3.11に寄せて~関西とふくしまのつながり~
みなさんは福島と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
会津。白虎隊。鶴ヶ城。
いわき。フラガール。
大震災。大津波。原発事故。
あるいは、何も思い浮かぶものがない人もいるかもしれない。
わたしはこの春休み、関西・ふくしま大学生交流事業に参加した。
この事業は、福島県の観光局とANAの全面的なバックアップで実現したもので、関西地区の大学生40名と福島県の大学生40名が交流を深め仲良くなるとともに、震災後風評被害などが未だ残る福島県の活性化を考えるというものだ。
福島県の視察として、関西の学生が2月22日~24日の3日間にわたり福島県を訪れ、福島の学生と共にボランティアや観光を行った。
1日目はキャンドルイベントのボランティア。普段見慣れない量の雪に、関西の学生は大はしゃぎしていた。福島の学生も、このようなイベントに参加したことがある人は少なく、また雪に馴染みのない学生もおり、一緒になってはしゃいでいた。協力して会場の設営にあたり、この日が初対面とは思えないほど、皆仲良くなった。
福島の学生が雪に馴染みがないと聞いて、「あれ?」と思った方もいるのではないか。
福島県は、縦に3つの地方に大別される。西から順に、会津地方、中通り、浜通りと呼ばれる。
浜は相馬市、いわき市などが含まれる海岸沿いの地域で、温暖で冬でも雪がほとんど降らない。
会津は白虎隊や大河ドラマで話題の新島八重にちなんだ歴史的建造物が多く残る地方で、豪雪地帯である。
中通りは、福島市、二本松市や磐梯山などを含み、こちらも雪が多い。スキーなどのスノースポーツが盛んである。
2日目に宿泊したスパリゾートハワイアンズでは、フラダンスショーを楽しんだ。ここは、映画「フラガール」のモデルとなった場所である。可憐な衣装に揃ったステップ、生演奏のリズミカルな音楽。次から次へと新しい踊りに切り替わる。途中には、観客がステージに上がり実際にフラダンスを踊れる時間もあり、1時間ほどのショーだが、全く飽きることなく楽しめた。施設内にはプールや温泉もあり、家族で楽しめる。
福島には震災の傷跡が無くなったわけではない。放射能汚染を受けた瓦礫は燃焼処理することもできず積み上がったままであった。壁が崩れた家は生々しく残り、家の礎だけが残り、草が荒れ放題に生え、住宅街は草叢と化している。また、そこに住む人もまた、傷を抱えている。話をしてくださったお土産屋さんの主人は、親戚のほとんどがこの津波によって亡くなったと言っていた。その心の傷は、癒えることはないだろう。
トマト栽培農家でも、トマト狩りの体験に加え、震災当時の話を伺った。
震災が起きたとき、トマト自体は無事であったが、温室内部の温度を保つためのパイプが全て落ちてしまった。仕方なくトマトを全て刈り取り、新たに苗から育てた。苦労しながらも温室の整備を終え、トマトも元通りに成長し、収穫できるようになった。しかし買い手がなく、市場に流通できない。一日2トンのトマトを廃棄する日が続いたという。現在でも、トマトをはじめとした農作物の風評被害は残っている。
ここまで読んで、何を感じたかは人それぞれだが、福島に実際に行ってみてほしい。一見は百聞に如かずとは言うが、それは本当で、実際に足を運んでこそその魅力が分かる。原発事故もあり、メディアでは放射能汚染で騒がれ、怖いというイメージを持っている人もいるかもしれない。しかし、実際に福島を観光してみると、至る所に放射線測定器が設置され、時間ごとに測定結果が示され、その安全性が確保されている。私たちのグループでも実際に放射線量を測定してみたが、数値は全く問題なかった。
また、福島の米や野菜は、二重三重の厳しい検査をくぐり抜け、安全性が保証された品物ばかりである。「福島の野菜は、世界一安全。」農家の人が述べる、全くそのとおりなのである。偏見をなくせと言うのは難しいことかもしれないが、この事実を知ってほしい。
確かに福島は遠い。簡単に行ける場所ではないかもしれない。それなら、まずはスーパーに並ぶ福島県産の作物を手に取るだけでもいい。
この記事を読んで、福島県を訪れてみたいと思う人が一人でも増えれば幸いである。
そして、この事業はこれで終わりではない。3月に今度は福島の学生が京都に来て、さらなるディスカッションを行った。
3月16日に、関西と福島の学生が協力し、福島を盛り上げるための具体的な提案を行った。どのようにしたら福島の風評被害を取り除けるか、福島に観光客を呼び戻せるか、福島を震災以前通りに、または震災前より元気にできるかを、学生目線で考え、発表した。もしかしたら、私たちの提案が何らかの形で現実になるかもしれない。ふくしまと関西のつながりは、まだ始まったばかりだ。
文責
長澤 彩香 (Hijicho)
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