はじめに

浜崎敬次 (筆者)
髙橋英樹 (大阪市住吉区長)
大阪市立大学学生メディア団体Hijicho (管理者)

浜崎敬次 (筆者)

牧口常三郎先生の人生地理学に感銘を受け、郷土史・地域学研究に挑戦し十数年、プチ新聞・小冊子の発行、学校での特別授業、老人クラブでの講演、地域のラジオ出演などを通じて、研究成果を発信し、これを私のライフワークとして取り組んだ成果が、『すみよし探歩』です。

昔の日本人が当たり前にもっていた感覚、現代人が忘れそうになっていた非日常の感覚を、当たり前の日常の中に取り戻していくことが大切です。いまどこのまちも元気がありません。その理由の一つは、まちに住む人たちの郷土意識が薄れ、愛郷心の欠如が挙げられます。その原因は、まちの歴史や文化、自然や環境などに関心がなく、知ろうとしない住民が多いことにあります。様々な方面では、まちに元気を取り戻すためには経済力の復活が必要だと取り沙汰されますが、その根底には文化力の向上が不可欠です。私は、まちに関心を持ち、まちにまつわる情報を知ることから、まちの文化力が高まるものと考えています。

住吉は1800年の歴史と文化で彩られた他に類を見ない恵まれた地域です。古来多くの人々が生活し発展を遂げてきました。このことは先人の遺産である多くの歴史・文化財が如実に物語っており、長い歴史の中で守り育てられてきたこれらの文化遺産は往時の生活を知る上で大いに役立つものです。そればかりでなく、私たちの歴史や文化を正しく理解し地域文化を豊かにするためにも欠かすことのできないものです。住吉には、いっぱい見所があります。一歩足を踏み込んでみると、味わい深い所がこの住吉に存在します。

私たちの現在は、過去の積み重ねのなかから築き上げられてきました。歴史はロマンであり昔を懐かしく思い出すものではありますが、本来歴史は未来への手引きであります。明日の夢を語るためには、昨日までの私たちの歩みを振り返えらなければなりません。激しく揺れ動く現代社会を、私たちはひたすら走り続けました。しかし今一度立ち止まって、過去と現在と未来を静かに見つめ直す時間が、今の私たちに必要ではないでしょうか。私たちはこれまでの歴史の歩みの中で、何を獲得し、同時にまた何を失ってきたのか…。このことを反問する、静かな時間と心のゆとりが、今の私たちには必要です。

特に未来を託す子どもたちにとっては、是非とも興味を持って学ぶための冊子になればと願っています。本来であれば住吉住民として数十年の歳月を経て当小冊子を発行するのが常識かと思いますが、他の土地から移り住み、住吉在住一年にも満たないゆえに、かえって、その土地の魅力を発見できるものです。すべてが新鮮であり、胸をときめかせながら、郷土史・地域学研究をベースに広域でダイナミックに、日々好奇心を持ってキョロキョロ探しながら、「これ、面白そう」でためになると思う情報を掲載しました。

参考資料
(財)大阪都市協会『住吉区史』
大阪市立美術館『住吉さん 住吉大社1800年の歴史と美術』
遣唐使船再現シンポジウム編『遣唐使船の時代』
保利神社乾充宏『保利神社今昔』
絵本多加三『堺泉州』16号
白井伊之助『住吉界隈いま・むかし』
創元社編集部編『大阪検定・大阪の問題集』
大阪市立苅田北小学校『苅田北創立10周年記念誌』
童門冬二『お札になった偉人』
真弓常忠『住吉っさん』

その他多くの著書・資料並びに講演等で知り得たことを引用させていただきました。
お世話になった皆さまに、厚く御礼申し上げます。

2011年春 筆者 浜崎敬次

髙橋英樹 (大阪市住吉区長)

