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授業の枠を飛び出した、実践的な学びを ~キューズモールのイベントを自分たちの手で~


この夏、あべのマーケットパーク キューズモール (以下キューズモール) で行われるイベントに向けて、現在準備を進めている学生たちがいる。2つのイベントが、学生の手で行われる予定なのだ。現在プロジェクトの中心となって動いている商学部2回生の早川昂宏さんと、同じく商学部2回生の大谷学さんに、話を伺った。


早川昂宏さん  大谷学さん
写真=早川さん(左)、大谷さん

―なぜ今回のイベントを企画することになったのですか?
早川:僕たちのイベントは、キューズモールの「あべのスマイルプロジェクト」というプロジェクトの一環で行います。これは、キューズモールさんが施設コンセプトとして掲げる「街は、おおらか。人は、ほがらか。」を実現するべく、地域と一体となって活性化を目指すためのプロジェクトなんです。その中で今回は地元の伝統産業に焦点を当てた企画を行うことになりました。

実は今回のイベントは、キャリアデザイン論という商学部の専門授業から発展して企画に至ったものなんです。この授業は、将来社会に出たときに役に立つ実践的な知識を早い段階から身につけることができる授業です。実際に企画を動かして、どうすれば他と差別化したり、客観的なデータからニーズを見つけたりできるかを実践的に学べるので、他の人より一歩リードして社会に出ることができます。

大谷:去年のキャリアデザイン論の授業ではキューズモールの運営元である東急不動産SCマネジメントなど3つの企業が関わり、それぞれで設定されたシチュエーションに合わせて企画の提案をしました。ここでは先に述べた比較力、分析力のほかに、プレゼン能力がないと勝てないんです。ビジネスの現場で求められることを、学生のうちに実際に勉強できる授業です。

授業で勝ったからといって企画を実現させるのはまた難しいんですが、今回は実現可能性を考えて、この2つのチームが選ばれました。2つの班が、それぞれ別の日程でイベントを行います。

―イベントの内容はどのようなものですか?
早川:現在大阪では、地元で採れた農産物や畜産物を「大阪産 (おおさかもん) 」としてブランド化し、地産地消を推進しようという取り組みが行われています。そこで、僕の班では、それを広めるための食育イベントをメインコンセプトとして考えました。

具体的には、キューズモール内にあるパティスリーラボツジ (Pâtisserie Labo. Tsuji) というケーキ屋さんとコラボして、親子参加型のお菓子作りイベントを行います。ここは辻製菓専門学校の学生が調理から接客までを行い、運営しているケーキ屋さんなんです。
お菓子と野菜という組み合わせは意外性があり、おもしろいのではないかという発想から、今回のイベントでは特に「大阪産」の野菜を含めた農産物をPRします。イベント名は「あべの おやこらぼ」といい、ターゲットは小学校低学年の子どもがいる親子に絞っています。小さい子は、おいしいと思ったら成長しても食べ続けてくれるので、まず子どもに「おいしい」という意識を持ってもらい、親にも買ってもらうことをねらっています。

しかし、ただお菓子を食べてもらうだけではイベントにはなりません。実際に見て、作って、食べることで、「大阪産」に対する愛着が湧き、印象にも残ります。

大谷:続いてこちらの企画を説明する前に…南大阪の伝統産業を知っていますか?
僕の班は、河内木綿という伝統産業をPRします。

河内木綿は、江戸時代から明治初期までは多くの庶民が実生活の中で使っていた製品なのですが、明治時代に外国産の木綿が入ってきたことや習慣の変化などがあいまって、戦前には衰退してしまったんです。しかし、国産の木綿製品には、生地の分厚さや丈夫さ、独特の風合い、紋様など、輸入物にはないよいところがたくさんあります。

僕たちは、南大阪が誇る伝統産業が廃れてよいのか?と感じ、今回の企画を打ち出したんです。実際に企画を実行するにあたり、NPO法人河内木綿藍染保存会、全国コットンサミットなどから協力を頂けることになりました。イベントで使う木綿を無料で譲ってもらえることになったんですよ。

