ブログリレーその2 大学4年間(実質2年?)を振り返って

 

前回はちょっと自信作でした。4年生の竹中です。2021年6月25日に当ブログへ記事を投稿して以来、半年ぶりの活動となります。同時に、4年間の新聞部生活で最後の記事になるかもしれません。

 

 「大学四年間を振り返って」

 

このテーマを見て、最初に思い出したのは、大学入試のことです。

 ちょうど4年前のいまごろは、センター試験が終わり、1ヶ月後の二次試験に向けて、高校でも家でも試験対策の勉強をしていました。

 高校で3年間続けてきた勉強生活が、結果はどうあれまもなく終わってしまうことの寂しさや、入試の日程が全て済んでしまったら、自分はなにをすればいいのかという空白感が高まるのを感じつつ、ただとにかく最後の試験に向かっていったのを覚えています。

 

 それから4年が経ちましたが、大学卒業を前にして、同じような気持ちを抱えていることに気付きました。

 時間、金銭、体力などの総合的な自由度がもっとも高かった大学生として過ごす期間が終わり、これから続いていく社会人生活では何がどうなるか分かりません。

今あるものを手放し、これまでとは違う世界に投げ出されるまでのタイムリミットがじわじわと迫ってくるのを待つ時間はどうしても不安になります。

 

 高校の時と違う点は、熱意を持って打ち込むものの有無でしょうか。

 受験のときは、受験そのものが精神的な支柱になっていたように思います。少なくとも必死ではありましたし、3年間の集大成として、全力を尽くせたと思っています。

 比較になってしまいますが、大学生活では、全力を出せたかと聞かれると自信が持てません。大学生らしい活動が思う存分できたのは、2018年に入学してから2年の間で、そこから先は何をするにも、制限なしとはいかなかったからです。2020年の前期には学内が閉鎖され、紙で発行していた新聞は行き場を無くしてしまいました。また、学内イベントの大半が中止となったため、取材対象そのものが消滅してしまい、学内の様子を伝える記事を作るのが困難な時期がありました。

 

 特殊な状況下であったことは認めざるを得ませんが、やりたいことができなかったり、企画を考える際になにかしらの配慮をしなければならなかったりと、ブレーキを踏まなければいけないような状況が陰に陽に様々な形で存在し、全力でやり遂げたという感じはあまりないように思います。

 

 ↓

 

 

ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

この話は!おわり!

 

 過ぎたことを言ってもしゃーないですし、休刊状態になったときに大喜利コーナーだけでもtwitter上で復旧をもくろむなど、全く何もできなかったどころか、それなりに良い経験が持てたとさえ感じます。

 大学生活の中で、コロナ時代に入る前の通常の状態を体験できた人間が勝手なことを言うようですが、目に見えて違う時期を2つも体験できたことは、多分役に立つと思います。何にかは全く分かりません。

 

 私個人はあまり活動できず、他のメンバーの皆さんにいろいろとお任せしたまま、ほとんど関わる機会が無かったのが心残りですが、ここで次の方にブログリレーの順番をお譲りしたいと思います。

 

 次回以降も、しばらく4回生の投稿が続く予定です。

というわけで、次は福ちゃんの担当になります。お願いします!

 

ブログリレーその1 ー大学四年間を振り返ってー

皆様、明けましておめでとうございます。                                              そして、お久しぶりです、松永です。                                                今年は年末から続く寒波の影響で寒い年明けとなりましたね。いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回から新しくブログリレーが始まります。テーマはずばり、「大学四年間を振り返って」。私たち四回生から始まります。

今回は珍しく、私が初回を担当することになりました。最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 

大学四年間を振り返ってと言われたとき、最初に頭に浮かんだのは、それなりにたくさんのことが起こったな、ということでした。   

一回生の時は今の研究室生活のことなんて何もわかっていませんでしたし、教育実習に行くこともHijichoに入ることすら予想だにしませんでした。(笑)

四年間で成長できたかと聞かれると、自信をもって頷くことは難しいかもしれません。もちろん自分の中で変わった部分はたくさんあり、できなかったことができるようになったり、自分に自信がついたりしたと思います。でも、根本的な性格や好きなものは変わらないのですよね。

まだまだ大人と子どものはざま、いわゆるモラトリアムにあるような気がしてなりません。私は大学院に進むので、その影響もあるのかもしれませんが…。

しかし、案外大人とはそういうものなのかもしれないと最近思うようになりました。責任を負ったり、理不尽なことも飲み込んだり、そんな経験が増えることによって人間として深くなっていくけれど、完璧になれるわけではありません。性格や趣味が簡単に変わるわけもなく、そのままの自分を受け入れて磨いていくうちにふと大人になったな、と感じるのかもしれませんね。今はまだ、自分のそういう未来は見えませんが、それはそれで楽しそうです。

 

話がそれました。

大学四年間を振り返って、今私が思うことはもう一つあります。

それは、無駄な時間なんてなかったということ。

私は、この四年間で旅行に行ったり友だちと遊んだりした回数は他人と比べると少ないと思います。家で過ごした時間やアルバイトをしていた時間が長かったですね。

一回生の時にとある先生がアルバイトやゲームをする時間は無駄だとおっしゃいました。

その気持ちはわかります。勉強したり、貴重な経験をする時間に比べて生産性がないのですから。

しかし、本当にそうでしょうか。私は、家族とこんなに時間を共有できることも、一人の時間を楽しむことも大学だからこそできたと思います。ゲームも読書も、ある人から見たら無駄なことかもしれませんが、本人にとってはきっと大事なことです。

価値を決めるのは自分自身です。いつか、だらけたことを後悔する時が来るかもしれませんが、大学でそういう時間が取れたからこそ頑張れる時期も来るかもしれません。

これからもこの四年間を無駄にしないように頑張りたいなと思っています。

 

いろいろ書きましたが、実際はまだ卒論が残っているのでまだまだ実感はわいていません。(笑)もう少し頑張ろうと思います!

また新たにコロナも流行していますね。いつになればこの戦いが終わるのかわかりませんが、耐えていきましょう。皆様のご健勝を心よりお祈りいたします。

 

次は、ユーモアあふれる文章を書いてくれるぼなくんです!お楽しみに!

