住吉は源氏物語ゆかりの地

天王寺から阪堺線の路面電車に乗って住吉に向かうと、乗客は鳥居までほんの数mの路上にある狭いコンクリートのホームに降ろされます。そのとき、源氏物語で光源氏が歩いた同じ参道に今自分が立とうとしていることを想う人はどれくらいいるでしょうか。

住吉は京都よりも古い、皇族ゆかりの土地です。難波が「なんば」でなく「ないは」と呼ばれていた時代、住吉の鳥居前は美しい松原に面していました。現在では、海岸線が数km先まで遠ざかり、四方を市街地に囲まれた住吉の地に、かつての雅やかな風光を偲ぶ面影はほとんど残されていません。

住吉が源氏物語の中の美しい舞台の一つであることを住吉区、住之江区の住民は誇らしく思っているに違いありません。住吉の神の導きで明石から帰京し復権を果たした光源氏は、翌年の秋、その願いが果たせたことを喜び住吉詣を盛大に催しました。きらびやかに装束を整えた参詣行列が住吉浜の松林を進む。この日偶然にも、例年の住吉詣に船で訪れていた明石の君は、海上から望む源氏一行の華やかさに身分の違いを思い知り、そっと浜を去ります。これが源氏物語「澪標 (みおつくし)」の代表的な一場面なのです。

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