一寸法師の物語

「お椀の舟で箸の櫂 (かい=いかだ)」といえば室町時代のおとぎ話、「一寸法師」のことですね。今から500〜600年以上も前、室町時代に書かれた『御伽草子 (おとぎぞうし)』という物語集に登場します。一寸法師はお椀の舟に乗って淀川を上って京の都に向かったとされています。

話中では、子どものいない老夫婦が身長一寸 (約3cm) の男の子を住吉神社で授かりました。一寸法師は、12歳になるまで住吉で暮らし、「住みなれし 難波の浦を立ち出でて 都へいそぐ わが心かな」の歌のとおり、お椀の舟に乗って箸の櫂で京を目指します。

漕ぎ出したのは、住吉大社前に広がる住吉の浦 (難波の浦・大阪湾) でした。当時は住吉大社の太鼓橋の辺りまで、湾が広がっていたともいわれています。一寸法師は大坂湾を北上し、天満橋の辺りから北の河 (淀川) に入り、京の都へ上ります。また、一寸法師は京都に上る途中、京都府山崎町に今も残る「宝積寺 (ほうしょくじ)」で修行したとも言い伝えられています。

物語には「打出 (うちで) の小槌 (こづち)」が出てきます。今でも宝積寺には「打出」と「小槌」が別々に安置されています。おとぎ話ではありますが、住吉大社は海の神。一寸法師も住吉大社の神に守られて京にたどり着いたといわれています。実際に、遣隋使・遣唐使も航海の安全を住吉大社に祈願して、住吉の浦から出航しています。

京に着いた一寸法師は、思いをかける公家の姫とともに鬼ヶ島に赴き鬼退治をします。そこで手に入れた打出の小槌を振って、法師の体はずんずん大きくなったというお話です。

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