最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

他己紹介 其の❷

    初めまして!前回大川君に紹介してもらったHijicho一回生の高田百咲です。今回は自分が大川矢眞人君を「他己紹介」しようと思います。

     大川君は法学部の一回生で、私よりも少し先にHijichoに入部していました。同じ名字の部員がいるので、みんなからは「やまとくん」と呼ばれています。アルバイトとして家庭教師をしていて、13連勤をしたこともあるとても仕事熱心な人です。小学校低学年から高校生まで幅広く教えているそうです。      やまと君が私のエピソードを紹介してくれたので、私もやまと君の面白いエピソードを紹介しようと思います。やまと君と部室で会った時、謎の大きなペットボトル(「強炭酸」と書かれている)を持っていたので「それ何?」と聞いたところ、なんと洗って水筒として再利用していることが分かりました。それに気づいたとき、私は「この人面白いな!」と思いました。特技は変顔で、自分の変顔を写真に撮ってLINEのスタンプ代わりにしているそうです。日本語ラップも得意で、新歓のカラオケでもその腕前を披露してくれました。

     このように、やまと君はとても個性的で面白い人です。まだまだ紹介したいところですが、ここでいったん終わりとします。次回からは一~四回生のブログリレーが始まります。

 

他己紹介 其の❶

 最近変顔のしすぎで顔の輪郭が変形してきているのを、家族に本気で心配されています。あごが出てきてるそうです(笑)。どうもHijicho一回生の大川矢眞人です。皆さんもこうなる前に、変顔のし過ぎには注意してください!僕は矯正のために、あごを引っ込めてる系変顔をしながらこの記事を書くことにします。

 そんなわけで今回の記事は他己紹介です。紹介するのは一回生のブレーンであるターさんです。

 まずターさんはあだ名で、本名は高田もえちゃんです。ターさんは仲良くなればなるほど、どんどん良いところが見つかって一緒にいてすごく楽しいです。最近のターさんの殿堂入りエピソードを紹介します。部室には五代友厚の超分厚い本(もはや辞書)があるのですが、なぜか三冊もあります。最初僕も上中下の三巻セットだと思っていたのですが、まったく同じやつでした(笑)。その三冊をターさんも初見の時気になったようで、感想がこちら。「五冊そろえば二十五代友厚。三冊やから今は十五代友厚や。」センス良すぎで、先輩と爆笑しました。面白いだけでなく読書も嗜むターさん。一番好きな本は四畳半神話大系だそうです。僕が特に好きな作家である森見登美彦が好きで痺れました(笑)。好きなアーティストはバンプオブチキンだそうです。ちなみに僕も大好きです。

 さて矯正であごも引っ込んできたようなので、まだまだ紹介したことは星の数ほどありますが、そろそろお開きとします。次回はターさんが僕のことを紹介してくれます。皆さんも楽しみでしょうが大丈夫です、僕が一番楽しみです(笑)。この記事を読んでHijichoに少しでも興味を持ったら、ぜひTwitterからDMお願いします。僕があごを長くして待っていますよ!

 

Episode3 「終わりの始まりはWebclassのメンテから」

お久しぶりです。編集長の羽戸です。夏休み限定特別企画、部員の自己満足で始まったリレー小説ですが、気づけば今年の終わりが少しづつ見えてきた時期になってしまいました。おかしいな…?

とはいえ今回、ようやく最終回を迎えます!物語を書くってほんとに難しくて、これを書いていた影響で最近睡眠不足でしたが、ようやく早く眠れそうです。どうぞお楽しみください!

 

 

 

夏休みだけのはずだったのに、木々は既に赤く染まり、季節は秋を通り過ぎようとしていた。

「怪盗アニマルズ」として市大で幾度となく迷惑行為を繰り返し、その度にHijichoのとりさんや肘野ちよとかいうちょっとおかしな奴らに追い掛け回され、仲間たちと少しばかりスリルのある楽しい日々を送っていた。

だが、日が経つにつれ次第にその仲間は減っていった。

Hijichoの奴らに見つかって逃げていった仲間もいるし、知らない間にいなくなっていたのもいる。

そしてついに自分だけ。できることにも限りが出てきた。でも、なぜか、やめる気にはなれなかった。

今日はなにをやってやろうか、楽しいことを探しにキャンパスに繰り出した。

 

 

「『もう後期になるのに友人ができません。マダム、どうすれば良いですか??』…だって、それでマダムは…『友達は出来るものではなく、作るものよ』。…そうだけど、行動するのが難しいんじゃない!ねぇ、そう思わない?」

へいへい、と適当な返事をして僕は記事執筆にうつる。ちよは最近HijichoのTwitterで始まった、マダム鳥子のお悩み相談箱を見ているらしい。

ちなみにマダム鳥子については僕もあまりよく知らない。お悩みには答えてくれるが、部員の中でも謎の存在である。

「っていうか、Twitter見る前に次号の作成進めてくれないかな?何で鳥である僕が働いて、ちよがぐうたらしてるんだよ。」

「いや、ちょっと鳥の手も借りたいほど忙しくて、人手不足だし手伝ってほしいなぁって。」

「それはよく分かるんだけど、だったらTwitter見てないでちよも…」

「ほーら、口じゃなくて手を動かして!」

なんて世の中は理不尽なんだ。『理不尽な社会はどうすれば変わりますか』とか、マダムに相談しようかな…。

「あ、また質問箱更新されたみたい。『Webclassがまた今週の土日にメンテナンスするそうです。この前したばかりなのにおかしくないですか?これはアニマルズの仕業ですよね?調べてください!』だって?!うそ、授業たくさんたまってるのに!やる気があるときに限ってメンテナンスが起こるのよね…。」

怪盗アニマルズ…。幾度となく学内で迷惑行為を繰り返していて、その度に(変なところで)好奇心旺盛なちよと僕は振り回されているものだ。少し前のことになるが、生協カードの残高が勝手に0円になってしまう事態が発生し、調べたところアニマルズのいたずらだということが分かった(前話参照)。

それらのいたずらを少し記事にしたこともあって、学生の間でもアニマルズは浸透しつつある。しかし、実は最近アニマルズの姿が全くつかめてない。これまでのように、派手ないたずらがなくなってきているのだ。もしWebclassの度重なるメンテナンスがアニマルズのせいだとしたら、かなり久々に僕らの目に留まったことになる。

あれ、というかそもそもWebclassのメンテナンスなんて知らなかったけど、そんなお知らせあったかな…。

「とりさん!何考え込んでんの?今から調査に行くわよ!久々のアニマルズ案件だわ…待ってなさいアニマルズ!」

僕は自分の意思を尋ねられることもなく、強制的にずるずると外に引っ張り出された。後から知ったことだが、先程の質問に、マダムは「それは不思議ね!Hijichoの部員が今すぐ調査に行くから待ってなさい。結果が分かればすぐにお知らせするわ!」と答えていたらしい。なんて無責任な、しかもちよの心に火をつけるような回答をしちゃうんだよ、マダムぅ…。

 

 

調べたってなにも出てこない…と思っていたら、そんなこともないようだった。聞き込みをしたところ、そもそもメンテナンス自体行われる予定はなく、質問箱に送られてきた内容が誤りだということらしかった。どうりでメンテナンスについて聞き覚えがなかったわけだ。

Twitterでもその旨お詫びしたが、幸いなことに特に大きな混乱は起こっていないようだ。

なんだか拍子抜けしてしまった僕らは、もやもやした気持ちを抱えながら部室に戻った。

「一体どういうこと?アニマルズがいたずらで質問を送ってきたってこと?それとも別の誰かが単なるいたずらで?」

「さぁね…。何でもアニマルズのせいにするのは良くないと思うけど。まぁ次からは質問箱の内容を確認して答えることだね。マダムがよく考えず答えちゃったからこんなことになったんじゃないか。」

