両大学の具体的な教育組織編成・キャンパス配置の正式な発表はなされていない。

<キャンパスについて考察>

また同案で公表されているキャンパス配置では、各研究分野によってキャンパスが分かれている。しかし、今の大阪市立大学杉本キャンパスには医学部を除くすべての学部が存在しており、総合大学の魅力をもっているといえよう。実際、筆者が大阪市立大学に進学した理由のひとつに総合大学であることがある。つまり、ある一つのキャンパスに様々な学部が結集しているために、共通教育科目で様々な分野の講義を受けることができたり、部活動などの交流で文理を超えた他学部の教授や学生たちと交流することができるなどして、自分の専門分野にとらわれない見聞を広めることができたように思う。しかし、もしこの新大学案が成立し、学術分野別のキャンパスになれば、学生間、学術間の交流が小規模かつ閉塞的なものになってしまうのではないか。両大学合併により表面的に規模が拡大しても、内面的に縮小してしまうのではないか。それで本当に総合大学と名乗ることが出来るのか、疑問が残る。

<まとめ>

教員向けアンケートを基に新公立大学に関して考察すると、様々な課題が見えてきた。
2015年2月27日には新しく「『新・公立大学』大阪モデル(基本構想)」が公開された。
基本構想ではグローバル化を見据えた新大学を掲げている。しかしながらこの基本構想もこれまでと同じく理想論しか述べられていないように思われる。一方で、大学を所管する文部科学省では極一部のG型(グローバル型)大学とそれ以外のL型(ローカル型)大学に分離する、大幅な大学改革も議論されている。この議論のように、もしグローバルとローカルの二極化が進んだとき、市大がグローバル化に向かうならば、地域に根ざす公立大学としての意義を失ってしまうかもしれない。
今後大阪市立大学がどのような方向に向かうべきか、注意深く検討していく必要があるだろう。

アンケートに協力して下さった教員の方々、ありがとうございました。

(注) なお、本稿執筆中に、「『新・公立大学』大阪モデル (基本構想)」が公開されたため、アンケート回収時と状況が異なっていることをご了承願いたい。

参考URL
大阪市立大学公式ホームページ―新大学の実現に向けて
http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/about/corporation/integration/index.html

関連記事
市大存亡の危機〜無関心ではいられない
http://hijicho.com/?cat=94

文責

新大学について考えるデスク (Hijicho)


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コメント

    • 仲本和明
    • 2015年 5月 13日

    市大卒業生らが加わる「大阪市立大学の統合問題を考える会」は次の「声明」を発表しました。杉本町駅でも配布しましたが、現役の学生のみなさんにも是非一緒に考えていただきたいです。

    ∥緊急声明∥
    大阪市を廃止し、大阪市立大学をなきものにする「大阪都構想」には反対です!

    「大阪市廃止、5特別区に分割」(いわゆる「大阪都構想」)の賛否を問う住民投票が5月17日に行われます。私たち大阪市立大学の存続・発展を願うものにとって住民投票の結果はたいへん気がかりです。橋下市長は、市立大学について、「キャンパスは残るが、府立大学になる」と言いました。その口調は市大の在学生、教職員、卒業生ら関係者の心情に思いを致さない軽いものでした。大学の統合再編は、二つある箱ものを一つにすればいいという単なる器の議論ではありません。先人の奮闘、努力のうえに築かれ、今に至るかけがえない歴史と伝統、学風、学問研究水準こそが大学の本領です。二つの公立大学を「二重行政」とみて、たんに解消をはかればいいというのは、あまりに一面的で無責任、もったいない話です。
    橋下市長が、「二重行政」解消が「都構想」の目的だといい、まず二つの公立大学をあげ、大阪市を解体して、市大、府大を統合することでムダを解消するなどと言っているのは理解に苦しみます。大学統合のために大都市大阪を解体するというのでしょうか。こんな話でしか「都構想」のメリットが語れないというのは驚くばかりです。

     橋下市長は、「首都大学東京の運営費は140億円、府大と市大は計200億円で、分不相応だ」といいます。しかし、富裕自治体の東京都は首都大学東京の運営費の大部分を負担していますが、市大、府大は運営費の多くが国からの交付金であり、大阪は東京に比べてはるかに少ない負担で、市大、府大あわせて二倍近くの学生が学んでいます。市大、府大が「東京に比べて負担が大きすぎる」というのはまったくの偽りです。
     国公立大学の数は、東京13、北海道12、愛知7、福岡7、京都6、兵庫5、広島5、神奈川4、大阪4。統合されると大阪は3校になります。これで大都市大阪がふさわしい高等教育・研究環境を備えているといえるでしょうか。市大、府大は創立以来、市民、府民に、比較的安い学費で、自宅から通える、貴重な高等教育の場を保障し、大阪の知の拠点として、経済・文化・科学技術の発展に貢献してきました。橋下市長も「大学がある街は活気づく」といっています。この大学を減らすことは、市民、府民、そして受験生の願いに反するのではないでしょうか。

    橋下市長は「大学をまとめて規模を大きくし強力にする」といいます。関西には規模の大きい大学がいくつもあるなかで、市大が一定のレベルを維持し、評価を得てきたのは、先人の奮闘と努力によるものであり、規模がすべてではありません。ノーベル賞を受賞した南部陽一郎さんや山中伸弥さんは、市大時代に「自由を満喫できた」「白紙に書けた」と振り返っています。学問・研究の発展にとって、憲法が保障する学問の自由、大学の自治こそ重要と考えます。橋下市長が「学長を選ぶのは市長」「教授会がしゃしゃり出るというばかげたやり方は認めない」というのはそれと相いれません。
    あと先考えない大阪市つぶし、「大阪市立大学」をなきものする「都構想」には反対です。

                  2015年4月30日 大阪市立大学の統合問題を考える会
    連絡先:仲本和明 072-941-7932

    • 筒井 正
    • 2015年 4月 16日

    「市大存亡の危機」風雲急を告げてきました。いま大阪市は、5月17日の「大阪都構想」住民投票にむけて、各行政区で住民説明会を実施しています。15日の住吉区民センターの説明会で橋下市長は、大阪市立大学について、「キャンパスは残るが、府立大学になる」と公言しました。その口調は在学生、卒業生そして教職員の心情に思いを致さない軽いものでした。大学の統合再編は、二つあるプールを一つにすればいいみたいな単なる器の議論ではありません。先人の奮闘、努力のうえに築かれたかけがえない、歴史と伝統、学問研究水準こそが大学のブランド。二つの公立大学を「二重行政」とみて、解消をはかればいいというのはあまりに無責任でもったいない話です。あと先考えない大阪市つぶし、「大阪市大」をなきものする「都構想」には反対です。

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