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人権問題研究センター 開設40年


2013年に人権問題研究センター (以下人権センター) が、同和問題研究室 (当時、以下同和研究室) 開設から数えてちょうど40年を迎える。大阪市立大学の人権教育は他大学と比べてもかなり充実している。その市大の人権教育を支えているのが人権センターである。今回はそんな人権センターの日々の活動を紹介する。

人権センター概要・活動

1973年に人権センターの前身である同和問題研究室が、大阪市立大学の学部・大学院組織から独立した研究機関として設置され、2000年に同室を改変する形で人権センターが設置された。1977年には「社会問題研究センター」という同和問題、公害問題、障害者問題、民族問題を扱う研究所の設置構想もあり、改変は、基本的にこの構想を引継ぐものであったが、新たに女性問題やジェンダーの視点も加えられた。また、ジェンダー問題を研究する専任研究員を増員して、専任研究員3人とする答申がなされていたが、現在は専任研究員2名と兼任研究員14名によって運営されており、人権問題の解決に研究・教育を通じて貢献することを目的に活動している。

主な研究領域は、部落問題、ジェンダー問題、障害者人権問題、エスニック・スタディー、医療と人権などである。それぞれの研究領域に関しての授業は一般教養科目として提供されている。

また研究活動以外にも、人権センターは人権問題に取り組む研究者のネットワークの拠点ともなっている。最も緩やかなレベルでは、研究業績のデータベースを構築し、学内外に発信するなどのものである。

さらに、研究者や院生・学生が一時的に集まり、議論し、刺激しあう場の提供も人権センターは担っている。それは現在「サロンde人権」という形で実施されている。これは毎月1回第3水曜に開催されており、様々な人 (外部の有識者など) を招いて話題提供や議論をするというものだ。どちらかといえば研究者向けに開催されているが、ホームページにも案内が載っており、市民の人や学生など誰でも参加可能である。

その他にジャーナルの発行 (年1冊) も行っている。研究員の論文だけでなく、外部からの投稿も可能である。また、学術情報総合センターでバックナンバーはすべて閲覧できる。さらに人権問題委員会と協力し、『人権問題研究ハンドブック』編集・発行 (毎年改定) も行っている。

写真=人権問題ハンドブック

写真=人権問題ハンドブック

現地研修も行っている。人権問題のホットな場所に研究員が赴き、2泊3日程度の現地調査をしている。今年度は韓国済州島に赴き、済州大学在日済州人センターなどを訪れ「4.3事件」についての研究が進められた。

市大と人権問題

市大は他大学と比べて人権問題に対する取り組みが充実している。他大学にも人権問題に対する研究機関 (関西大学「人権問題研究室」) を設置しているところや、専門機関はないが講義の中で扱うなど、教師が個人的に人権問題を扱っている大学は存在する。しかし市大ほど充実した機関を持った大学は他にはそうそうないという。

また、市大は2001年「大阪市立大学人権宣言2001」 (詳しくは市大ホームページ「大阪市立大学人権宣言2001」参照) というものを全国の大学に先駆けて発表している。宣言には市大が人権問題に対して真摯に取り組んでいく旨が盛り込まれている。

同和研究室の時代から比べると、現在の市大あるいは社会を取り巻く人権の環境は大きく変化しているという。同和研究室時代はその名の通り同和問題のみを取り扱っており、人権センターに改編されるときにジェンダーの専任講師を迎え、その後もさらにその研究領域を広げてきた。

それに伴い学生の意識も変化してきたという。以前は同和問題といえば「そのような学問はやめておけ」という風潮が漂っていたが、現在では人権問題を扱うのは当然だという意識が学生にも浸透してきている。人権問題に取り組むサークルも存在しており、学生の人権に対する意識は決して低くないのではないだろうか。

今後の課題

人権センターは海外へのネットワークが広がる一方で、専任教員の充実が課題となるとしている。かつては専任教員が3人いたが、定年退職などで欠員になったまま、この補充がきちんと行われていない。そのため現在は特任教授として応急的に措置されているが、今後のセンターの充実のため、この問題は急務とされている。

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文責

橋本啓佑 (Hijicho)


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