「何ですって、とりさん?」

「!?」

聞きなれない声、明らかにちよではない、ということは…

「マダム鳥子…さん!?」

「お久しぶり、いや、初めましてなのかしら…?ごきげんよう、いかにも私がマダム鳥子よ。」

本当にいたのか…。あっけにとられてる僕とちよをよそ目に、マダムは落ち着いた口調で話しはじめた。

「あなたたちねぇ、私の登場に驚いているようだけど、そんな暇ないわよ。そのパソコン見てみなさい。大変なことになってるわ。」

タイヘンナコト…?マダムの登場以上にそんなこと…

「えええ??さっきまで書いてた記事がすべて消えてるよ!??何で?」

待って待って、色々起きすぎて脳の処理が間に合わない。

ちよもパソコンをのぞき込んできた。

「え、ど、どういうこと?記事全部なくなっちゃったの??」

「みたいだね…。途中でこまめに保存しておかなかった僕も悪いけど、多分何者かに『保存しない』が選択されて、そのまま消えちゃったんだよ…。」

「何やってんのよ!ちゃんと保存しなきゃ!」

「だってまさかこんなことに…。っていうか、そもそもこれはちよの仕事じゃないか!しかも、記事を書いている途中で無理やり外に連れ出したのはちよだろう?僕ばっかりに非があるわけじゃないよ!」

ついヒートアップしてしまった僕らに、またもや落ち着いた口調でマダムが話し出す。

「二人とも、怒ったって仕方ないわ。そんなことしたってデータは復活しないわよ。また一から作っていくしかないんだから」

ごもっともである。さすがマダム。

「それよりねぇ、私が気になるのは何者かが私を装って質問箱に答えてたってことなのよね。」

「え、ということはwebclassメンテナンスの質問に答えたのってもしかしてマダムじゃないってことですか?」

「当たり前じゃない。もし私が答えるなら、きちんと情報の真偽を確認してから回答するわ。でも、そんなの確認する暇もないくらい、その質問が送られてからすぐに勝手に回答されてるのよね。」

それを聞いて、ちよはハッと顔を上げた。

「そうか…!これで色々つながったわね!」

「というと?」

「つまり、犯人の主目的はデータを消すこと。そのために質問箱に投稿して、HijichoのTwitterを乗っ取って自分で回答して、私たちを調査に向かわせるよう誘導したってわけ。」

なるほど…。ちよの性格を知っていれば調査に向かうことは間違いないだろうし、悲しいかな僕も連れていくことになるだろう。しかも、マダム(本当は犯人)の回答に「Hijichoの部員が今すぐ調査に行くから待ってなさい。」っていうのがあったから、まぁ否が応にも僕らは調査に行かないといけなかったわけで…。

「まぁ犯人はアニマルズでしょうね。いつも追っかけまわされてるHijichoにいたずらがしたくて、部室でTwitterをみている私をみて思いついたのかも。Twitterを乗っ取るくらい、彼らには簡単なことでしょうし。」

ちよの決め顔。いつものぐうたらとは大違いだ…!

マダムは窓の外を眺めながら、ちよの推理にうんうんと頷いた。

「そうね…。まぁそれにしても、アニマルズもやることが姑息というか、つまらなくなってきたわね。前まではもっと派手だったはずじゃない?学生全体に影響が及ぶようなことばかりで。それが今回は記事のデータを消すって、なんだかやってることがくだらないわ。」

「いや、Hijichoにとっては一大事なんですけど…。まぁ、言われてみれば確かにそうですね。」

「ねぇ、やっぱりそう思うでしょう。だから次からは相手にしなくて良いわよ。きっとアニマルズもメンバーが少なくなってきているんでしょう。そちらで細々と勝手に楽しんでおけば良いのよ。そんなくだらない相手に、貴重な時間を使うもんじゃないわ。」

なんだかマダム、口調が厳しくありません…?そこまで言わなくても。

「さぁ、アニマルズの話はやめて、もう一度記事に取り掛かりましょう。相手にするだけ時間の無駄なんだから…」

そう言ってマダムがこちらを向いた時…

「ちょっとさっきから聞いてれば、随分と好き勝手言ってくれるじゃないか。」

窓の外から、全く聞き覚えのない声。そちらに視線を向けると、そこには一匹の鳥がいた。

なんだか僕に似てなくもない。

「え、もしかしてアニマルズのメンバーなんじゃない?あんたがデータ消したの?!」

ちよがぐっと詰め寄る。鳥は一瞬しまったという顔をしながらも、開き直ったようににやっと笑って言った。

「ああ、そうだよ。誰かさんにはくだらないとか何とか言われたが、君たちの慌てっぷりは面白かったし、すべて思い通りに事が運んで満足だよ。」

「そんなこと言って、私たちに相手にされなくなるのが怖くなったんじゃないの?せっかく思い通りにいったのに、こうして姿をさらしちゃうんだもの」

マダムはあきれ顔で、はぁ、とため息をついた。

もしかして…さっきの厳しい口調も、犯人をあおって姿をさらさせるためだったのか…?

同じことを鳥も思ったらしく、動揺を隠せないようだった。

「お、お前…はめやがったな?!」

「別に。私は何にも嘘をついていないわ。実際、アニマルズって言っても現在活動しているのはあなただけなんでしょう?」

「え?!じゃあアニマルズじゃなくてアニマルってこと??」

「ちよ、君はいったん黙ろうか。」

マダムはどこ吹く風で、いきなりやってきた鳥と目も合わせようとしない。

「な…、確かに、現在アニマルズは自分だけさ。できることに制限はあるし、派手じゃないかもしれない。でもお前らみたいに慌ててるやつを見ると楽しくて満足だよ」

「へぇ…。強がっちゃって、寂しいのね。本当は私たちと仲良くなりたいんじゃないの?」

マダムの言葉に、鳥の表情がかたまった。

仲良くなりたいって…どういうこと?敵だと思ってたのに、アニマルズはそんなことを考えていたの?

「べ、別にお前らと仲良くなんて…。むしろ厄介な存在だよ。お前らがいなきゃ、もっと仲間は残っていたかもしれないのに…。」

「へいへい、そんなこと言っちゃって。さすがの私もすべて把握したわ。」

ちよがさらに鳥に近づいて、にやっと笑った。

「なるほどね、寂しいから私たちに構ってほしくてこんなことをしたのよね。ほんとは仲間が欲しかったんでしょう?だったら、いいこと教えてあげる。友達ってのはできるものじゃなくて作るものなのよ。いたずらしてるだけじゃだめ。自分からどっかに所属するなりなんなりしないと仲間なんて簡単にできないわ。」

どこかで聞いたような言葉だ。ちよはここで一呼吸おいて、右手をさっと差し出した。

「だからさ、あなたもHijichoに入らない?」

驚いたのは僕だけじゃない。鳥も、マダムも少し驚きの表情を浮かべていた。

Hijichoに…?これまでさんざん迷惑かけられてきたアニマルズが…?