当日はPRイベント、ワークショップイベントの両方を行う予定です。PRでは、国産木綿を使っている風景、着ている風景を写真に撮って、パネルを制作し展示する予定です。そしてワークショップでは、河内木綿の良さを、子どもたちも含め、皆さんに体験してもらいたいです。夏祭りに来てくれたお客さんが立ち寄り、説明を聞き、体験するのが目的なので、予約も費用も不要です。

また、今回は、大阪芸術大学の学生も協力してくれます。枠にとらわれない、「学生でしかできないこと」を企画に盛り込んでいくつもりです。堅苦しく伝統を語るだけではなく、学生のアイデア、制作物で大阪の伝統産業を人々に知ってほしいと思っています。


河内木綿
写真=河内木綿の手拭い

―現在は、どのような体制で企画を進めているのですか?
早川:授業では6人グループでしたが、今やっているのは完全に有志という形なので、1人が入れ替わり、6人体制で進めています。6人のうち3人はイベント担当として、当日の内容詳細の決定にあたります。2人は広報担当として、広報物のデザインをしたり、プレスリリースを発行したりします。僕はリーダーとして、スケジュール管理やJAさんとのやりとり、外部との渉外を担っています。

大谷:こちらの班は、市大のメンバーは6人ですが、他大学のメンバーも合わせると10人以上になります。僕の班は、広報はキューズモールの夏祭りの広報と合わせて電通さん (株式会社電通) にお任せしているので、その他の仕事を分担しています。全員がそれぞれの役割を担って動いていますね。ただ、外部の連携先との齟齬があってはいけないので、渉外はリーダーがやるようにしています。

これまでの企画会議はスカイプやラインで行ってきました。すでに予算と企画の詳細も決定し、今月末には芸大との顔合わせもあります。いよいよ、実際に必要なものを揃えたり、協力先との打ち合わせを進めたりと、考える作業から実動に移行していく段階です。

―イベントの企画にあたって、苦労した点はありますか?
早川:現在は、毎週月曜日に辻調さん (辻製菓専門学校側) とのミーティングを行っています。辻調さんは、お菓子に対するこだわりがものすごくあるんです。でもこちらは、そういった知識やこだわりがないし、思い入れもない。もともとの価値観の違いから意見が噛み合わないことも多いですが、ぶつかりながら落とし込んでいっています。

大谷:あとは、企画書が通らないことですね…授業では「こんなことがやりたい」という夢を語るだけでよかったのですが、実際にイベントを作るとなると、思い通りにはいかなくて。しかも二人とも意固地で、やりたいことを譲らない性格なので(笑)。出しては突き返される、の繰り返しです。

早川:企画書を戻されると、やってきたことを全否定される気持ちになりますね。

大谷:精神的に打ちのめされます。でも、こちらもグループメンバーや提携先の思いを背負っているので、簡単に譲ることはできない。企画書作りは一番苦労する点ですが、一番やりがいがあって楽しい点でもあります。

早川:キャリアデザイン論の担当でもある、商学部の非常勤講師である石川靖之 (いしかわ やすし) 先生に、企画書を見てもらっています。企画書について怒られるのですが、その後にアドバイスもくれるので、励みになります。先生も、授業ではなく、イベントを作る側として関わってくださっているので、こちらも完璧なものを書いてやろうという気持ちになる。ちなみに、先生自身も経営者なんですよ。

―来場者にどのようなことを伝えたいですか?
早川:こちらのイベントでは、「大阪産」に触れてもらい、実際に肌で感じてもらいたいというのが一番にあります。また、子どもが作ったお菓子を親子で食べてもらうことで、「おおさかもん」を通じて、親子の絆を深めてもらいたいです。