浜崎さんに始めてお会いしたのは、今年 (平成23年) の9月、奥様といっしょに区長室を訪ねてこられたときであったと記憶しています。浜崎さんは重い病を患っておられるせいかお体は幾分スレンダーでしたが、力強い目線と、大きな太い声でよどみなく朗々と話をされるエネルギッシュな姿が強く印象に残っています。

私は、そこではじめて、「すみよし探歩」の途中原稿を見せていただきました。浜崎さんは、住吉区へ越してきて約1年。そんな短い期間に、住吉区の歴史エピソードをいくつも見出し、それぞれについて深く調査し、無駄のない整った文章を執筆され、「すみよし探歩」という綺麗な小冊子の形にまとめようとされていました。また、浜崎さんはそのとき、「地域学」ということについて、熱い思いを語られました。地域の住人が、地域の歴史・文化をしっかり知らなくては、経済的な面も含めて地域の発展も活性化もありえない、だから地域の歴史と文化を学ぶ地域学が大切である。端的にいうと、そういうご趣旨のお話であったかと思います。

私は、現在、住吉区長として「地域力の復興」ということに力を注いでいます。地域コミュニティを強化し、地域社会のなかに新たなつながり、支えあい、助け合いをしっかりつくり、大阪市が培ってきた歴史・文化資産を含む豊かな財産をタテ・ヨコ・ナナメにつなぎ、元気と安心と安全を住吉区のなかにつくっていく。これが、今後さらに進む高齢化、そして生産年齢人口の減少の中でも、住吉区の地域社会が、安定し、発展し、活性化していくのに必須であると考えています。このような地域社会をつくるのが、区役所の大きな使命であると思っています。その地域コミュニティの源泉は地域への愛着。地域の歴史と文化を知ることは、ひとが地域への愛着を持つのに必要不可欠です。私は、そう考えています。

浜崎さんの話をきいた私は、浜崎さんのエネルギーに心から感嘆するとともに、私自身このような考えをもっていることから、浜崎さんの地域学へのお考えに大変共感もし、「すみよし探歩」の充実、そして完成に向けて、非力ながら側面からのご協力をさせていただくこととしました。
そのなかで、大阪市立大学のサークルである「Hijicho」、富士ゼロックスさんなど心ある皆さんの参画のもと、この間、「すみよし探歩」をつくる作業が進んできました。

このたび「すみよし探歩」が完成するのは、心から喜ばしいこととおもっており、今後、住吉区の財産としていろいろな場面に活用させていただきたいと思います。浜崎さん、素晴らしい冊子をつくっていただき、ほんとうにありがとうございました!

大阪市住吉区長 髙橋英樹

大阪市立大学学生メディア団体Hijicho (管理者)

「すみよし探歩」は、地域学を研究する浜崎敬次氏によって編纂された、住吉区の「歴史」「町並み」「行事」「ひと」にまつわる地誌です。2011年、浜崎氏のもとに、大阪府議会の中村広美議員、住吉区の高橋英樹区長、そして私たち大阪市立大学メディア団体Hijichoが不思議な縁でつながってゆき、この「すみよし探歩」の公開にいたりました。

「すみよし探歩」のWeb版と誌面の制作を担当させていただくことができたのは、高橋区長からHijichoに「住吉の歴史を研究してはる面白い方がいらっしゃるから、一度会ってみいひん?」と声をかけていただいたのがきっかけでした。住吉区にある大学に通いながら、ほとんど住吉区の歴史を知らずに過ごしてきたことが恥ずかしくなるほど、浜崎氏の「引き出し」の多さは衝撃だったことを、いまでも覚えています。是非多くの人に知ってもらいたい。そんな思いで、このWeb版「すみよし探歩」を制作しました。

今後「すみよし探歩」が多くの地域の方々に読まれ、住吉区の歴史の素晴らしさに触れていただくことで、また新たなつながりが広がっていくことを期待して、本ウェブサイトを公開いたします。

2011年冬 大阪市立大学学生メディア団体Hijicho 加賀友基

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