「いや、入るわけないだろ、何言って…」

「今かなり人手不足なのよねぇ。鳥の手も借りたくて。一人でも増えてくれたらこちらとしても助かるし、部員は多い方が楽しいでしょ?それに…消した分のデータはしっかりと元に戻してもらわなきゃ。ね、とりさんもマダムも良いでしょう?」

「そうね、名案だと思うわ。」

「…うん、まぁ僕も同じ鳥仲間ができてうれしい、かな…。」

鳥の姿は、さっきよりかなり小さく見えた。まさかの展開に恐縮しきってるのかもしれない。

ちよはいつも何をしでかすか分からないけど、今回は僕もさすがにびっくりだな…。

「ほら、こう言ってくれてるよ。他の部員もみんな良い人たちだし、きっとすぐになじめるわ。どう??」

「いや、でも…こんな、自分なんかが…」

「あーもう、ごちゃごちゃ言ってないで素直になりなさい!このまま一人でいたずら続けるのと、私たちと一緒に新聞作るのと、どちらがいいの?」

鳥は下を向いて、弱々しく口を開いた。

「…ほんとは…誰もいなくて悲しかったんです。だから…なりたいです、みなさんの仲間に」

「そうこなくっちゃね!大歓迎よ!よろしくね!」

無邪気に飛び跳ねるちよ。かくして、アニマルズはいなくなり、思いがけない形でHijichoの部員は増えたのである。

 

 

季節は少し変わり、木々の葉もたくさん落ちるころになった。

敵であったはずなのに、なぜか僕はHijichoの部員になっていた。

相変わらずちよさんは働かないし、とりさんはちよさんに言われて必死で記事を書いているし、マダムは入部した時以来見ていない。

一方の僕は、仲間がいるという久しぶりの感覚、何でもできるかもという気がしていた。

次は何の記事を書こうか、楽しいことを探しにキャンパスに繰り出した。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!これにてようやくHijichoとアニマルズの戦いは終わりです。感想とか…もしあればどこかに寄せてください。

 

さて、続いてのブログは今年入って来てくれた1回生同士による他己紹介です。どんなブログを書いてくれるのか、とっても楽しみにしてます!

Episode2  「逆襲の“にょう” ~非モテコウモリ僕にょん物語~」

 中国語応用が必修であることを知らず、前期も後期も履修していなくて絶望しました。どうも、Hijicho一回生の大川です。新企画ということで、引き続きブログで小説をすることになりました。今回のアニマルズはコウモリです。ではお楽しみください。

 

 「えっ!?払えないってどういう事ですか?」

「ですから、この生協カードには一円も残高はございません。」

「そんなはずはないんですけど・・・まだ後2万円はあるはずなんですが・・・」

「はぁ~、最近あなたのような学生さんが多くて困ってるんですよ。とにかく、そのカードの残額は0円なので現金でお支払いください。」 

「おかしいなぁ、確かに残額はあるはずなんだけどなぁ。」

 これは大阪市立大学での学食での風景。最近学生が、生協カードで支払いを済ませようと思ったら残額が0になっていたという事が頻発しており、ちよは独断で調査を開始していたのだった。

 

 「あーーー!手がかりがない。無いたっらない。ウキーーーーー!!」

ちよは猿とワルツでも踊っているかのような謎の奇声をあげて、頭を振り回した。

「落ち着きなよ、ちよ。おそらく、これはアニマルズの仕業だよ。」

鳥さんはちよの狂態に全く驚いている様子は無く手慣れたものである。おそらく見慣れてしまったものと思われる。

「アニマルズの仕業ってことは分かってんのYO!!困ってるのは手口が分かんないからだYO!!」

「急にラップするってことは、まだまだ余裕だね。部室にこもりっきりじゃ分かるものも分からないよ。聞き込みしなきゃ。」

鳥さんは相変わらず冷静である。

「分かってるよう。でも被害者は皆、恋人のいる人ばかりで気が乗らないのよねぇ。」

ボソボソとそうつぶやくと、ちよはメンヘラの愛よりも重い腰を浮かし、秋の枯れ葉よりも軽い口と共に聞き込みにでかけた。

 

 「にちゃあ、僕にょんは超超超天才ハッカーなんだにょう。僕にょんの全身から発する超音波にょのおかげにぇ、目障りなバカップルどもに不幸をプレゼントする方法を思いついちゃったんだにょう。にちゃああ。」

大豆が一瞬で納豆に変わってしまいそうな、匂いまで感じるほどの発酵した負のオーラをプンプンとまき散らした一匹のコウモリが、ゴキブリホイホイ並みの粘着質な声でそうつぶやいた。

「僕にょん泥棒してないにょん。ただただカード残高を0にしてるだけだにょん。にちゃあ、またバカップルが来たにょう。幸せオーラを振りまいて許せないにょう!!僕にょんの不幸にょ一億分の一でも食らうがいいにょううう!」

「あっ!あんたこんなとこにいたのかい!!急に家出してどこに行ったのかと思ってたらこんなとこで何してんだい!!」

地獄の鬼も真っ青な権幕で一匹のママコウモリが怒鳴った。

「ママにょん!!何でここにいんにょ!」

逆にムスコウモリは青鬼よりも真っ青な顔色になってしまっている。

「早く帰るよ!!アニマルズの集会がもうすぐ始まっちまうよ。」

「いやにょーーー。僕にょんは一組でも多くのバカップルに嫌がらせをしたいにょーーーーーー。」

必死の叫びもむなしく激陰キャムスコウモリは、かつてリア充を経験済みのママコウモリに引っ張られていってしまったのだった。

 非リアはリア充に勝てず。この世の悲しき摂理通り、こじらせ陰キャによるリア充への醜い反旗はママにょんという圧倒的強者により幕を閉じた。

 

  ~数日後~

 「聞き込みしても、最近は被害にあったって声も聞かないし・・・もしかしてこの名探偵肘野ちよに恐れをなしたのかも!!?」

ちよは冬将軍も吹き飛ばすほどの笑顔で鳥さんに言った。

「でもちょっと残念。カップル撲滅隊隊長としては、犯人さんとは仲良くなれたかもしれないのにYO!」

「何言ってんだか。」

鳥さんの呆れた返った返事に、ちよはペロッと舌を出して答えた。

 

 

 

 ここまで読んで頂きありがとうございました!リア充の人はくれぐれも、ムスコウモリにお気を付けください(笑)非リアの人は、僕と一緒に今後も覇道を歩みましょう(笑)!!このシリーズはしばらく続きますので今後も是非お楽しみください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Episode 1 「水道管破壊者・パイプクラッシャー」

 Hjicho代表を務めております片山です。新企画ということでリレー小説を始めました。まったく、小説とは難しいものであり、非常に面白いものだなと感じました。拙い文章ではありますが、どうか温かい目で読んでいただけたら嬉しいです。また、ご感想、ご質問、ご助言等ありましたら、遠慮なくHijichoのTwitterアカウントもしくは私個人のTwitterアカウントまでご連絡お願いします。

 

 