大谷:伝統産業はどうしても、「古臭い」「堅苦しい」「小難しい」といったイメージがあるので、もっと身近に感じてもらう必要があります。生活にありふれていた “ジャパンブルーの親しみ” を今の人にも感じてほしい。だから、今の価値観を携えている学生でPRしていきたいです。木綿製品がどのように人々の生活の中に存在していたのかを子供、若い人、上の世代にも知ってもらい、最終的には皆が「南大阪といえば河内木綿!」と答えるくらいになってほしいですね(笑)。

―最後に、イベントにかける思いを教えてください。
早川:成功させてやろうという気持ちは2人ともあります。

大谷:僕は、「学生のうちにしかできないこと」という考え方が嫌いです。なんだそれって。それよりも「学生だからこそできること」を追求したい。会社同士だと、企業カラー、イメージ、縛り、金銭的問題などにとらわれてしまうけれど、学生だから外部と簡単に連携できるし協力してもらえる部分もある。それで、来てくれたお客さんが楽しく、自分たちも楽しい企画が出来れば、それでいいと思うんです。学生にしかできない楽しさをつくっていきたい。大人を笑ってやるような企画がしたいです。

キャリアデザイン論の講義の中でも教わったんですが、キャリアデザインとは、「人生設計、人生のありかたをデザインすること」です。おもしろくない人生なんて嫌でしょ?嫌いな仕事は一生の仕事にはできないから、どうやったら人生を楽しくできるか考える必要があるんです。今回のイベントも、とにかく楽しいものにすることがメンバーの目標ですね。

早川:実は、授業から実際の企画に移るときに、メンバーが結構抜けると思っていました。でも、みんな自分たちの考えた企画をやり遂げたいと言ってくれたのが、とても嬉しかった。僕は最初、指名して仕事を振ることが苦手だったのですが、メンバーのことを信頼して仕事を振れるようにもなりました。学生だからこそ、周りの援助があって、企画が出来ると思います。僕個人としては、班のメンバーと一緒に最後までこの企画をやり遂げて喜びを分かち合うのが、今回のイベントの抱負ですね。

大谷:とにかくおもろいことがしたい。

早川:おもしろくなかったらやってないです。

From Editor

2人とも、それぞれが担当するイベントについて、ビジョンを明快に語ってくれた。彼らは、特色ある市大商学部の授業、そしてそこから発展した現在のイベント企画を心から楽しんでいるようだった。

実践的な授業は、ただ教授の話を一方的に聞く授業とは違い、それなりの時間と労力を割かねばならない。それが選択授業であれば、敬遠してしまう人もいるかもしれない。しかし、その授業に真摯に取り組んだ結果が認められ、大きなイベントを自分たちの手で今まさに作り上げようとしているのが、彼らなのだ。

与えられた機会を勉強の場として捉え、自らの成長の糧として存分に活用する姿勢、そして何より自分たちが楽しんで取り組む姿勢を持ち続けることで、大学生活をより有意義なものにできるのではないか。2人の言葉を聞いて、そんなことを考えさせられた。

また当日の様子なども、追って報告する予定である。
イベントの成功を祈っている。

開催概要

●「あべのおやこらぼ」
日時:8月11日(日) 10:30~12:00 / 14:00~15:30
場所:あべのキューズモール3階 Pâtisserie Labo. Tsuji 内 (スカイコート前)
参加料:1500円
参加資格:親子 (子供1人、大人1人)
問い合わせ先:未定 (決定次第掲載)
※要予約、6/25より募集開始

●キューズモール夏祭り「綿繰り体験と藍染くるみぼたん作り(仮称)」
日時:8/17(土)、18(日)
場所:あべのキューズモール3Fスカイコート
※小雨決行
詳細はあべのキューズモールに従う

関連リンク

食育イベント「あべの おやこらぼ」を開催します!~商学部キャリアデザイン授業の学生企画が実現~
http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2013/9gnl0i(大阪市立大学HP)
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/keizaisenryaku/0000228197.html(大阪市HP)

文責・写真

長澤彩香 (Hijicho)


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