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市大存亡の危機~無関心ではいられない~


大阪市立大学と大阪府立大学の統合が、2016年度の開校を目標に進められている。2月8日の第18回大阪府市統合本部会議にて、橋下徹市長と松井一郎府知事の両氏は、新大学構想会議の報告を了承した。

「市大存亡の危機~無関心ではいられない~」は大阪府市大統合について様々な視点から切り込んでいき、学生の皆さんに問題意識を持ってもらうことを目的としたコーナーである。第一回は課外活動を取り上げる。

新大学構想〈提言〉要綱

新大学構想会議の基本コンセプトについて、〈提言〉で次のように述べている。
「新大学では、両大学で重複する分野を見直し、その資源を戦略的分野に投入するなど、選択と集中の視点による再編を行うとともに、日本の国立大学のモデルとなる大学運営システムの改革を実現する」

さらにその実現のために次の3つの柱を掲げている。

1. 新たな教学体制の導入、研究組織 (教員組織) と教育組織の分離、専門教育重視の「学部」と学際教育重視の「学域」の並存

2. 選択と集中による教育組織の再編 (市大の学部と府大の学域の再編、社会人教育の充実、研究・教育の国際戦略の強化、地域活力強化戦略など)

3. 大学運営システムの抜本的改革 (理事長・学長のガバナンス強化、教員人事の一元化など)

このことから新大学の構想は、おおざっぱに「学部・学域の再編」と「大学の運営システムの改革」という二つの核から成っていると言えそうだ。 

学部・学域の再編についてはご存知の方も多いと思うが、「地球末来理工学部 (仮称) 」や「国際経済学科 (仮称) 」、「地域経営学科 (仮称) 」といった新しい学部、学科の設置が検討されている。この学部・学域の再編と大学運営システムの改革については、次回以降に詳しく述べようと思う。

課外活動への影響は…

今回注目したいのは、サークル・部活などの課外活動についてである。〈提言〉では学部・学域の再編や大学運営システムの改革については触れられているが、課外活動については一切言及されていない。

統合により生じる課外活動への影響として、市大と府大で活動内容の重複するサークル・部活がどうなるかという問題が考えられる。仮に活動内容の重複するサークル・部が統合されてしまうのであれば、伝統ある大阪府市大戦の存続が危惧される。またキャンパスが各所に点在しており、練習をどこで行うのかという問題も生じるだろう (例えば中百舌鳥キャンパスから杉本キャンパスまで移動する必要があるかもしれない) 。さらにはBOXの利用についても懸念が生じてくる。次項から詳しく見ていく。

BOXへの影響に関して

2012年12月5日に開かれたBOX総会にて承認された決議書に対する回答書が、2013年2月20日に返ってきた。決議書では「府市大統合に関してBOX使用に与える可能性のある影響について」として以下のような要望をした。

「府市大統合がなされた場合、そのいかなる理由があっても、BOX協議プロジェクトと大学側との間で現在施行されているBOXの配分手続き方法を継続することを求めます。現在施行されているBOXの配分手続き方法を変更する統合はしないことを求めます。」

これに対し、回答書では

「課外活動の支援方法については、現段階では市大府大の統合に向けた検討はなされていない状況である。今回の要望については、今後の動向を注視しながら慎重に検討していきたい。」

という記述がされており、BOX使用に関して明確な保障が確認できない。上記に述べた通り府市大統合が2016年度に実現されるとすると、利害関係者との調整を鑑みるに課外活動の取り決めを検討し始めても時期尚早ではないだろう。いずれにせよ統合される場合、大学は課外活動の当事者である学生の声をしっかりと聞くべきであり、そのような機会を設けることを求める。

また府市大統合によって四者連絡協議会 (以下、四者協) が存続できるのか不明瞭だ。四者協が解体された場合、加盟団体の活動が保障されないのはもちろんだが、四者協のみが有している大学との折衝権が失われることも大きな問題だ。大学運営に学生の声を届ける術を失うことが危惧されるからだ。

終わりに

上記に述べた通り課外活動の点からみても府市大戦やBOXの保有権等対処すべき問題は山積みだ。にもかかわらず、構想会議ではこれらの問題について一切の話し合いが行われておらず、橋下市長も松井府知事もそれを承認した。こういった問題に目もくれず、果たして2016年度に統合が実現するのだろうか。また実現したとして、当事者である学生の声を聞かないままで、満足のいく統合になるのかどうかも疑問である。統合後の課外活動に対する仕組みや規定を、学生と一緒になって作り上げられるような場を、大学は早急に開くべきである。

参考

第18回 大阪府市統合本部会議について http://www.pref.osaka.jp/daitoshiseido/togohonbu/honbukaigi018.html

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進む府市大統合構想 ~法改正の実現が鍵~ (2012/11/07)
http://hijicho.com/?p=9749

文責

橋本啓佑 (Hijicho)
石原奈甫美 (Hijicho)


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コメント

    • 守矢 健一
    • 2014年 2月 07日

    この記事は、学生の気持ちとしてはよくわかりますけれども、「課外」活動を正面に立てても大学予算そのものが縮小している中では、「課内」活動が優先だと云われるだけだと思うのです。第一、知事も市長も、課外活動を顧慮するほど暇じゃないはずです。だから、学生としても、大学においてどのような勉強をしたいのかということを、真剣に考え、その面から、統合の是非のほか、統合の有無を超えて保守すべきこと、変えていったほうがよいこと、を詰めていくのがよいのではないでしょうか。市大と府大の統合はかなり極端な例でもありますがしかし、最近の中教審の発言を見る限り、大学政策が大きく変わろうとしており、そのなかで市大も変化しているという感じがわたしにはします。これに対するわたしの考えは、東大出版会のPR誌であるUP2014年1月号に述べました。参考になるかどうかわかりませんけれど・・・いずれにせよ、変化はすればよいというものではない。大切なものほど失った後で、取り返しがつかなくなってから気づくものです。また、真の変化は、変化を求める主体の自覚的な判断とは無縁に、いわば、事後的に生ずるのだという逆説もあります。改革を重ねることで、本当に変えるべきことが変わらないこともあります。日本では、大学進学率が高いせいか、大学卒業生が知的エリートだという自覚があまりにも希薄ではないでしょうか。知的エリートは、べつにえらいわけではありません。中卒の立派な大工さんのほうが、平均的な大学生より、怠惰な大学教師より、ずっと偉いでしょう。しかし高額の税金の恩恵も受ける大学生は、あたかも立派な建物を作ることが大工の任務であるのと同様に、知を担うことが任務だと思う。それはわたしたち教師も同じで、自戒を籠めて申すのです。

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