※本作品は完全なるフィクションであり、実在の団体や組織、個人とは一切関係がありません。

Episode 1 水道管破壊者・パイプクラッシャー

イラスト=片山翔太

 

 

 

「いらっしゃいましぇー」

春子はおままごとセットのりんごをおもちゃのレジで打ちながら、そう言った。今年でもう4ヶ月になる。子供の成長というものは早いものだ。

「おとうしゃん、おとうしゃん」

私が感慨深げに見つめているうちに、レジ打ちは済んだようだ。

「1500円でしゅ!」

春子は満面の笑みで私におもちゃの貨幣を請求する。

「ははっ、りんごとばななだけで1500円も取るのかあ。」

まだ1人で買い物など当然したことない。見よう見まねで店員さんごっこをする姿は、限りなく愛おしかった。

「あ!ばあばとじいじだ!」

田舎で大豪邸を構えるお義父さんとお義母さんが夜の散歩から帰ってきた。私は、「怪盗アニマルズ」の一員として、日々窃盗や迷惑行為に精を出している。そんな自分が嫌いだった。娘の春子もそんな私のことを嫌いになるんじゃないかと心配だった。だが、そんなことはなかった。週に1度くらいは、春子が寝る前に帰宅することができる。春子は、私と遊ぶことができるその週に1度の日を楽しみにしてくれているのだ。

「お、もう21:00だ。明日も学校があるんだろう。寝ようか。」

春子は21:00には遊びをやめ、布団に入らなければならない。

「いやだ。もっとおとうしゃんと遊ぶ」

「わがまま言っちゃだめだ。また来週遊ぼうな。」

「いやだ。いやだ。おとうしゃんともっと遊びたい」

いつもならグズグズ言いながら布団に入るのに、今日はどうしてか素直に布団に入らない。

「お母さんが帰ってくる前に寝ないと、叱られちゃうよ。」

「うー」

春子は私から離れようとしない。仕方ないので、一緒に布団に入ることにした。

「そうだ、おとうしゃんが絵本を読んであげよう。」

「ほんとに!やったー!」

そう言って、春子は自分の本棚から今夜読んでもらう絵本を選び始めた。

 

***

 

「う~、あっつい!あっつい!あっつい!」

肘野ちよは、部室のソファーで暴れながらそう叫んだ。

「仕方ないね。電力量制限でエアコンが動かなくなったんだから。」

そう。市大新部室棟では、夏を快適に過ごすことができる必須アイテム、エアコンが運転停止となっているのだ。

「なんとかしてよ、とりえも〜ん」

「クーラーの効いた場所へ移動するしかないね。」

「外へ出るなんて考えられないよ、バカだね。」

僕はこれ以上何も言わない。不毛な時間を過ごすのは、耐えられない。鳥だけに。

「じゃ、記事のネタが転がってないか、調べてくる。」

「うん。よろしく。」

 

 バサッバサッ、翼を広げ大空を舞う。こうして僕は、いつも市大新聞の記者として、空から調査する。

(ん…?運動系サークルの学生が何やら騒がしいぞ)

僕は、その学生たちが集まる運動場横の水飲み場へ降りた。

「どうしたんですか。」

「いやあ、水が全く出なくなってしまって、困っているんですよ。」

テニスラケットを持った学生がそう教えてくれた。

「ここだけじゃなくて、トイレの水も出なくなってました!学校全体的に水が止まったみたいですー!」

もう1人の学生が、走りながら戻ってきた。

「なるほど、校内全域が断水したのですね。」

僕は、断水の原因を考える。

「とりあえず、俺たちは学生課にこのこと報告して、解散します。」

テニス部の学生たちが、ぞろぞろと帰っていく。

「ええ。情報提供ありがとうございました。」

僕は、とりあえずこのことをHijicho公式Twitterでお知らせする。

 

《【大学ニュース】校内全域が断水中。トイレの使用時注意》

 

「さて、ちよにこのことを伝え…いや、やめておこう。市大探偵とか言って、めんどうなことになりそうだし…」

「誰がめんどうだって?」

ギクッ。

「ふん。とりさんだけで解決しようたって、そうはいかないわ。校内全域が断水なんて、面白いじゃない!これは、事件だわ!真犯人がいるわ!」

「ちよ!いつから居たの!」

「ツイート見て飛んできたのよ。」

「まだ事件と決まったわけじゃないし、こういうのはよくあることだよ…」

しまった。安易にツイートをしてしまった。だが、確かになんの連絡もなく断水するなんてありえない。

「とりあえず、パトロールに行きましょう。」

ちよがそう言って歩き始めた。

「そんなやみくもに歩き回っても、無駄だよ。ここは僕に任せなさい。」

僕は羽を齧り勢いよく地面に叩きつける。

「口〇せの術!!」

「ちょ、ちょっと待って!なにいきなり他作品パクってんの!!!???」

「ぱくり…?」

「なに自分は何も知りませんでしたみたいな反応してんの!ナ〇トじゃない!口で寄せちゃってるじゃない!鳥のあんたが何寄せようとしたの??」

試験召喚〇召喚・試獣〇喚!!!」

「だからダメダメ!!ほんとに怒られちゃうよ。」

「まあ、この話作ってる奴がド陰キャオタク大学生だからね。面白くなくて当然だよ。仕方ない。」

「急なメタ発言!?身内からも怒られそうだよ…」

「大丈夫。ブログ投稿だし、そんなに読まれないでしょ。」

「私はなんにも知らないよ…」

僕は頭を抱えてしゃがむちよをよそ目に、ぴゅーっと口笛を吹く。すると、バサバサと小鳥たちがやってきた。

「校内の水道管を調べてきてくれ。どこかで断水しているはずだ。」

小鳥たちは、ちゅんちゅんと鳴きながら飛んでいく。

「よろしくね~。」

「とりさん、あんたそんな技持ってたの。」

ちよが口を開けて呆然としている。

「当たり前じゃあないか。僕は鳥だよ。」

 

 1時間ほど校内をうろうろしていると、調査に行かせた一匹が戻ってきた。

「ちゅんちゅん」

「なるほど、そうですか。・・・ええ。わかりました。ありがとう。」

「ちょっと、なんて言ったのよ。私にも教えなさいよ。」

ちよが怒りながらそう言う。

「ああ。校内のいたるところで水道管が破損されていたようだ。しかも中から破裂したとか、そういうんじゃなくて外から、誰かが意図的に破壊したように見えるらしい。」

ちよは、少しの間天を仰ぎ、

「やっぱり私の言った通り犯人がいるわね!」

と、意気揚々と呟いた。

「うん。だから、今からその現場へ向かう。一番損傷が激しいところへね。」

しかし、なぜ水道管を破壊した?その動機は?一体なにが目的なんだ?わからない。誰がこんなことを……。いつの間にか、空はどんより曇り空となっていた。

 

 現場に到着。そこは、僕たちが普段憩いの場として親しみ利用する1号館前に広がる芝生広場、前庭。その前庭が見るも無残な姿に荒らされていた。地面から突き出た水道管。それらは、ボロボロに破壊され、吹き出した水道水で辺りは水浸しとなっていた。

「なによ、これ…。」

ちよは、普段とはあまりにも違う光景に絶句した。

「ひどい有様ですね。とても人の仕業とは思えない。」

ドロドロになった芝生を避けるように、少し空を飛びながら検分する。錆びだらけの水道管が不自然なように地面から自生する。ぐしゃぐしゃになった水道管の周りは、吹き出した水のせいでドロドロになっており、そのおかげで犯人の足跡がくっきりと残っていた。

「なるほど。そういうことでしたか。まさか本当に人の仕業ではありませんでしたか。」

 

 部室に戻り、休憩をとる。

「ふぅ。外は雨が降りそうな天気ですね。」

「そんなことはどうでもいのよ!なにがわかったか、早く教えなさいよ!」

ちよは、相変わらず怒っていた。むしろ、これは怒っておらずデフォルトなのかもしれない。

「少し静かにしてくれないか。空を飛びすぎて疲れた。君は、現場で何を見ていたんだ?悲惨な光景を見てただただ絶句していただけじゃないか。」

「あんな光景見たらそうなるに決まってるじゃない!で、なにがわかったのよ。」

「この事件を起こした犯人は、人間じゃない。しかも、ただの野生の動物じゃない。僕と同じ、知性を持った動物だ。」

「う、うそでしょ?!あんた以外の知性を持った動物は政府に回収されたんじゃ…。」

「たしかに、ほとんどの知性を持った動物は回収された。でも、僕みたいに運良く回収から逃れることができた動物も少なくない。そうした動物たちは、基本的に政府から追われる身になるね。1体1匹1頭では、僕たちは生きていけない。だから、徒党を組む。そうして徒党を組み、強奪行為をする組織の中でも最大の組織、『怪盗アニマルズ』。この事件を起こした犯人もおそらくそれに所属している。」

僕は、ゆっくりとちよに語る。

「どうして僕のような知性を持った動物が生まれたか、ちよは知っているよね。」

ちよは、非常に困惑しながら答えた。

「ええ。うちの大学の某実験室でヒトの脳を持った動物を生み出す実験をしてたんでしょ?」

「そう。秘密裏に行われたその実験で、約30種の動物が生み出され、事故によりそれら動物たちが流出。今から14年前の話だね。その実験で生み出された動物たちは極端に寿命が短いんだ。その代わりに繁殖能力が高い。そのせいで、一気に街中へ知性を持った動物たちが拡大することになった。この事態を重く見た政府は、知性動物保護法を成立させ、警察が知性を持った動物を回収し保護できるようにした。保護といっても、投薬により知性を奪われるんだ。僕たちにとって、知性を奪われることは死と同じだ。」

「え、じゃあとりさんはどうして回収されないの?」

ちよが不思議そうな顔をして聞いてくる。

「それは、このキャンパス内が知性動物保護区に指定されているから。市大は、事故の責任を取るため、流出した被験体である動物たちを可能な限り保護した。でも、その数も限りがある。キャンパスは実験動物のためのものじゃない。学生たちのためのものだからね。僕以外の動物も、学生たちにバレないようにひっそりと暮らしているんだよ。」

「ってことは、怪盗アニマルズっていうのは、このキャンパスに保護されなかった動物たちってこと?」

「そういうこと。普段は人里離れた山奥で暮らしているみたいだけど、食料などの物資を奪いに街へ降りてくるらしいね。代を重ねるごとに知性も進化して、学校なども作られているみたいだよ。」

「そんな、ひどいじゃない。私たち人間の失敗を彼らに押し付けちゃだめよ……。」

「でも、僕たちみたいな得体のしれない存在は、人間社会に受け入れられないんだよ。みんな、ちよみたいにバカで無邪気で純粋じゃないんだよ。」

ちよの顔は涙で溢れていた。

 

ドンッッ!!バキバキ!!!

部室内まで届く轟音。

「なに!?今の音!」

ちよが驚いて窓を開ける。8号館前の広場から土埃が舞い上がっている。

「敵はすぐ近くで暴れているようだね。」

僕は、紅茶を啜りながら羽を休める。

「行くわよ。こうしちゃいられないわ。いくら理不尽な目にあわされたとはいえ、キャンパスを破壊していい理由にはならないわ。」

ちよは、先ほどの涙はどこへやら、自身の正義を振りかざす。

「行って、何するんだよ。」

「説得しに行くのよ。もうこんなことはやめなさいって。」

そんなことできるわけないだろう。地中の水道管を掘り返してバキバキにするようなアニマルに言葉など通じるわけがない。だが、僕の制止を振り切りちよは部室を飛び出した。

 

「うおおおお!」

ドン!バキバキ!!

荒廃した8号館前の広場で暴れるゴリラのアニマル、水道管破壊者(パイプクラッシャー)。彼と今まさに対峙する。

「あなたね!キャンパスをぐちゃぐちゃにしているのは!」

ちよが声を張り上げる。だが、その足はガクガクと震えていた。パイプクラッシャーの破壊が止まる。

「・・・?誰だ。お前たちは。」

「私は市大探偵の肘野ちよ!こっちは助手のとりさんよ!」

「どうも、助手のとりです。」

「!?お前、知性動物か・・・?」

パイプクラッシャーは、驚いたように僕を睨む。当たり前だ。保護されてきた側と迫害されてきた側では、折り合うことができない。

「そうです。私は、ここのアニマルです。」

「ちくしょう!お前らと俺たちで、一体何が違うっていうんだよ・・・。」

 

ーー

ーーー

パイプクラッシャーの脳裏では、帰りを待つ妻の顔、そして娘の春子の顔が浮かぶ。

「あなた、今日は早く帰ってきてね」

「おとうしゃん、今日も遊ぼうね」

ーーー

ーー

 

「ぶっ殺してやる・・・。ぶっ殺してやるよ!!!!」

パイプクラッシャーが僕に襲い掛かる。彼の拳が眼前に迫りくる。

 

「待ちなさいっ!!!!」

 

その瞬間、誰かの声が広場に響く。パイプクラッシャーの拳が止まる。誰だ?どこかで聞いたことがあるような・・・。

僕は、ゆっくりと後ろを振り返る。そこには、本学学長が立っていた。学長は、ゆっくりと歩みを始め、パイプクラッシャーへ語りかける。

「パイプクラッシャー・・・、いえ左近寺治夫さん。あなたはもうそんなことしなくてもいいのです。今までご迷惑をおかけしました。学長として、謝らせていただきます。本当にごめんなさい。」

学長が深々と頭を下げる。

「が、学長!?どうしてここに?」

ちよが豆鉄砲を食った鳩のように目を丸くしている。

学長は、ちよの言葉を無視しパイプクラッシャー、本名左近寺治夫へ語り続ける。

「17年前の事件、全責任は私たち大学側にあるにもかかわらず、すべての知性動物の方を保護することができませんでした。私は、この問題をずっと解決しようと考えておりました。そして、やっと解決の糸口が見えてまいりました。」

左近寺治夫は、驚いた様子で、言った。

「本当か!?」

「ええ。本当です。我が大阪市立大学は来年度から大阪公立大学として生まれ変わります。そして、キャンパス整理の一環で、使わなくなるキャンパスがあります。また、学生数も減少するためキャンパスにも余裕がでてくるでしょう。段階的にではありますが、皆さんをキャンパス内で保護します!」

左近寺治夫は、その言葉を聞いて涙を流した。

「うぅっ、ありがとう、ありがとう。」

ちよが彼の肩に手を置く。

「よかったわね!これで解決だわ!」

「君は何もしてないけどネ。」

僕は、ちよの肩の上に座る。

あははは、と笑う学長。ちよがもそれにつられて笑い始める。そのとき、

 

バンッ!

 

「危ないっ!!」

左近寺治夫が危険を察知し、ちよたちを庇う。

 

「ぐはっ…」

ばたん。左近寺治夫が倒れた。その倒れた体からは血が流れ出ていた。

 

「くっくっく…。まさかお前が人間どもに篭絡されるとはな。」

そこには、銃を構えたアニマルがいた。

「お、お前は!怪盗アニマルズ団長!?」

怪盗アニマルズの団長。名前は獅子堂。ライオン型のアニマル。鋭い眼光と黒光する銃を武器に野生の知性動物の世界を支配する。

左近寺治夫が倒れながらも必死にちよたちを守ろうとする。

「ちょっと、やばいじゃない!?」

ちよは、驚きのあまり目がグルグルになっている。

「うん、早く手当てしないと…。」

僕は、この状況で最善の策を考える。考えられる最善策は、やはりこれしかない。

「学長・・・」

「あぁ、わかっているよ。」

彼の足元にはすでに魔法陣が描かれていた。

「え、なになに?学長はなにしてるの?救急車はやく呼ばなきゃ・・・」

ちよは倒れている左近寺治夫をなんとか立たせようとする。

「その必要はないよ。学長の医療魔法で応急処置をする。公に認められないアニマルに救急車を呼んでも無駄だよ。」

僕たちは、左近寺治夫を魔法陣のもとへ連れて行かなくてはならない。だが、少しでもスキを見せれば今度こそ急所をやつは狙ってくるだろう。くそっ!!僕がおとりになるしかないのか・・・。

 

ドンッ!

 

どこかから、獅子堂が攻撃される。

「な、なんだ!!」

パン!パン!獅子堂が威嚇射撃する。

「助けに来たぞ!左近寺!」

そこには、怪盗アニマルズの一員であるはずの左近寺治夫の仲間たちが大勢やってきた。

「俺たちがおとりになる!その間にはやく左近寺を助けてやってくれ!」

「よし。ちよ!すぐに左近寺さんを学長のもとへ運ぶよ!」

「う、うん。わかった!」

ちよと僕は、左近寺治夫を学長のもとへ引っ張る。

「す、すまねえ。もう体が動かねえ。」

左近寺治夫は、消え入りそうな声で呟く。

「弱気になっちゃだめよ!!あきらめないで!」

ちよが、必死に左近寺治夫を元気づける。

「あなたのお友達も必死に戦ってるじゃない!」

 

「おまえら!!これがどういう意味かわかってんだろうなあ!」

獅子堂は、激怒する。

「もうお前の恐怖政治にはうんざりだ!せっかく怯えずに生きられる安住の地を提案してもらっているのに、それでもなお人間と対立し続けたいのか!!」

左近寺派のアニマルズが団長である獅子堂に反抗する。獅子堂は、自分が劣勢であることを肌で感じ取った。

「ちっ、仕方ねえ。好きにしやがれ。だが、俺たちはまだまだ収まんねえからな…。市大の人間どもが滅びるその日まで…。」

そう言って、獅子堂はその場を去った。

 

「あとっ…。もう少し…。」

ちよと僕は必死に左近寺を魔法陣まで引っ張る。そしてついに、魔法陣にたどり着いた。

「学長!今です!」

僕は、学長に合図する。それに頷き、学長は魔法陣を起動する。地面に描かれた魔法陣が発光し、左近寺を包み込む。

 

「学長パワー!!!」

 

学長がそう叫ぶと、あたりは一気に白い光に包まれ、気が付くと魔法陣は消えていた。そして、左近寺治夫が倒れていた。

「だ、大丈夫なの!?」

ちよは心配そうに学長に尋ねる。

「ええ。今は少し気を失っているだけです。」

「そ、そっか。よかった~。」

ちよは安心して、気が抜けたように地面に座り込んだ。左近寺派のアニマルズが学長のもとへやってきた。

「先ほどのお話、本当にありがとうございます。」

深々と頭を下げるアニマルズ。

「いえいえ。さっそく、移住の準備を始めましょう。」

「ええ。ですが、われわれはすぐにはそちらへ行くことはできません。今までご迷惑をたくさんおかけしましたから・・・」

アニマルズは、そう言って踵を返す。

「まずは家族を優先して保護をお願いします。左近寺は俺たちが預かります。」

「そうですか。左近寺さんの身体には弾丸が残されています。よろしくお願いしますね。」

「わかりました。」

アニマルズたちは、その後、学長とこれからの動きについて話し合い、左近寺治夫を連れて山へ帰った。

 

「ふ~!なんとか解決してよかったわね~!」

ちよがなんともすっきりした顔で部室へ戻る。

「だから、ちよは何もしてないんだって。」

「ふん!私は市大探偵よ!!」

今回の件については、知性動物の保護という形で、落ち着いた。だが、怪盗アニマルズとの戦いはまだまだ続く。これからも、ちよと僕は怪盗アニマルズと戦い続ける。

※本作品は完全なるフィクションであり、実在の団体や組織、個人とは一切関係がありません。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。なかなか話がまとまらず、最後は投げやりな終わり方にしてしまいましたが、これはリレー小説です。後の方々がなんとか話を上手にまとめてくださるでしょう。次は、「副代表」大川センパイの出番です。いったいどんな物語を紡いでくださるのでしょうか、楽しみですね。

 

Episode 0 「市大探偵、始まる!」

 こんにちは! 2回生の赤松です。皆さまいかがお過ごしですか? 私は、Netflixで1日1話ずつドラマを見ています。どんどんおすすめが出てくるので、はまってしまいそうです…(笑)。

 

 さて、本題に入りますね。このブログのタイトルを見て「???」となった方も多いと思います。突然ですが、今回から「夏休み特別企画 Hijicho連載小説」を始めます! 「市大探偵」という共通のテーマのもと、自由に物語を紡いでいきます。半分くらいは部員の自己満足ですので、どうか温かい目で見てください。

 それではさっそくどうぞ!

 

 

Episode 0 「市大探偵、始まる!」

イラスト:片山くん

(左から)とりさんと肘野ちよ

 

 杉本町駅まで徒歩10分、最寄りのコンビニまで徒歩15分。大学生活を送る上で若干不便な場所に、Hijichoの部室はある。

 Hijichoは現在、創部以来最大の危機に直面している。そう、部員不足である。

 現在の部員は、今この物語を書いている僕「とりさん」と2回生の「肘野ちよ」の2人。人手が足りないせいで、最近は新聞の発行さえおろそかになっている。ちよは部室で漫画を読んでばかりで、取材する気もないようだ。このままでは来年、廃部になってしまう…。

 おや、その張本人が帰ってきたようだ。確か今日は、SE(2回生の英語)の試験と言っていたような。

 

ちよ「ただいま、とりさーん!」

とり「おかえり。SEの試験どうだった?」

ちよ「音読する試験があって、全然できなかった…。まぁこれで試験は終わりだし、今から夏休みだー!」

とり「夏休みって…どうせ取材もしないでダラダラするんでしょ?」

 

 ちよは、少し鼻の穴を膨らませて僕を見た。あぁ、何か企んでいるな。僕は直感的にそう思った。

 

ちよ「夏休み限定で…探偵をしようと思うんだ!!!」

とり「は??」

 

 これまでも、ちよは突拍子もないことを言って僕を驚かせてきた。部室で流しそうめんをしたり、HijichoのYou Tubeチャンネルを開設したり…。今回もさっぱり意図がつかめない。

 

ちよ「いや〜。なんか最近、シャーロック・ホームズを読んでさ、探偵いいなーって思ったんだよね。」

とり「え、そんな理由で?」

ちよ「そうだよ。調査の依頼者をHijichoに勧誘すれば、部員を増やせるし! 夏の入部キャンペーンってところかな。私がホームズで、とりさんがワトソンね!」

とり「僕もやるの??」

ちよ「当たり前じゃん。もしやらないなら、ここから出ていってよね。」

 

  それは困る。僕は木から落ちたところをちよに助けられ、ここに居候させてもらっているのだ。追い出されたら、居場所がない。

 

とり「仕方ないな…。協力するよ。」

ちよ「じゃあ決まりね! よろしく、ワトソンくん。」

 

 正直、僕はホームズが良かったのだが、何も言わないでおこう。機嫌を損ねたちよほど面倒なものはない。

 とにかく、こうして僕らは「市大探偵」を始めることになった。本当に軽い気持ちで始めたのだ。だから、あんな危険なやつらに出会うなんて、考えてもいなかった。市大の平和を乱す悪党集団、その名は怪盗アニマルズ…。

 これは僕たち市大探偵と怪盗アニマルズのひと夏の戦いの物語である。(つづく)

 

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました! いかがでしたか? 小説というより台本っぽくなってしまいましたね…(笑)。感想などありましたら、TwitterのDMにお願いします。それから、登場する場所やキャラクターは、実在のものとは関係ありません。あくまでフィクションですので!

 次回の担当は、「肘野ちよ」と「とりさん」のイラストを描いてくれた片山くんです! どうぞお楽しみに〜!

私は副代表だぞ! 副代表だ!

 こんにちは、ブログの執筆から可能な限り逃げた結果、書くのがとても遅くなってしまいました3年の大川です。しかしこの場を借りて言い訳をさせて頂くと、私は決して文章を書くのが嫌だというわけではないのです。ただ、ものごとを「やり始める」ということが異常に苦手で、毎日入浴するのもだらだらと後回しにし、気づけば2、3時間経っていることもざらにあります。社会に出る前にこの病的なまでの怠け者気質をどうにかしたいと思う今日この頃です。

 さて閑話休題、今回のお題は「取材の裏話」ですが、恥ずかしいことに私はサークルの最高学年であるにも関わらずほとんど取材をしたことがありません(やる気に満ちた他のメンバーには感謝ですね)。なので、ここではhijichoでの私の活動について書かせていただきます。

 私の役職は副代表で、代表への助言を行ったり、代表が職務を遂行できないときにはその仕事を代行するという責任重大な役職なのです。ですが、上で述べたような怠け者である私にこの大役が務まるでしょうか?答えは当然NOです。そもそも代表をはじめ私以外のメンバーはきちんとしているため、私の助言が必要になることなどそうそうありません。仕事の代行に関しても、代表が職務を遂行できなくなることはまずないので、結果として私は平社員のような気楽な気持ちで、のんびりと活動させてもらっています。

 メンバーのみんな、これからもよろしくね。記事の執筆が遅いときは優しく詰めてくれると嬉しいです。

五代さんとオンライン授業

 やまとくんからバトンを受け取りました、2回生の赤松みなみです。

 夏休みに入りましたが、いかがお過ごしでしょうか? 長いようで短い夏休み、有意義に過ごしたいですね。

 今回は取材裏話ということで、7月号について書こうと思います。私が担当したのは「五代友厚をたずねて 第1回」と「オンライン授業、どう思う?」です。せっかくなので両方について書きますね。。

 

 まずは新連載「五代友厚をたずねて」。皆さんは、市大の創設者 五代友厚を知っていますか? 名前は知っているけれど、何をしたかは分からないという人が多いのではないでしょうか。つい最近までは、私もそうでした。

 私が五代さんに興味を持ったきっかけは、大河ドラマです。現在放送中の大河ドラマでは、主人公の渋沢栄一を中心に幕末から明治にかけての動乱期が描かれています。もちろんフィクションの部分もありますが、五代さんが活躍しているのは嬉しく、ドラマを見るうちに実際はどんな人物であったのか調べたいと思うようになりました。その後伝記や評伝を読み、偉大な功績と世間の評価の間にギャップがあることを知りました。

 今回の記事を通して、五代さんに興味を持っていただけたら嬉しい限りです。今後も、五代さんについての情報や同窓会の活動について掲載していきます。次の10月号もお楽しみに!

 

  続いては「オンライン授業、どう思う?」についてです。2021年8月19日現在、Hijichoホームページでは学生編と先生編①が公開されています。下のリンクからご覧ください。

オンライン授業、どう思う? 学生編

オンライン授業、どう思う? 学生編 | Hijicho 大阪市立大学新聞

オンライン授業、どう思う? 先生編①

オンライン授業、どう思う? 先生編① | Hijicho 大阪市立大学新聞

 こちらの記事は、3回生の大川先輩と協力して執筆しました。「オンライン授業のメリット・デメリットを考える。」というテーマで、学生と先生 計6名にインタビューしました。一つの記事につき6名にインタビューするのは初めての試みで、Hijichoとしても挑戦でした。今後も学生・先生の声を取り入れていきたいですね。取材に協力してくださった皆様、本当にありがとうございました。

 取材を通して感じたのは、「学生も先生も、試行錯誤しながらオンライン授業に対応している。」ということです。6名の方からオンライン授業についての様々な意見を聞きました。対面ならではの活動ができない一方で、授業によってはオンラインの方が良いという発見もありました。

 取材は5~6月に行いましたが、8月になった現在も感染は収束していません。数年後この記事を見たとき、私たちはどのように感じるのでしょうか。この時代を残す記録としても、意味のある記事になったと思います。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。後期こそは普通の大学生活を送りたいですね……。(今の状況だと難しそうですが涙)

 次回は3回生の大川先輩です。よろしくお願いします!